意外と知られていない!?「高専」の現状

高等専門学校、略して「高専」という学校をご存じでしょうか。中学校卒業者を対象に、5年一貫の実践的な職業教育を行う教育機関で、全国に57校(国立51校、公立3校、私立3校)があります。これについて文部科学省の協力者会議は、高専のブランディング(ブランド構築)戦略を進めて、もっと中学生に対する知名度を上げるべきだとする報告書をまとめました。高専とは、どんな学校なのでしょうか。

今や卒業生の4割が大学・大学院に進学

高専というと、専門学校(専修学校専門課程)の一種のように思われる人も多いでしょう。しかし、専門学校が高卒者を対象にしているのに対して、高専は中卒者が対象でありながら、5年一貫の高等教育機関に位置付けられています。最大の特長は、実践的技術者を養成することによる就職率の高さで、卒業時の求人倍率は平均20倍にも上っています。入学試験の倍率も、高校が平均1.2倍であるのに対して、高専は平均1.76倍という高倍率になっています。高校入試などの偏差値ランクで高専を検索すると、その意外な高さに驚く人も少なくないと思います。

高専を卒業すると、「準学士」の称号と、大学3年次への編入資格が与えられます。さらに57校中56校が、卒業生を対象にした2年間の「専攻科」という課程を設けており、専攻科を修了すると、大学院への入学資格が与えられます。現在、高専卒業者の約6割が技術者などとして就職していますが、大学工学部などに編入学したり、専攻科修了後に大学院に進んだりして、約4割が進学者となっています。実践的教育を受けてきた高専卒業者や専攻科修了者に対する特別枠を設けるなど大学側の評価も高く、高専から大学・大学院への進学者は今後、さらに増えていくことになりそうです。

中学生と保護者へ知名度アップの取り組みを

中央教育審議会が現在、実践的職業教育を行う新しいタイプの大学の創設を検討していることもあり、文科省の協力者会議は、今後の高専の在り方についても検討していました。報告書によると、現行の5年一貫教育で実践的技術者を育成するとともに、大学や大学院への進学により、高度な実践力とさらなる成長の可能性を兼ね備えた人材を育成するため、英語教育や専門科目以外の一般科目の履修、コミュニケーション能力の育成などに力を入れるとしています。

さらに、高専の知名度を高めるためのブランディング戦略が必要だと提言。中学生に対して、できるだけ早い時期から高専の存在や魅力を知らせること、また、中学校や保護者などに対して、就職だけでなく、大学・大学院への進学も可能であることなどを伝えることを、戦略的に行う必要があるとしています。

この他、財政上の理由から国立高専を増やすことはできないとしながらも、既存の工業高校を高専に移行することは、地方創生の面からも意義があると提言。設置を希望する都道府県などに、国として支援する必要があるとしています。

まだまだ知名度の低い高専ですが、就職や進学に強い教育機関として今後の在り方が注目されるところです。

  • ※「高等専門学校の充実について」
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/067/gaiyou/1370711.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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