今度こそ小中の先生は増やせるか? 文科省の新機軸

文部科学省の省内チームは、これからの公立小中学校の指導体制に関する中間報告をまとめました。2017(平成29)年度の概算要求に向けて、特別支援教育の充実などを柱に挙げています。注目されるのは、教職員定数の枠組みの見直しを提言していることです。公立小中学校の教職員定数は、最近ずっと削減されています。今度こそ、小中学校の先生たちの数を増やすことはできるのでしょうか。

通級・日本語指導・格差解消などに力

2017(平成29)年度概算要求で対応すべき課題として、中間まとめは、一般の学級に在籍しながら障害に応じた指導を受ける「通級による指導」を大幅に充実させる必要があるとして、そのための教員増などを求めています。さらに、日本語能力が十分でない外国人児童生徒のための指導担当教員を大幅に増やす他、貧困など家庭の問題に起因する学力格差を是正するため補充指導などを行う教員の増員や、いじめ・不登校など問題行動への対応に専念する「児童生徒支援専任教員」の配置拡充などを提言しています。

いずれももっともな要求ですが、財政事情を背景に教員数削減を求める財務省との折衝は、厳しいものになると予想されます。

その中で注目されるのが、教職員定数の枠組みの見直しを打ち出している点です。公立小中学校の教員数は、教職員定数により決められています。教職員定数は、子どもや学級の数などで機械的に決まる「基礎定数」(2016<平成28>年度は約62万7,000人)と、少人数指導など特別な課題に対応するための「加配定数」(同約6万5,000人)の2種類があります。

このうち基礎定数は、少子化や学校統廃合により減少していますが、加配定数は逆に毎年度増加しています。ただ、加配定数は財務省との予算折衝の結果に左右されるため、その数が不安定であるという欠点があります。

そのため文科省は、通級指導などの教員数を安定的に確保するため、加配定数の一部を基礎定数に組み込むことにしました。中間まとめは、「基礎定数と加配定数のベストミックスを追求する必要がある」としています。

「同床異夢」の文科・財務両省

これまで加配定数で措置していた教員数の一部を、基礎定数に組み入れることで、安定的・継続的に人数を維持し、そのうえで、経済格差や問題行動への対応など、新たな課題に向けた教員を加配定数で措置しよう……というのが文科省の考えです。

一方、財務省の財政制度審議会も、ほぼ同じことを考えているようです。ただし、少子化や学校統廃合によって基礎定数を削減しながら、さらに加配定数ついてもその効果に対する科学的な根拠を厳しく求めることで、教員数全体を大幅に削減することを狙っています。

同じ方針を提言しながら、まったく別の結果を思い描いているということで、まさに両省は「同床異夢」の関係といえそうです。ただ、熊本地震による防災関係予算などが必要になるため、2017(平成29)年度の予算折衝は、文科省がやや不利になるかもしれません。

省庁の予算折衝など、自分たちとは少し遠い話だと思っている保護者も多いことでしょう。しかし、それが最終的には、子どもたちの学校の教員数につながっているということも知っておく必要があるでしょう。

  • ※次世代の学校指導体制の在り方について(中間まとめ)
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hensei/003/1370047.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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