食品ロスや貧困対策も 政府の食育計画

政府は、食育基本法に基づいて、2016~20(平成28~32)年度の「第3次食育推進基本計画」を策定しました。子どもの貧困などに対応して、子どもたちに食事を提供するNPOなどの活動を支援したり、残飯などとして廃棄される「食品ロス」を削減したりすることなどを新たな項目として盛り込んでいるのが特徴です。

きちんと朝食をとることは、生活の基本であり「食育」の大きな要です。このため第3次計画でも、これまで同様に、子どもの朝食の欠食率(2015<平成27>年度は4.4%)を「0%」にすることを、引き続いて重要目標として掲げています。

ただし、ひとり親世帯の増加など家族の多様化、子どもの貧困などが大きな課題となっていることを受けて、朝食と夕食は家族と食べることを基本としながらも、地域などで他の人々と朝食や夕食を食べるという視点を新たに盛り込みました。具体的には、地域や関係団体と連携して、子どもや高齢者を含むすべての国民が、地域などでさまざまな人々と食事をする機会を増やすとしており、「地域等で共食したいと思う人が共食する割合」を2020(平成32)年度までに「70%以上」(15<同27>年度現状値は64.6%)にするという目標を打ち出しました。

さらに、ひとり親世帯や貧困な状況にある子どもを対象にして、放課後児童クラブの終了後に食事を提供することが可能な居場所づくりを進める他、朝食や夕食を子どもたちに提供する民間団体の活動を支援するとしています。

一方、食糧問題や環境問題などへの対応として、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で、世界全体の一人当たりの廃棄食糧の半減が掲げられています。日本では、まだ食べられる食品が賞味期限切れなどを理由に大量廃棄される「食品ロス」が年間642万トンあるといわれており、その「食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民」の割合を2020(平成32)年度までに「80%以上」(14<同26>年度現状値は67.4%)にすると、第3次計画では明示しました。具体的には、関連業者だけでは難しい商習慣の見直しや、消費者自身が「食品ロス」の削減を意識した行動を取れるよう、省庁・関係業界・消費者などが連携した「食品ロス削減国民運動」を展開するとしています。

学校給食に関しては、小学校に比べて完全給食の実施が遅れている中学校について、2020(平成32)年度までに完全給食実施率を「90%以上」(14<同26>年度現状値は87.5%)にするという目標が示されました。政府が中学校の完全給食実施率アップを明示したことで、今後、完全給食を実施する中学校が増えることが予想されます。

この他、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」の推進も新しいテーマとなっています。「地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合」を増やすことを目標に挙げたほか、学校給食の中では郷土料理などをさらに推進するとしています。学校給食では、和食がメニューとして出されることが多くなりそうです。子どもの貧困、食品ロス、和食など食育の内容も時代とともに変わりつつあるようです。

  • ※食育基本法と食育推進基本計画
  • http://www8.cao.go.jp/syokuiku/about/plan/index.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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