憲法記念日に考えたい「主権者教育」

5月3日は、憲法記念日です。憲法をめぐる今年の重要な動きは、18歳選挙権の導入です。このよう書いたら、唐突な感じ、あるいは、こじつけのような印象を与えるでしょうか? 実はそうでもありません。キーワードは「主権者教育」です。

昨年6月の公職選挙法改正により、今夏から、選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりました。高校3年生も、18歳の誕生日を迎えた者から、投票ができるようになります。法改正に伴い、総務省と文部科学省は、高校向けの副教材「私たちが拓(ひら)く日本の未来」を作成し、全国の国公私立高校に配布しました。選挙までに責任ある一票を投じられるよう、有権者として身に付けるべき資質を育てようというものです。

  • ※政治や選挙等に関する高校生向け副教材等について(文科省ホームページ)
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shukensha/1362349.htm

模擬投票などを通じて、選挙の具体的な仕組みや方法を体験的に知ることも重要です。しかし、それだけでは足りません。投票するには、候補者の考えをよく知り、主体的に選択することが必要です。そのためには、社会のさまざまな課題について、自分なりに理解し、判断できる能力を備えておくことも、不可欠になります。「主権者教育」とは、単に「投票に行きましょう」といった指導ではなく、課題を多面的・多角的に捉え、自分なりの考え方を作っていく力や、他の人と合意を図っていくために、根拠を持って自分の考えを主張し、説得するという、政治参画の力までをも育成しようとするものです。

文科省の検討チームは、3月の中間まとめで、幼児期の教育から大学・専修学校に至るまで、社会参画の態度を育む学習プログラムを開発・普及することを打ち出しています。主権者となるための教育は、幼児期から徐々に始めなければいけないというのです。

  • ※「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1369165.htm

「また学校に、何でもかんでも押し付けるのか」と思う人がいるかもしれません。しかし、そもそも学校教育とは、そういう主権者を育てることを大きな目標としているともいえます。「教育の憲法」ともいわれる教育基本法は、民主的で文化的な国家を発展させ、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献するという「日本国憲法の精神」に則って、教育の基本を確立するのだと、前文でうたっています。民主的で文化的な国家の担い手が、主権者に他なりません。

教育には、家庭教育も含まれます(教基法10条参照)。検討チームでも、学校・家庭・地域の連携・協働により、子どもたちに社会参画の機会を充実させるよう提言しています。そうした体験を通じて、主権者としての意識が育っていくことを期待してのことです。

副教材の作成協力者でもある林大介・東洋大学助教は、家庭でできることとして、(1) 子どもと話す機会を設ける、(2) 保護者が社会に関わっている姿を見せる、(3) 保護者が社会的課題を学んでいる様子を実感させる、ということを指摘しています。

  • ※18歳選挙権で子どもへの教育はどう変わる?【家庭編】 -出典:ベネッセ教育情報サイト
  • http://benesse.jp/kosodate/201604/20160427-1.html

18歳選挙権で問われているのは、既に選挙権を持っている大人の姿勢なのかもしれません。憲法記念日をきっかけに、主権者としての在り方や、社会のさまざまな問題とその関わり方を、親子で考えてみてはいかがでしょうか。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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