人工知能に「負けない」学力が必要な時代に!?

コンピューターが人間のように考える機能を持つ「人工知能」(AI)。チェスや将棋はもとより、あと10年は勝てないと言われていた囲碁でも、世界トップ棋士に5戦4勝したことで、一気に注目を集めました。こうしたAIの開発は、教育とも無関係ではありません。機械にできて、人間にしかできないことは何なのかが問われるからです。

大学入学者選抜や高校教育、大学教育の一体的改革策を検討してきた文部科学省有識者会議の最終報告で、気になる文言が盛り込まれました。未来を生きる子どもたちのために、AI技術やIoT(モノのインターネット)をはじめとする技術革新の加速を見すえつつ、高大接続システム改革を進めるべきだというのです。これは、大学入試センター試験に代わる新テストの採点補助にAIを活用する、という単純な話にとどまりません。

日本でのAI開発例に、国立情報学研究所が進めている「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトがあります。「東ロボくん」と名付けられたAIが、東京大学の合格レベルに達することを目指すものです。長文の記述が求められる東大の入試問題にはまだまだ太刀打ちできないものの、昨年6月の進研マーク模試では、偏差値57.8の成績を挙げました。全体の6割に当たる474大学(うち国公立33大学)で、合格可能性80%以上という判定です。

  • ※「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト
  • http://21robot.org/

これを「AIが人間の6割レベルに近付いた」と考えるべきでしょうか? 裏を返せば、AIにも解けるような入試問題を依然として課しているのが問題だと捉えることもできるでしょう。

これに関して、東ロボくんの「母」である同研究所社会共有知研究センターの新井紀子センター長は、日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)が開催したフォーラムの講演で、興味深い指摘をしていました。そもそも日本の中高生が、教科書をきちんと読めていないというのです。単に日本語として声に出して読めるということではなく、文章に書かれた学習内容をきちんと理解していないということです。意味を深く考えず、授業は黒板の丸写しで、暗記に頼ってテスト問題を解くような勉強だけなら、もうAIのほうが優れているというわけです。新井センター長は「中学校の教育目標は、『中学校の教科書をきちんと読める』ことに置きませんか」と提案していました。

有識者会議の最終報告が、新テストに、マークシート方式だけでなく、技術的に困難な課題も依然多い「記述式問題」の導入を提言したのも、意味があることなのかもしれません。AIは解答どころか、採点さえできないことが、東ロボくんプロジェクトで明らかになっているからです。

中央教育審議会では、次期学習指導要領で、すべての教科などを通じて「個別の知識・技能」はもとより「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力を育成することを目指しています。小学生が社会に出るころには、今ある仕事の5~6割が機械に代替されているとの推計もあります。これからの勉強では、AIが決して追い付けない「真の学力」を、今から意識して付ける必要がありそうです。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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