文科省がいじめ重大事態で指針 7日以内に首長報告を

文部科学省は、いじめが原因で不登校に陥る「重大事態」の際、調査のタイミングや実施方法などに関するガイドラインをまとめ、全国の教育委員会などに通知しました。岩手県矢巾町の中学生いじめ自殺事件をはじめとして、本来「重大事態」となるケースが見過ごされたり、首長に報告されていなかったりするなどの事例が相次いだことを受けたものです。また、学校や教育委員会などに、いじめ被害者の子どもやその保護者に対して、適切な情報提供をするよう求めています。

  • ※不登校重大事態に係る調査の指針について(通知)
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1368460.htm

いじめ防止対策推進法では、いじめにより「児童等の生命、心身又は財産」に重大な被害が生じた疑いがある事案と、「児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている」疑いがある事案を「重大事態」と認定し、調査の実施と市町村長など首長への報告を義務付けています。このうち不登校では、「通算30日」が重大事態認定の目安とされています。しかし、体調不良など他の要因が重なった不登校では、いじめが見過ごされたり、欠席が30日に達するまで対応が遅れたりするケースがあることが、文科省の調査などで明らかになりました。このため文科省は、専門家会議を設けて、「不登校重大事態」に関する対応指針を作成しました。

指針では、不登校の欠席日数が30日となる前から、学校は教委に報告・相談して情報を共有すると同時に、重大事態の調査に向けた「踏み込んだ準備作業」(定期的いじめアンケート調査結果の確認、関係児童生徒からの事情聴取など)を学校に求めているのが、大きなポイントです。つまり、不登校が30日に達する以前から、実質的な対応を開始するよう、学校に求めたものといえます。さらに、不登校が通算30日となった後、いじめによる重大事態と認定する際には、いじめの存在を「確認」する必要はなく、いじめの存在が疑われるだけでも重大事態として調査を開始する必要がある……と強調しています。

いじめ防止対策推進法では、重大事態発生を首長に報告することになっていますが、これについて教委などの対応がまちまちであったため、指針では発生後「7日以内」に首長に報告すると明記しました。

重大事態の調査は、「原則として学校が行う」と指針は定めています。児童生徒からの聴取では、環境や時間帯に気を配るとともに、被害者の子どもには「徹底して守り通す」という態度で接し、加害者側の子どもには「その行動の背景に目を向けるなど教育的配慮の下で指導を行う」ほか、二者択一でなく回答内容が児童生徒に委ねられる「オープンな質問」をするなどの留意事項を示しています。

調査報告書には、加害者の児童生徒への指導、支援方策についても記載する必要があるとしています。この他、指針では、被害者の子どもとその保護者に対して、事実関係や調査結果など必要な情報を適切に提供すること、調査報告書の提出に際して被害者の子どもやその保護者の所見を添えることができると説明することなど求めています。

ガイドラインの策定で、いじめに対する学校の対応が進むことが期待されるところです。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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