国立大、今や必ずしも学費は安くない……?

国立大学の入試も、23日までの後期日程の合格発表で、ほぼ終了です。しかし、合格通知に喜んだのもつかの間、入学手続きに際して、ため息をついているご家庭も少なくないかもしれません。保護者の方々が学生だった時代と比べ、国立といっても、今や授業料などは必ずしも安くないからです。

現在の国立大学の授業料は、年間53万5,800円です。国立大学が法人化された直後の2005(平成17)年度以来、10年以上、据え置きになっています。各大学は、独自の判断で授業料を上げ下げすることも可能ですが、学部に関しては全大学が、文部科学省が示す標準額どおりとしています。
一方、入学料は28万2,000円。こちらは2002(平成14)年度からの据え置きです。授業料と入学料を合わせると、入学初年度に81万7,800円を納めることになります。

  • ※国公私立大学の授業料等の推移
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/__icsFiles/afieldfile/2015/12/25/1365662_03.pdf

これに対して、私立大学は2014(平成26)年度の平均で、授業料は86万4,384円、入学料は26万1,089円。入学料を抑える一方、授業料は徐々に上がっているのが、近年の傾向です。国立大学に比べると、授業料は1.6倍、入学金と合わせると1.4倍です。もちろん、どの学部も一律である国立大学に比べ、私立大学は学部によって大きな差がありますから、理科系(平均で授業料104万8,763円、入学料26万2,436円や医歯系(各273万7,037円、103万8,128円)であれば、国立大学のほうがずっと安いのも事実です。

  • ※平成26年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/__icsFiles/afieldfile/2015/12/25/1365662_01.pdf

しかし、保護者世代に当たる30年前の1984(昭和59)年度、国立大学の授業料は25万2,000円、入学料は12万円でした。それに対して現在は、それぞれ2.1倍、2.4倍になっています。国は、1976(昭和51)年度に授業料を前年度の3万6,000円から9万6,000円へと2.7倍増にして以来、授業料と入学料を毎年、交互に値上げしたため、初年度納付金はじわじわ高騰していきました。それが法人化の前後まで続いたわけです。
1984(昭和59)年当時の私立大学は、平均で授業料が45万1,722円、入学料が22万5,820円で、国立大学に比べ、それぞれ1.8倍、1.9倍でした。それと比べれば現在は、公私間格差も縮小しているわけです。

授業料と入学料を足した額で比べれば、1984(昭和59)年当時の公私の差は30万5,542円、30年後の2014(平成26)年は30万7,673円と、ほぼ変わっていません。数字上、依然として私立大学より30万円ほど安いのは事実なのですが、生活実感としては、昔のように「家計が苦しくても、国立大学なら行ける」という状況でないことも確かでしょう。

こうした国立大学の授業料や入学料の上昇は、国の財政が潤沢ではなくなったころから、公私間格差を縮めるべきだという、財政当局の意向を反映したものです。昨年も、財務省は、国立大学法人に対する運営交付金を減らして、その分を、授業料収入を含めた自己財源で賄うよう提案したのですが、中央教育審議会が異例の緊急提言を行ったこともあり、結果的に運営費交付金は前年度同額となり、授業料などの値上げ問題は、ひとまず収束した格好です。

これ以上の値上げが家計を圧迫することは言うまでもありませんが、今でも国立大学の授業料などは、絶対的に安いわけでもありません。一方で、私立大学が授業料を徐々に上げているように、大学教育の質を向上させるためには、財源が必要なことも事実です。公私を問わず、教育費負担の在り方を、国の政策として真剣に考えることが求められます。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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