なぜ英語は必要なのか? 乏しい英語利用のイメージ

文部科学省が中学3年生と高校3年生を対象に実施した2015(平成27)年度の「英語力調査」(速報)では、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能がバランスよく育成されていないことが、大きな課題となっています。中高生に対する意識調査の部分からは、根本的な問題が浮かんできました。中高生にとって、英語を使って何をするのかという具体的なイメージが、あまりに乏しいことです。

政府の第2期教育振興基本計画(2013~17<平成25~29>年度)は、中学校卒業段階で「英検3級程度以上」、高校卒業段階で「英検準2級・2級程度以上」を中高生の50%以上で達成する、という目標を定めています。しかし、英語力調査の結果を見ると、2017(平成29)年度までに50%以上の中高生で目標を達成する、という計画の実現は難しそうです。

中高生の英語力が上がらないのには、授業方法など、さまざまな理由がありそうです。同時に注目されるのが、中高生の意識です。調査対象となった中3は、新学習指導要領により、小学5・6年生に「外国語活動」(英語教育)が初めて導入された最初の子どもたちです。それにもかかわらず、中3で「英語が好き」と回答した生徒は56.1%でした。裏を返せば、小学校高学年から英語を学んできたのに、中3になると4割以上が英語嫌いになっているのです。一方、やはり新学習指導要領で英語の授業を原則英語のみで受けてきた高3も、54.9%と半数以上が「英語嫌い」になっています。グローバル化対応を柱にした新学習指導要領で、「英語嫌い」をなくすことはできなかったようです。

さらに、どの程度まで英語力を身に付けたいか尋ねたところ、中3では「高校入試に対応できる力」35.4%と「海外旅行などで日常会話をし、コミュニケーションを楽しむ」34.0%の2つで約7割を占め、「国際社会で活躍できるようになりたい」は10.2%、「海外でのホームステイや語学研修を楽しめるようになりたい」は7.3%でした。一方、高3は、海外旅行などでの日常会話が35.6%でトップ、次いで「学校の授業以外での利用は考えていない」が20.6%、「大学入試に対応できる力」が18.8%となっています。「国際社会で活躍したい」は11.2%、「大学で自分が専攻する学問を英語で学べるようになりたい」は4.7%でした。

高校入試や大学入試に対応でき、将来の海外旅行で日常会話ができる程度、というのが、多くの中高生の英語力のイメージのようです。これでは英語力の向上は難しいといえるでしょう。

グローバル化は、「大人の理屈」に過ぎないのかもしれません。それでも英語力は、これから確実に必要になります。英語を使う環境を身近に設けたり、なぜ英語が必要なのかということをより具体的にイメージさせたりすることが、子どもたちには必要なのではないでしょうか。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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