深刻な教員採用試験の競争倍率低下 小学校で2倍台の教委も

文部科学省がまとめた2015(平成27)年度「公立学校教員採用選考試験実施状況調査」によると、教員採用試験の競争倍率が大きく低下していることがわかりました。競争倍率の低下は、受験者にとってはありがたいことですが、全体からすれば、採用試験のレベルダウンにもつながりかねません。いったい、教員採用試験に何が起こっているのでしょうか。

  • ※平成27年度公立学校教員採用選考試験の実施状況
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1366695.htm

2015(平成27)年度に、公立学校教員を採用するための選考試験を実施したのは、都道府県や政令指定都市などを含めて、合計68教育委員会でした。受験者は17万4,976人で、前年度より1.6%減少しています。逆に、採用者数は3万2,244人で、前年度より3.2%増えました。その結果、教員採用試験の競争倍率は、前年度より0.3ポイント減の5.4倍となっています。

教員採用試験の競争倍率は、2000(平成12)年度の13.3倍をピークに、減少を続けています。13倍以上あった競争倍率が、15年間で、5倍程度にまで低下しました。これは、第2次ベビーブーム時に大量採用された50代の教員が、一斉に定年退職の時期を迎えたことで、新規採用者数が増加したにもかかわらず、採用試験受験者数が思うように伸びなかったためです。

さらに、最近の景気回復を受けて、新卒者が民間企業などに流れ、採用試験受験者が減少したことも、競争倍率の低下に拍車をかけています。

学校種別に見ると、2015(平成27)年度採用試験の競争倍率は、小学校が3.9倍(前年度4.1倍)、中学校が7.2倍(同7.4倍)、高校が7.2倍(同7.2倍)などとなっており、特に小学校教員の競争倍率が4倍を下回るなど、低下が深刻化しています。

競争倍率は地域による差も大きく、問題を複雑化させる要因の一つともなっています。たとえば小学校教員の競争倍率は、鹿児島県11.0倍、岩手県10.2倍、宮崎県10.0倍など10倍以上のところがある一方、大阪市2.1倍、山口県2.3倍、茨城県2.7倍など、既に3倍を切っているところもあります。全体として、大量に教員を必要とする大都市部ほど十分な受験者を確保できず、競争倍率が低い傾向にあるようです。

競争倍率が下がっても、教育に熱意のある受験者が集まっていれば問題はない、という見方もできますが、やはり倍率の低下は採用のレベルダウンを招きかねません。各教委は受験者を増やすため、他の都道府県にも試験会場を設けるなどの工夫をしています。同時に、一人でも多くの優秀な人材が教員を目指すよう、勤務条件や社会全体の意識を改善することも必要だと思われます。

一方、採用者の内訳を見ると、非常勤講師などの教職経験者が49.2%(前年度52.0%)、アルバイトを除く民間企業等経験者が4.6%(同5.3%)、新規学卒者が35.1%(同33.6%)などとなっており、2003(平成15)年度以降、新規学卒者の割合が年々増加しています。これからも、採用者における新規学卒者の割合は増加することが予想されることから、大学における教員養成も、さらに実践的なものにする必要がありそうです。

また、新採教員の約半数に非常勤講師などの教職経験があり、初めて教壇に立つわけではないということを、保護者は知っておくことが必要かもしれません。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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