求められる組み体操の安全対策 東京都なども検討

運動会などでの組み体操の事故が、全国的に大きな問題となっています。
組み体操の中でも、特に問題があるとされているのが、四つんばいの姿勢で積み重なる「ピラミッド型」と、肩の上に乗って立ち上がり円筒を作る「タワー型」と呼ばれるもので、いずれも高さを競う競技です。ピラミッド型やタワー型は、次第に高層化する傾向があり、ピラミッド型では10段などの例もあります。その一方で、練習中や本番中にピラミッドやタワーが崩壊して、骨折などの負傷者が多く出ていることが問題となっていました。

このため大阪市教育委員会は2015(平成27)年9月、組み体操でピラミッド型は5段、タワー型は3段までとする高層化規制を通知しています。しかし、その後も組み体操の高層化には、歯止めがかかりませんでした。ところが、大阪府八尾市の中学校の運動会で、組み体操のピラミッドが崩壊し多数の負傷者が出たことから、組み体操の事故が全国的な注目を集めるようになりました。

このようななかで、愛知県の大村秀章知事は、組み体操の高層化を規制する考えを表明。千葉県松戸市の本郷谷健次市長も、安全対策がまとまるまで、市立小中学校の運動会で組み体操を中止するよう、市教委に要請するなどの動きが出ています。全国の都道府県議会などでも、組み体操の事故に関する質問が相次いでいます。これを受けて、東京都教育委員会は、体育的活動における安全対策検討委員会を設置し、運動会・体育祭、部活動などにおける安全対策の見直しを進めています。3月をめどに報告書をまとめる予定です。

  • ※体育的活動における安全対策検討委員会の設置について
  • http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2016/pr160114a.html

東京都教委の検討内容としては、運動会・体育祭の組み体操の「巨大ピラミッド・タワー」の他、ムカデ競争・騎馬戦・棒倒しなどが課題に挙がっています。都道府県教委が組み体操などの具体的な安全対策の検討をするのは、異例です。一方、組み体操全体が危険視されて、廃止の声が強まることを懸念する声も、体育関係者を中心に根強くあるようです。組み体操自体は、子どもの連帯感や団結力などを育成するために役立つ種目であり、安全対策に配慮していれば問題はないという意見です。

問題は、ピラミッド型やタワー型の安全対策が、実際には極めて困難な点でしょう。八尾市のケースでも、周辺に教員11人が補助員として配置されていましたが、ピラミッドが内側に向けて崩壊したため、役に立ちませんでした。ピラミッド10段の高さは約7メートルにも及び、ビルの2階相当の高さになるといわれています。

いずれにしろ、組み体操などでどのような安全対策が打ち出されるのか、高層化の規制あるいは組み体操の中止という方向になるのか。東京都教委の動きは全国的に大きな影響力を持っており、今後の全国的な流れを占ううえでも、検討委員会の報告が注目されるところです。

(著者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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