保育施設の死亡事故再発防止で対策まとめる 「無認可」も対象に

内閣府・厚生労働省・文部科学省による「教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会」は、保育施設での死亡事故などの発生後に地方自治体が第三者委員会を設置して、事故の原因を究明することなどを求めた報告書をまとめました。認可外保育所や一時預かりなども対象に含めることにしており、保育事故の再発防止を図ることが狙いです。

  • ※「特定教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会 最終取りまとめ」の公表について
  • http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/index.html#kyouiku_hoiku

政府は2015(平成27)年度から「子ども・子育て支援新制度」を開始して、待機児童解消のため保育に関する事業の拡大、規制の緩和などを行っています。しかし、ここで懸念されるのが保育事故です。保育施設などでの死亡事故は毎年10件以上起こっており、保育施設の拡大とともに、事故が増加する可能性があります。このため保育事故の情報について同検討会は、死亡事故、治療に30日以上を要する重篤な事故について、市町村や都道府県を通じて国に報告し、再発防止のためそれをデータベース化することを提言しました。現在は内閣府のホームページの中でデータベースが公表されています。しかし、これだけでは再発防止策として不十分であることから、さらに地方自治体が中心となって保育事故の事後検証を行うよう体制整備を求めたものです。

具体的には、死亡事故などが発生した場合、学識経験者、医師、弁護士、教育・保育関係者らで構成する検証委員会を、市町村と都道府県が設置するとしています。検証委員会は、幼稚園・保育所、特定地域型保育事業などの場合は市町村、認可外保育所の場合は都道府県がそれぞれ設置します。「事故に遭った子どもやその保護者の視点」に立って事故発生の原因の分析を行い、再発防止策を提言します。扱う事案は死亡事故、または意識不明などの重大事故で、検証結果と再発防止の提言などは報告書にまとめ国に提出。そして国の有識者会議で集計し、保育事故の傾向分析などを実施したうえで公表します。

ただし、これら再発防止のための検証委員会の設置については、法的義務を課さず、努力義務にとどめています。このため一部には、市町村が設置する保育所などで事故が発生した場合、十分に検証機能が働かないのではないかと指摘する声もあるようです。

この他、死亡事故などに関する報告をもとに、事故防止のためのガイドラインや事故発生時の対応マニュアルを作成すること、事前の通告なしに保育施設の立ち入り調査ができることを明確にすることなどを、報告書は提言しています。これを受けて厚労省は、睡眠中・食事中・水遊び中など保育事故が起きやすい場面ごとに注意点を明示したガイドラインを策定する予定です。

待機児童解消に向けて政府は保育施設の拡大、保育士資格の弾力化などを進めていますが、くれぐれも保育事故の増加につながることのないように配慮する必要があるでしょう。保育事故は、まず起こさないことが何よりも大切だからです。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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