不登校が2年連続増加 必要な社会的自立への協力‐斎藤剛史‐

当コーナーでは以前、小学校で暴力行為が増加しているという文部科学省の2014(平成26)年度「問題行動調査」の内容をお伝えしました。しかし、同調査にはもう一つ見過ごせない調査結果があります。それは、これまで減少傾向が続いていた小中学校の不登校が、2年連続で増加しているということです。なぜ不登校は、増えているのでしょうか。

調査結果によると、2014(平成26)年度に病気や経済的理由以外で年度間に30日以上欠席した「不登校」の子どもは、国公私立全体で小学校が2万5,866人(前年度比7.0%増)、中学校が9万7,036人(同1.7%増)で、いずれも2年連続して増加していました。特に児童生徒数1,000人当たりの不登校児童生徒の数は、小学校が3.9人、中学校が27.6人となっており、小学校では過去最多を更新しました。
これまで小中学校の不登校は2007(平成19)年度を一つのピークにして、12(同24)年度まで5年連続で減少傾向が続いており、沈静化しつつあるといわれてきました。ところが、2013(平成25)年度から2年連続で増加したことから、不登校が再び増加傾向に転じるのではないかと懸念されています。

不登校になったきっかけとして学校が挙げているのは、「不安など情緒的混乱」(小36.1%、中28.1%)、「無気力」(小23.0%、中26.7%)、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(小11.2%、中15.4%)などで、多くの保護者が心配する「いじめ」(小1.2%、中1.1%)などは少数でした。不登校が増えた理由について都道府県教委は「家庭の教育力低下により、基本的生活習慣が身に付かないことが不登校に結びつくケースが増えている」と説明しています。

不登校の増加に対応して、文科省は有識者会議を設置しています。その「中間報告」は、不登校は原因に応じて対応を考えることが効果的であるとして、「硬直的な対応策などを極力排するとともに、対応策を決定する前には、当該児童生徒やその保護者等とよく話し合う必要がある」と学校に求めています。具体的には、不登校の原因を正確に把握するため、問題を抱える子どもに対して「児童生徒理解・教育支援シート」を作成し、それぞれに合った支援計画を策定すべきだとしていす。注目されるのは、不登校に対する基本的な考え方として「社会的自立に向けた支援」を掲げ、場合によってはフリースクールなど「学校復帰以外の選択肢を提示すること」を打ち出している点です。

今のところ、なぜ不登校が増えているのか正確にはわかりません。しかし、家庭のみ、学校のみの対応では、現在の不登校は解決できないケースが多いのは確かでしょう。不登校の原因などをめぐって学校と家庭が対立するのではなく、関係機関も交えて互いに協力することが必要といえます。最終の目的は、子どもの「社会的自立」であることを忘れてはならないでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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