子どもの安全力を高める【前編】子どもの安全力とは何か

子どもが一人になった時に犯罪に事件に遭遇することが後を絶たず、子どもの安全への関心が高まっています。安全インストラクターで、「うさぎママのパトロール教室」を主催する武田信彦さんは、学校・保護者・地域の三者が協力して、子どもたちを見守るのと同時に、子ども自身の安全力を高めることも必要だと言います。子どもの安全力とはどのようなものなのでしょうか。武田さんに伺いました。



子ども・大人・地域の力で安全を守る

私は、安全に関する講演やワークショップなどのために全国各地を訪れますが、日本には、まだまだ地域で子どもを育てようという文化があると思います。実は子どもだけでおつかいができるような環境は、世界的に見れば当たり前ではなく、それだけ安全レベルが高いといえるのかもしれません。その一方で、街への人の出入りが活発になり、お互いへの関心が低くなりつつあります。

そうしたことから、PTAや地域のボランティアによる防犯パトロールが、各地で積極的に行われています。警察庁の調べによると、防犯ボランティアの数は、全国で4万7,532団体、約278万人に上ります。おそろいのジャンパーや腕章などを着けて街を歩くことは、周りの人たちに「パトロールしています!」というメッセージになり、事故や犯罪の防止につながっています。

ただ、少し残念なのは、学校・PTA・地域がばらばらに活動していて、連携していない場合が多いことです。たとえば、学校公開日などに、地域の防犯ボランティアを招待し、子どもたちとあいさつの練習などをすれば、子どもにとって、その人たちは、「知らない大人」ではなく、「守ってくれる人」となります。そうやって顔見知りとなり、町で会った時にもあいさつをし合うことが、地域の安全をさらに高めていくのです。

小学生となり、学年が上がるにつれて、子どもだけで行動することが多くなっていきます。しかし、友達と一緒にいて、地域の人たちが見守っていても、どうしても一人になってしまう瞬間が生まれてしまいます。そうしたスキを突いて、犯罪が起きています。
ですから、地域で子どもたちを見守るのと同時に、子どもが一人になったことを想定して対策を考え、練習しておき、子ども自身の安全力を高めていくことが大事なのです。



自分で自分を守るという意識を、子どもに持たせる

いきなり安全への意識を高めるのは難しいものです。できれば、小学校に入る前から、自分の身は自分で守るという意識を持たせていってください。不安だからといつまでも保護者が守ってばかりいては、中学生・高校生になって自分の行動に責任が求められるようになっても、「誰かが守ってくれるだろう」という意識が抜けません。大人になった時のためにも、安全への意識を育むことは重要でしょう。

「危険な場所」は特定できるものではありません。たとえ、大勢が遊んでいる公園でも、周りの人の意識が向いていなければ、一人でいるのと同じだからです。
一人になった時には、何より「今、自分は一人なのだ」と子ども自身が自覚することが重要です。子どもは、身長が低いので、大人よりも視野が狭いうえに、何かに気を取られたり、夢中になったりしていると、ますます周りに目が行かなくなります。背後に人がぴったりついていても、気付かないことがあるくらいです。ですから、まず一人であると認識し、周囲を観察するなど、自分の周りに注意を払うことが、危険を避ける予防の第一歩となります。

危害を加える人物像も、外見だけでは判断できません。「怪しい人に気を付けなさい」「知らない人についていっちゃだめ」と子どもに注意すると思いますが、「怪しい人物像」の先入観を持たせるのは、かえって危険です。若いOL風の女性が通りすがりの小学生にカバンをぶつけるという事件がありましたし、知っている人に連れ去られるという事案も発生しているからです。
注意して見るべきは、相手の行動と態度です。たとえば、道をたずねられ、その答えたお礼としてお菓子を渡されそうになったとします。子どもが「知らない人からもらっちゃいけないって言われているから」と断った時に、普通の大人ならば「困らせちゃってごめんね」と引っ込めますが、「大丈夫だから、今すぐ食べてよ」と強引に渡すのは怪しいといえるでしょう。



「逃げる」「助けを求める」ことが大事

それでも危険な場面に遭遇したら、とにかく「逃げる」「助けを求める」ことが大事です。「逃げる」というのは、助けてくれる人がいるところまで走って逃げ切ることです。逃げた先に助けてくれる人がいなければ、危険な状況は変わりません。また、あまりの恐怖に声も出ないことがあります。そうした時は、壁をどんどんたたく、「わー」などとにかく大きな声を出す。周りに気付いてもらうのが一番の目的ですから、「助けて」という言葉でなくてもよいのです。

時々、保護者が、子どもに戦う方法としての護身術などを教えているケースが見られます。ワークショップなどで小学生と話していると、子どもはそれを使えば悪いヤツをやっつけられると思っているようです。しかし、護身術をたとえ何度練習したとしても、とっさに出てくるものではありません。罪を犯そうとしている大人の力や知恵に、子どもが太刀打ちできるものではありません。まずは「逃げる」「助けを求める」ことをしっかり教えてほしいと思います。

『親子で読もう! 子どもの安全ブック』『親子で読もう! 子どもの安全ブック』
<スタジオタッククリエイティブ/武田信彦(監修)(著)/1620円=税込>

プロフィール

武田信彦

武田信彦

大学在学中に国際的な犯罪防止NPOに参加し、東京都内中心に街頭パトロールを実施。フリーの安全インストラクターを経て、2008(平成20)年、「うさぎママのパトロール教室」を設立し、講演やワークショップなどを通じて、身を守るコツを広く伝えている。

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