自立する子に育てる! 幼児の甘えさせ方【前編】甘えとわがままの違いとは

乳児から幼児へと成長するにつれて、「甘えさせてばかりいては、わがままになってしまうのでは」と心配になる保護者のかたも多いと思います。今回は、子どもの上手な甘えさせ方について発達心理学・幼児教育の専門家である東京学芸大学の岩立京子先生に教えていただきました。



乳幼児期に十分に甘えさせてあげることが、自立を促す

「甘える」というのは、生まれつき人に備わった欲求です。生後6か月ぐらいの赤ちゃんは、母親の姿が見えなくなると泣いたり、後追いをしたりするようになります。赤ちゃんがこうした行動をとるのは、母親などの特定の養育者と結びつきたいという欲求があるからです。これを「愛着」と呼びます。母親がこの愛着行動を十分に受け止めると、赤ちゃんは「お母さんは自分のことを守ってくれる安全基地」だと思えるようになります。
安全基地ができると、赤ちゃんは次第におもちゃや友達に興味を持つなど、外の世界へ探索に出かけるようになるのです。最初のうちは、すぐ母親の元へ戻ってきては甘え、安心することを繰り返しますが、次第に母親の姿が見えなくても安心して過ごせるようになります。保育所や幼稚園に行って楽しく遊んでいられるのも、愛着関係がしっかりと成り立っている証拠です。「お母さんが迎えに来てくれる」と心理的につながりを感じられるようになっているのです。小学校入学も迫りそろそろ自立してほしいと思うころかもしれませんが、この時期にもお子さまが十分に甘えられる関係を作っておくことができると、子どもは母親以外の人とも信頼関係を築けるようになり、自立へと向かうことができるのです。



「甘えさせている」と「甘やかしている」の違いは?

幼児期に十分に甘えさせてあげることが、自立を促すうえで大切だと述べましたが、「甘えさせている」と「甘やかしている」というのは少し違います。事例を挙げてご説明しましょう。


◆A君の事例
公園の砂場でお友達と遊んでいるとき、息子は友達の持っているスコップを貸してほしい様子です。でも、もじもじしていて自分では「貸して」と言えません、どうしたら良いでしょうか。


「甘やかす」というのは、子どもが望む前に保護者が与えてしまったり、無制限に要求に応えてしまったりすることです。この場合、息子さんが「貸して」と言えないからといって、保護者が先回りしてスコップを借りてしまうのは、甘やかしになるでしょう。
ただ、「自分で『貸して』と言いなさい」と叱っても、内気な子もいますから一人ではうまく言えない子もいます。そんな時は、子どもの気持ちに寄り添い、一緒に友達にお願いしてみると良いのではないでしょうか。このように、「甘えさせる」というのは、子どもの気持ちに寄り添いながらも、自立に向けてある程度の制限や条件をつけていくことです。



気持ちの寄り添い方に工夫を!

上記でご説明したように、幼児期には「甘え」が「わがまま」にならないように、子どもの要求にある程度の制限やルールを決めて応えていくことが大切です。たとえば、「夕食前にお菓子が食べたい」と言ったら無制限にお菓子を食べさせるのではなく、小さなお菓子を1個だけと約束して食べさせたり、ミニトマトをカワイイ動物のピックにさしてあげたりして、食べさせてはいかがでしょうか。また、一人で着替えられるのに「お母さん着替えさせて」と言うのであれば、ズボンは手伝うけれど、シャツは自分で着替えてみてねと伝えてみるのです。
保護者としては譲れない部分もあると思いますので、子どもの要求に耳を傾けながらも、上手く工夫をして子どもの気持ちに寄り添ってあげてほしいと思います。

◎父親や祖父母が子どもに甘い場合は……
自分は甘やかさないように注意していても、「祖父母や父親は子どもに甘くて困る」という相談をよく耳にします。もし、子育てをしているパートナーの甘やかしが気になるようであれば、家庭内でのルールを決めて、足並みを揃える必要があると思います。ただ、祖父母の場合は、仕方がない部分もあると思います。お子さまが幼児であれば、「おばあちゃんがいるときは特別ね」と説明し、特別ルールがあることを理解させれば良いのではないでしょうか。

次回は事例を通して、上手な甘えさせ方について考えてみたいと思います。


プロフィール

岩立京子

岩立京子

東京学芸大学総合教育科学系教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士を養成するかたわら、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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