気になる「くせ」とどう向き合う?【前編】減らしたい「くせ」を直すには

爪をかむ、髪をいじる、貧乏ゆすりをするなどの、いわゆる「くせ」。また、散らかしっぱなしで片づけない、忘れ物や遅刻が多いといった、子どもの行動面のくせも気になるものです。これらを直すために、保護者ができることはなんでしょうか。
『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』などの著書があり、行動分析学の立場から、人の行動の原因と本質について研究してこられた島宗理教授にアドバイスしていただきます。
今回は、ストレスがかかったときに出やすいなど、心理面と関係の深い爪かみなどの「くせ」について伺いました。



「くせ」はストレスによって出やすくなる

爪をかむ、髪を引っ張る、貧乏ゆすりをするなど、いわゆる「くせ」(神経性習癖)。くせが出る原因やメカニズムはまだ解明されていませんが、なんらかのストレスがかかったときに出やすいことがわかっています。
つまり、「そのくせ、やめなさい!」と叱るのはストレスのもとになり、かえってくせを助長することにつながります。保護者の小言が、やめるためのハードルを上げてしまうことになるわけです。
また、「くせ」は単なる「行動」であり、本人の性格とは無関係です。「汚い」「だらしない」といった、本人を否定するような言葉は避けましょう。



そもそも「くせ」は直すべきもの?

くせは、直そうと思ってもなかなか直せないもの。本人が直したいと思っていない行動を、他人が変えるのは非常に難しいことです。
たとえば爪のかみすぎで出血や化膿など身体的な損傷が生じる、勉強に集中できない、友達にからかわれるといった問題が起きているなら直す必要がありますが、生活に大きな支障がないなら、そのままにしておくというのも選択のひとつです。
保護者から見て、そのくせに問題ありと思われるのに、本人が気付いていない場合は、叱らずに「今、指をしゃぶってたよ」などと、軽く声をかけて自覚を促してみましょう。
そのうえで、
「直してみる」
「そのままにしておく」
という選択肢を用意し、本人が選ぶ機会を確保することが大切です。やらされていることと、自分で選択してやると決めたことでは、遂行率に差が出てくるのです。



大人が見本を見せてみる

本人が自分から直したいという方向に持っていくには、くせを直すメリットを伝えてみるのもよい方法です。たとえば、髪を引っ張るくせであれば「やめなさい」ではなく「そんなことをしたら、きれいな髪が台無しだよ」といった言い方に。爪かみであれば、「くせを直して、爪がちゃんと伸びてきたら、一緒に爪磨きで磨いて、きれいにしてみようね」と声をかけるなど。また、保護者自身がくせを克服してみるのもひとつの手です。たとえば、「わたしは髪をいじるくせをやめたいんだけど、いじってるのに気づいたら教えてね」というふうに。「くせをやめて、お母さんは格好良くなったな」と、子どもがメリットを実感できれば、自分から直したいと思うようになるかもしれません。
ただし、子どもが「このままで良い」と言った場合、その選択は尊重してあげてください。



くせを直すには

ここで、比較的簡単で効果があるとされている方法(心理学で「習慣逆転法」と呼ばれる方法の簡易版)を紹介します。ただし、この方法は、子ども本人が、「くせを直したいんだけど手伝ってくれない?」と助けを求めてきたときだけに使ってみてください。くれぐれも強制しないように注意してくださいね。

1.くせを自覚する練習をする。
周囲の人が「今、爪をかんでいるよ」などと声をかける(叱らない)。子どもが自覚できるようになるまで続ける。

2.そのくせと反対方向の動作(「拮抗行動」)を一定時間行う。
(たとえば爪かみなら拳をつくって2、3分間握りしめる)。

拮抗(きっこう)行動は、周囲からは目立たずに数分間続けられ、くせと同時にできない動作であることが大事です。
 
実はわたし自身、爪をかむくせがあります。子どものころは爪を見られるのが恥ずかしく、大学時代には、友人から「それは子どものころの愛情不足だろ」などとからかわれたりしていました。
行動分析学を学んでからは、自分でさまざまな方法を試してみました。「習慣逆転法」を試したところ、自分は爪をかむだけでなく、いじっていることがわかり、爪をいじる行動を自覚するたびに拳を握る「拮抗行動」を行ってみました。その結果、爪切りが必要になるところまで爪を伸ばせるようになりました。
現在のわたしは、爪かみは「親の愛情とは無関係な行動」であり、拮抗行動を続ければやめられるけれど、そのままでもOKと認識しています。そう思えるようになってからは、ずっと気持ちが楽です。
 
くせは直すにしろ、直さないにしろ、本人が自分で考えて対処法を選ぶことが大切です。子どもがくせを直したいと言ったときは協力してあげ、成功したらほめてあげてください。

次回は、片づけられない、忘れ物が多い、遅刻ぐせといった子どもの行動に関するくせについてアドバイスしていただきます。


プロフィール

島宗理

島宗理

法政大学文学部心理学科教授。専門は行動分析学。著書に、『インストラクショナルデザイン──教師のためのルールブック』(米田出版)、『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』(光文社)などがある。

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