「格差」乗り越え安心して進学を 文科省も大学生の経済支援に本腰‐渡辺敦司‐

お子さんを大学まで進学させることを考える多くのご家庭にとって、教育費をねん出することが悩みの種であることは言うまでもないでしょう。日本は教育費の家計負担が最も高い国の一つであることも、当コーナーでたびたび紹介してきました。長期化した不況の影響で経済格差が深刻な「進学格差」を引き起こすのではないかとの心配が高まるなか、文部科学省もようやく抜本的な対策の検討に乗り出しました。2013(平成25)年4月には有識者を委員とする「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」を発足させ、来年度予算に対策を盛り込むべく、夏の概算要求に向けて精力的に審議を行っています。

奨学金(外部のPDFにリンク)の存在は、経済的に余裕のない家庭にとって不可欠です。しかし、私立大学の自宅外生(2013<平成25>年度入学生)で日本学生支援機構(旧日本育英会)から月額6万4,000円の第一種奨学金(無利息)を受けたとしても、4年間の貸与総額は307万円余りとなり、卒業して半年後の10月から18年間、毎月約1万4,000円の返還が待っています。毎月10万円の第二種奨学金(利息付き)を受ければ在学中は楽ですが、毎月約2万7,000円を20年間返し続けて、返還総額は650万近く(年利率3.0%の場合)にもなります。
総務省のデータ(外部のPDFにリンク)によると、高校卒業後に専門学校などを含めた高等教育機関に進学して卒業しても3人に1人は30代以降も年収300万円以下で、今や進学が必ずしも高収入を保証するものではなくなっています。大卒の正社員に限ると年収300万円以下は30代後半以後になれば10%を下回るのですが、20代前半では63.7%と3人に2人近く、20代後半でも31.5%と3人に1人近くが年収300万円以下にとどまっています。そんな将来への不安があるなかで奨学金の返還という膨大な《借金》を抱えるのでは、利用にしり込みしても無理もありません。必要な人に奨学金が届かない実態があることも以前紹介しましたが、それでは「経済的支援」の意味が薄れてしまいます。

2012(平成24)年度からは、所得年収が300万円以下の世帯を対象に、本人が年収300万円になるまでは返還を猶予する「所得連動返済型の無利子奨学金制度」が創設されました。しかし300万円を1円でも超えたとたんに毎月約1万4,000円の返還が始まるため、この所得層にとっては厳しいままであることも否めません。
そのため検討会では、無利子奨学金や授業料免除の拡充に加え、所得連動返済型で本人の年収が300万円を超えたあとも所得額に応じて徐々に返還額を上げていく方法(外部のPDFにリンク)に改正することや、現在は一律10%という高い延滞金の率を下げることなどを検討(外部のPDFにリンク)しています。成績優秀者に返還を免除するのも、学業への意欲を高める刺激になるとしています。

自身が交通遺児として苦学した下村博文文科相が熱心であることも反映して、検討会のなかでは将来的には大学などの授業料まで無償にすべきではないかとの意見も出ています。将来への不安がなく学業に打ち込めるような支援策を望みたいものです。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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