子どもの「ワクワク感」を引き出していますか？[やる気を引き出すコーチング]

学習

就職セミナーなどで高校によく招かれます。開講に先立って、講師紹介と共に、担当の先生が、「セミナーを受ける心がまえ」を生徒の皆さんにお話しされるのですが、意外とこんなトーンが多いのです。
「今、高校生を取り巻く就職環境は非常に厳しいです。会社からの求人もなかなか増えません。早い時期から、かなり覚悟をして準備をしなければ、そう簡単に内定をもらうことはできません。この厳しい就職戦線を勝ち抜くためにも、今日は石川先生のお話を、気持ちを引き締めてよく聞いてください」
おっしゃっていることは正しいのですが、「あーあ」と思います。この言葉で、やる気になれる生徒は、残念なことですが、まずいません。

「脅し文句」は委縮か反発を招くだけ

「えー!?　そんなに厳しいの？　じゃあ、フリーターで良いよ」と、すぐあきらめるか、「自分にはゼッタイ無理！」と、尻込みをしてしまうかが、最近の子どもたちの傾向のように思います。
「そうか！　そんなに厳しいんだったら、気合い入れて乗り越えてやる！」という気概を持てないのかと思うのは、大人の願望に過ぎません。
そして、就職カウンセリングの現場で高校生から言われる言葉のなかに、意外と多いのがこんな言葉です。
「今日は、叱られるのかと思ってドキドキしながら来ました。まだ、何も考えてなかったので。親には、『ちゃんと考えておかないとヤバイぞ！』っていつも言われてるから。でも、来て良かった。これをやったら、内定もらえるかもって思えたので、ちょっとやってみても良いかな！と思いました」

子どもたちは、大人から、日常的にいろいろな脅し文句を言われているようです。
「そうとうがんばらないと、まず合格は無理だよ」
「よく考えておかないと失敗するよ」
「このままだと絶対にあとで後悔するよ」
決して悪気があるわけではなく、子どもを心配する気持ちからの言葉だとは思うのですが、将来の不安をかきたてたり、危機感をあおったりする言い方では、かえって、子どもたちを委縮させるか、反発を招くだけだと思うのです。

目標を達成した気持ち、イメージを聞いてみる

これは、ある学習塾の先生と生徒の対話の一部として伺った事例ですが、わたしが、就職カウンセリングのなかでもよく行っていることで、とても共感できました。なかなかやる気になれない生徒には、「それを達成できたらどんな気持ちなのか？　どんなことが待っているのか？」をイメージしてもらうように話していくのです。

「ねぇ、第1志望に合格できたらどんな気持ち？」
「えー!?　そりゃあ、嬉しいっすよね。最高です！」
「そうだよね。合格したあとは何したい？」
「うーん、のんびりしたい。っていうか、すっごく安心すると思います。がんばってよかったなーって」
「そうだね。今、のんびりする時間もなく、がんばってるもんね。入学したら、やってみたいこととかある？　もう考えてる？」
「えー!?　入りたいなっていう部活があってー」
「うんうん！　何？　何？」
そんなワクワクする話をしているうちに、子どもたちは、
「もっと、がんばります！」
という気持ちになっていくのだそうです。

よく考えてみたら、大人だってそうかもしれません。「やらないと叱られるからやる」のと、「やり遂げたあとに、こんな達成感や楽しみが待っている」と思ってやるのとでは、取り組み方が明らかに違うはずです。自分が行動を起こした先にある《ワクワク感》に焦点をあてた時に、人は自然と前向きになれるものです。

危機感をあおるコミュニケーションではなく、もっとワクワクするような未来に焦点をあてた話をしてみませんか。「これをやったらこんな良いことがあるかも！」という気持ちを、子どもたちのなかから呼び起こすことは一つの動機づけになると思いますし、勉強であれ、何であれ、「～ねばならない」ではなく、「～したい」という気持ちで取り組んでほしいと思うのです。