進学費用の二重ローンに陥らないために、高校3年生の夏までに保護者がすべきこと

新年度を控えたこの時期、進学費用についてアドバイスをする機会が増えています。日本学生支援機構の奨学金は、高校3年生の春に予約手続きが行われるため、その時期にあわせて、高校が呼んでくださるからです。
奨学金の利用なしでは進学できないにもかかわらず、奨学金に対して勘違いされていることが少なくありません。そのため、教育資金が二重ローンになってしまい、将来の支払いが大変になってしまうケースが出てきています。
ここでは、貸与型の奨学金を利用することを前提に、親が注意すべきことをお伝えします。



奨学金採用OKでも、初年度納入金には使えない

日本学生支援機構の奨学金は、大学進学の場合、月額3~12万円(有利子の第2種で12万円の場合、私立の医学部等は別途上乗せあり)の範囲で借りることができます。初回振込日は、大学1年生の4~6月です。
一方、初年度納入金は、100万円を超えるのが一般的です。前期・後期の分割払いにすると、70~80万円程度を入学前に払います。推薦やAO入試の場合は、高校3年生の秋が多く、9~10月頃に支払いの学校もあります。
つまり、大学に払う金額も期日も、奨学金の受取額や振り込まれる期日と、まったく折り合わないのです。
奨学金をアテにして、子どものための蓄えがゼロというケースも見受けられます。このような場合、初年度納入金分をどこからか借りてくることになります。ない袖は振れないのだから、進路を変更して就職を選択してもよさそうなものですが、高校生の就職状況も依然厳しいので、選ぶ道は進学しかないようです。



貸与型奨学金+教育ローン=二重のローン

初年度納入金というまとまった金額を用意する方法はふたつ。第1は、家計からのコツコツ貯金です。誕生からお金が必要になる時期まで、17年間は貯める時間があるので、初年度納入金が120万円だとすると、毎月6,000円積み立てれば良い計算です(120万円÷(17年×12月)=5,882円、金利考慮せず)。小1からなら9,100円、中1からだと2万円、高校入学から3年生の夏休みまでだと4万1,500円です。早くから始めると、毎月の負担は少なくてすみますね。

この貯金ができないと、お金を借りてくることになります。保護者が、日本政策金融公庫をはじめ、銀行などで教育ローンを組むのです。
日本政策金融公庫の金利は、2.45%(2013<平成25>年1月17日現在)。120万円を借りて5年間の元利均等払い(保証料別途)は、月返済額2万1,720円、10年間では1万1,400円です。この支払いは、1年生時の学費分です。
2年生以降の学費は、前年の奨学金を貯めて支払いに充てます。年間96万と仮定し、利息ありの第2種を月額8万円で3年間借りたとすると、返済総額は金利が上限の3%で367万2,102円、現在の金利に近い1%だと313万1,772円で、それぞれ16年間にわたり月額19,125円、16,311円を払います(端数調整あり)。


【図】教育ローン・奨学金の借り入れ例


教育ローンは、返済期間を、ある一定期間の中で自由に設定できます。同じ金利であれば、返済期間を長くするほど毎月の支払額は少なくなります。しかし、長く借りるほど総返済額はふくらみますから、家計の許せる限り、短い期間で返済すべきです。
特に、教育ローンと奨学金の返済時期が重なる返済期間(図表の例:10年)を選択すると、ふたつの返済が重なる5年間は、毎月の返済額が、奨学金の金利1.0%で約2万7,800円、3.0%では約3万600円にもなります。これまで貯めてこられなかったから借りたのに、貯めておけばよかった金額よりも多くを支払うことになります。



借りずにすむよう、とにかく貯めておく

子どもを大学に進ませるつもりなら、4年間の費用すべてを入学までに用意するのがベストです。多少は不足するとしても、3年分くらいは大学入学時までに貯めておきましょう。子どもが大学入学後、3年間かけて4年目の学費を貯めることはできるはずです。それでも厳しいのであれば、せめて初年度納入金分は、高校3年生の夏休み明けまでに貯めておきたいものです。そうすれば、二重にお金を借りなくてすみ、親の老後生活費に大きな影響を与えることは避けられます。

親は、子どもの奨学金の連帯保証人です。そのうえ、教育ローンまで背負うのは、本当に大変なことです。現金で買い換え予定だった、仕事に必要な車をローンで購入することになったり、住宅ローンの支払いが滞ったりしたご家庭がありました。お金を借りてでも学ばせたい気持ちは理解できます。そのうえで、借りる金額や返済期間など、自分たちの返済能力を十分考え、最小限の利用ですませられるようにしてほしいと思います。

そのためには、大学入学までの時間を味方につけて、毎月、1,000円でも多く貯金できるようにしましょう。毎月の積立予定額1万円なのに今月は難しいというとき、来月2万円しようと考えては長続きしません。今月9,000円でも8,000円でも、1,000円でも良いから、とにかく貯めます。もちろん、翌月に余裕があれば2万円貯めます。ずいぶん多くの保護者のかたとお話ししてきましたが、今月1万円できなかったのに、翌月は2万円できたというかたは少なかったようです。やはり、毎月のコツコツを大切にしてください。

『子どもにかけるお金の本』 『子どもにかけるお金の本』
<主婦の友社/子どもにかけるお金を考える会(著)/1,365円=税込み>

プロフィール



「らいふでざいん菅原おふぃす」代表。ファイナンシャルプランナー、教育資金コンサルタント。子育て世帯の教育費を中心としたライフプラン相談、進学資金が不足している高校生と保護者向けの教育資金セミナーおよび親が老後破産しないためのアドバイスに注力中。「子どもにかけるお金を考える会」メンバー。子どもは3人。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A