優秀な新任が集まらなくなる!?  教員の質、低下のおそれ

学校にお子さんを通わせる保護者にとって、担任する先生は優秀であってほしいものです。10年に一度、最新の知識を身につけてもらうために教員免許更新制も導入されましたし、先頃は教員免許状の取得を大学院レベルに引き上げようという提言もありました。しかし、そうした国内の政策とは別に、日本の教員の質が将来的に危うくなるのではないかという指摘が国際機関から発せられているといったら、驚くでしょうか。

国際機関の指摘とは、先にも幼児教育に関する記事で紹介した経済協力開発機構(OECD)の「図表でみる教育」(外部のPDFにリンク)の最新版です。そこでは「かつて日本の教員は高い給与を得ていたが、これは経験のある教員には依然として当てはまるものの、新人の教員にはもはや当てはまらなくなっている」としています。
それによると先進諸国では2000(平成12)年以来、教員の実質的給与が上昇しているのに、日本では2010(同22)年、逆に9%も低下しています。これは、先進諸国が経済発展のために教育投資を増やし、その一環として優秀な教員を集めようと給与増を図ったのに対して、日本では自治体の財政難により、一般公務員と横並びで教員給与を削減したためとみられます。

今は第二次ベビーブームの時に大量採用された50代の教員が大量退職する時期に当たっており、不況による就職難ということも相まって、大学生の教職人気は高まっています。ただ、採用枠が拡大したということは、それだけ倍率も下がることにつながり、合格者の質が下がっているのではないかとの懸念も、関係者の間に広がっています。そうしたなかでもし民間就職が好転すれば、給料が安いのに、忙しくて心労も絶えない教職を目指そうとする優秀な人がますます減ってしまわないか……将来的には、そんな心配もあるのです。
いじめ問題などに見られるように、わたしたちはどうしても、日本の先生の悪い面や足りない面ばかりが気になりがちになります。しかし国際比較をしてみれば、日本の教育が高いレベルを保っていられるのは、教員の優秀さによるのだといいます。

別のところでOECDは、学級規模の縮小だけでなく、教員の質を高めることに力を入れるべきだと提言(外部のPDFにリンク)しています。これは一学級の子どもの人数が多くても、OECDが実施する「生徒の学習到達度調査」(PISA)で好成績を上げ続けている日本の教員の指導力の高さに着目してのことです。教員の質を高めるためには、高い能力を有する学生にとって教職を魅力的な職業にすることや、教員養成や研修の改善、給与体系の整備、困難を抱える教員のパフォーマンス(腕前)を上げることなどが必要だとしています。

これまで日本の教員の給与が高かったのは、田中真紀子文部科学相の父である田中角栄氏が首相時代に教員給与を優遇する法律を制定したことが基になっています。かつて議員立法で教職志望者に介護等体験を義務付けた田中文科相にも、そうしたOECDの提言に耳を傾けることを期待したいと思います。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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