大学は「規制緩和」から「淘汰」の時代に

日本の私立大学の数は、設置認可の規制緩和と大学進学率の上昇に伴い、増加を続けてきました。しかし、ここにきて文部科学省は私立大学について、選別と淘汰へと政策を転換しつつあるようです。背景には、定員割れの増加など大学市場が飽和状態になっていること、社会のグローバル化により大学教育の質の保証が求められていることなどがあります。今後の大学受験などに、どのような影響が出るのでしょうか。

旧文部省は大学の新増設を抑制する方針を取っていましたが、政府が地方分権の推進とともに規制緩和の方針を打ち出したことを受けて、1991(平成3)年に大学設置基準を大幅に大綱化しました。これにより、1990(平成2)年度には372校だった私立大学は2012(同24)年度には605校にまで増えています。4年制大学への進学率(浪人生を含む)は、1991(平成3)年度25.5%だったものが、09(同21)年度は50.2%と初めて5割を超えるまでに上昇を続けていましたが、ここ数年は頭打ち傾向にあり、12(同24)年度は50.8%にとどまっています。
少子化により高校生の数は減少していますから、進学率が頭打ちとなれば当然、大学入学者の数が減ることになります。日本私立学校振興・共済事業団の調べ(外部のPDFにリンク)によると、今春に入学者数が入学定員を下回った「定員割れ」校は、私立大学全体の45.8%に上っています。つまり私立大学の市場は現在、ほぼ飽和状態ということになります。また、私立大学入学者の約半数は、推薦入試やAO入試など実質的に学課試験なしで入学しており、大学教育の質の低下の原因になっていると言われています。

一方、グローバル化による国際競争力の向上、大学教育の質の保証などが国全体の課題となっていることを受け、文科省は今年6月に発表した「大学改革実行プラン」の中で、私立大学に対して、大学教育の質を向上させグローバル人材や地域振興の担い手となる人材を育成する大学に重点的に補助金を配分し、経営状態や教育環境などに問題がある私立大学には厳しく対処するなど、「社会変化に適応できない大学等の退場」を求める方針を明確に打ち出しました。既に今年9月の来年度概算要求には、補助金の重点的化などの措置が盛り込まれています。また、大学教育の質の向上については、中央教育審議会が今年8月に具体的方策などを答申していますが、これらに対応できない私立大学は今後、募集停止や廃校などに追い込まれることも予想されます。

既に私立大学の5割近くが定員割れしていることを考えると、今後の受験生への影響は少ないという見方が一般的です。しかし、経営状態が不安定な私立大学には地方の小規模大学が多く、大都市部の大学に進学する経済的余裕のない家庭の子どもたちの進学機会を奪うことにもなりかねません。人気のある学部に定員が偏るなどのアンバランスも懸念されます。大学の再編は市場原理に任せるだけでなく、行政的な目配りも欠かせないところでしょう。


プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A