「私立中学校」受験と「公立中高一貫」受検の違いって?

今回は、ベネッセ教育研究開発センターが行った「中学校選択に関する調査」※1と「母親へのインタビュー調査」※2から、広がる中学校選択の現状をご報告します。
特に、中学校選択の大きな選択肢となりつつある「公立中高一貫校」を第1志望にする家庭にスポットをあて、その受験スタイルや、生活実態、通塾状況、受験を決意した要因などを探っていきます。


※1:全国の公立小学校に通う6年生1,501名とその保護者1,504名を対象。2007(平成19)年12月実施。
※2:中学受験をした22人の母親が対象。2008(平成20)年6月に実施。


「中学校選択」とは中学校入学時における進学先の選択を指し、地域の公立中学校への進学、学校選択制による中学校選択、私立や国立の中学校の受験、公立中高一貫校の受検を含んでいます。※また、公立中高一貫校については通常「受検」を用いますが、図表の中では便宜上「受験」としています。


広がる中学受験。「公立中高一貫校」の定着が大きな要因

【図1 第1志望の学校は、どのような中学校ですか (受験させる保護者のみ対象)】
図1 第1志望の学校は、どのような中学校ですか (受験させる保護者のみ対象)


【図2 中学受験をさせようと決めたのはいつですか (受験させる保護者のみ対象)】
図2 中学受験をさせようと決めたのはいつですか (受験させる保護者のみ対象)


【図3 何校くらい受験させるつもりですか (受験させる保護者のみ対象)】
図3 何校くらい受験させるつもりですか (受験させる保護者のみ対象)


【図4 6年生のお子さま、1人にかかる教育費は、月平均でいくらぐらいですか】
図4 6年生のお子さま、1人にかかる教育費は、月平均でいくらぐらいですか


●第1志望=「私立中学校」6割、「公立中高一貫校」2割
目立つのは、公立中高一貫校が選択肢として定着してきたことです。中学受験予定者全体の23.7%を占め、受験予定者の4人に1人が公立中高一貫校を第1志望にしています。特に人口5万人未満の地域では、受験予定者の約5割が公立中高一貫校志望です。

●受験決定時期と受験予定数
=「私立中学校」第1希望者は、4~5年生で受験を決め、2校以上受験する
=「公立中高一貫校」第1志望者は、6年生で受験を決め、1校のみの受験が多数

「私立中学校」第1志望者が4~5年生で受験を決める場合が多く、7割以上の保護者が複数校の受験を予定しています。それに比べて、「公立中高一貫校」第1志望者は、約75%が6年生になってから受検を決め、約9割が1校のみの受検を予定しています。

●1か月の教育費=「私立中学校」第1志望者は約6万円に対し、「公立中高一貫校」第1志望者は約2.5万円
子ども一人当たりの1か月の平均教育費は、受験させない家庭は約1.4万円、公立中高一貫校が第1志望の家庭は2.5万円、私立中学校が第1志望者の家庭は約6万円と大きく差がつきます。

公立中高一貫校の受検は私立校受験に比べて、難関私立の集まる都市部だけでなく地方でも受検でき、また受検決定時期も遅め、教育費も私立中学受験ほどはかかりません。チャレンジしやすい中学受検と言えそうです。


「公立中高一貫校」第1志望の子どもの生活には、ゆとりがある!?

【図5 子どもの生活時間 希望進学先別(単位:分)】
図5 子どもの生活時間 希望進学先別(単位:分)


注1:濃いグレーは全体平均より5分以上長いことを、薄いグレーは全体平均より5分以上短いことを示す。
注2:「学校外の学習」の時間は、「あなたはふだん(学校がある日)、学校以外で、1日にどれくらい勉強しますか」の質問への回答により算出。学校の宿題の時間や学習塾で勉強する時間を含む。
注3:「習い事」の時間は、7日で割って子ども全体の1日あたりの平均時間を算出した。
注4:(  )内はサンプル数。



●学校外の学習時間=「私立中学校」第1志望者は約3.5時間、「公立中高一貫校」第1志望者は平均2時間
「受験しない子ども」の学校外の学習時間は平均1時間15分。つまり、「公立中高一貫校」第1志望の子どもたちは受験しない子どもの約2倍、「私立中学校」第1志望者は約3倍勉強していると言えます。

●生活にゆとり。「公立中高一貫校」第1志望者の習い事・テレビ時間は「受験しない」層とほぼ同じ
「私立中学校」第1志望の子どもたちは習い事やテレビに費やす時間は平均の半分ぐらい、友達と遊ぶ時間も極端に少なく、勉強以外の時間を削って生活しているのがわかります。
一方で、「公立中高一貫校」第1志望の子どもたちは、習い事やテレビ時間を減らしておらず、友達と遊ぶ時間も約1時間はあり、生活にゆとりを保っているようです。

●「公立中高一貫校」第1志望者は、家族と話をする時間が最も長く、ゲーム時間は短い
家族と会話する時間は、「受験しない」子どもたちよりもさらに長くなっており、親子のコミュニケーションがとれていると言えそうです。また、読書やパソコンなどの趣味の時間はしっかりとっている一方で、ゲームに費やす時間は少なく、「私立中学校」第1志望の子どもたちと同程度で時間配分がうまくできているように見えます。

ただし、家族と会話する時間に関しては、入試問題の傾向が私立中学校と公立中高一貫校とで異なっていることの影響もありそうです。母親インタビューからは、勉強面のフォローなどの関わり方について、志望校によって違いが見られます。

私立中学校を受験する家庭では、宿題などに丸つけをしたり、ファイリングをしたり、勉強のペースメーカーをしたりする母親が多く見受けられます。これに対して、公立中高一貫校を受検する家庭では、子どもに日常生活の体験をさせるといったかかわり方が多く、自然と親子の会話も増えるのではないでしょうか。


「公立中高一貫校」受検を決めたのは?

【図6 中学受験を、最初に思った(言い出した)人はどなたですか (受験させる保護者のみ対象)】
図6 中学受験を、最初に思った(言い出した)人はどなたですか (受験させる保護者のみ対象)


●「公立中高一貫校」受検は、子どもから言い出す場合が5割以上
「私立中学校」受験の場合、最初に言い出すのは保護者と子どもの割合が同じぐらいですが、「公立中高一貫校」受検は子どもから言い出す割合が多いのが特徴。

母親インタビューからも、その声は多く聞かれます。
実際に、子どもたちは、友達や上の学年の人の影響からだけでなく、学校の取り組みや入学試験・適性検査の問題におもしろさを感じるなど、学校の特徴にひかれて受検を言い出しているようです。

  • 3年生のときに、サッカークラブの先輩が受検すると言っていた。その先輩が子どもにとって格好よかったらしく、先輩が行った学校が気になると言っていた。本人は、そのころから意志が固まっていた。親は、5年生ぐらいでそれが本気ということに気付いた。先輩から過去問題集や情報をもらってやっていた。 よく受かったなと思う。(首都圏・公立中高一貫校)
  • 子どもが受検したいと言うようになった。模擬試験を無料で受けて、5年生なので点数は取れなかったが、普通の国語、算数、理科、社会よりおもしろくて、やってみたいと言うようになった。学校の評判を聞いていて、新設校で、設備もきれいで、行ければ高校受験もしなくて良いなら、そこに行きたいというのがあったようだ。(首都圏・公立中高一貫校)

●受験校を決めた要因は?
=「私立中学校」第1志望者の保護者は、「中~高を通した学校生活や友達関係の良さ」を評価
=「公立中高一貫校」第1志望者の保護者は、「学校の新しい取り組みや熱心な指導」に期待

保護者が中学受験を決める要因として「地元の公立中学校への不安が大きい」という調査結果がありますが(次回、詳しくご紹介します)、同時に「受験する中学校への期待」も考えられます。

母親インタビューでも、「私立・国立中や公立中高一貫校そのものに魅力を感じた」という声も少なくありません。
特に、私立中学校を受験させた保護者は、「中~高の6年間を通した学校生活や友達関係の良さ」を評価。
それに対し、公立中高一貫校を受検させた保護者は、「学校の新しい取り組みや熱心な先生、施設・設備」など、新しく創られた学校であることを評価しており、学校見学などでの好印象が決め手になっているようです。

●母親インタビューより
[私立中学校]

  • その学校を選んだ時点で、ある程度価値観が似ている。そういった友達と楽しく学校生活を過ごしていけて、一生つきあえる友達ができると思う。(首都圏・私立中学校・難関以外)
  • 自分は私立の中学校・高校だった。部活動を集中してできて、女子校で楽しかった。娘を持ったときから、中学校から私立にと思っていた。(首都圏・私立中学校・難関以外)

[公立中高一貫校]

  • 学校の施設・設備がきれいだし、授業参観に行った時も、先生方が熱心だった。公立の評判も良いけれども、もっと良い環境かなと思った。(首都圏・公立中高一貫校)
  • 4年生の時に、今の学校の学校説明会があるということで、興味があって話を聞きに行ったら、新しい試みで良い学校だなという印象を受けた。それから学校見学にも行って、良い学校だと思った。(首都圏・公立中高一貫校)


(まとめ)
都市部と地方では程度の差がありますが、中学受験をする人が増えているのは確かです。特に、これまで中学校を選択する環境が少なかった地方で「公立中高一貫校」受検の存在が大きくなっています。

「公立中高一貫校」受検の場合、「私立中学校」受験よりは、少しゆとりのある受検対策や生活スタイルが特徴的。また、通塾率も低く、受検の意志決定から受検当日までの期間も短めであることからソフトな短期決戦ともいえそうです。でも、もちろん人気のある中高一貫校では私立中学受験なみのハードな準備は必要です。

中学校の選択肢が増えることはありがたいですが、ベストな進路選択をするのはとても難しいこと。こうした状況では、親子の関わりがますます重要になってきます。次回は中学受験を決めた保護者の教育に対する価値観や子どもへの期待感、受験勉強中の親子関係についてご紹介します。


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