子ども時代の自然体験、年収・学歴にまで影響?

子どものころに豊かな自然や動植物に親しむ体験を積むことが大切だということは、誰にも異論がないでしょう。しかし、自然体験などが子どもの将来にどんな影響を及ぼすのかということは、意外にわかっていません。独立行政法人国立青少年教育振興機構の調査によると、子どものころに自然体験などさまざまな体験を積んだ者ほど、学歴や年収が高いということが明らかになりました。

調査は2009(平成21)年11月、インターネットによるアンケート方式で実施し、20代から60代の成人5,000人から回答を得ました。回答を統計的に処理して分析した結果、現在の「意欲・関心」が高いと見られる人たちのうち、子どものころに海や川で遊んだ経験が何度もある者は33.6%、逆に経験がほとんどない者は22.0%で、明らかに差がありました。ほかの調査項目でも同様の傾向が見られ、同機構は、子どものころに自然に触れた、友達と体を使って遊んだ、地域の大人たちと接したなどの経験が多い者ほど、大人になってからの「意欲・関心」「規範意識」「職業意識」が高いと結論付けています。
それだけではありません。最終学歴が「大学・大学院」の割合は、子どものころの体験が多い者が50.4%、少ない者が45.4%。さらに、「年収500万円以上」の割合は、体験が多い者が33.8%、少ない者が23.1%でした。このほか、自然体験などが多かった者ほど、読書量が多く、逆にゲームをする時間が短いという結果も出ています。
ただ、これはインターネット調査なので、回答者がパソコン利用者に限られるなどの点に留意する必要があります。同機構でも、「全ての成人を代表する回答とは異なる可能性がある」と指摘しています。

それでも調査結果から見ると、子どものころに自然の中で遊んだり、体を使って友達と一緒に遊んだりした経験が多い者ほど、成人後の学歴と年収が高いということは明らかです。これを、どう解釈したらよいのでしょうか。子どものころの自然体験などが生き方や考え方に大きな影響を及ぼして、その結果が学歴や年収などとして現れたという見方ができるでしょう。意地悪な見方をすれば、自然に触れる家族旅行などをしばしばする家庭は、もともと高所得層が多く、高学歴・高収入は育った家庭の経済力の反映である、とも言えるかもしれません。

しかし、成人調査とは別に、学校をとおして実施された青少年調査(小5~高2)の結果を見ると、「意欲・関心」が高いと見られる子どもたちのうち、小学校低学年のころに友達とよく遊んだ子どもは37.8%、あまり遊ばなかった子どもは18.4%で、自然、友達、地域の大人たちなどと触れ合った体験が多い者ほど、「意欲・関心」「自尊感情」「人間関係能力」などが高い、ということが判明しました。将来はともかく、小さいうちからさまざまな体験を積ませることが、子どもたちの成長にプラスになることは、間違いないようです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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