子どもの体力低下 第1回


子どもの体力低下の現状把握


もうすぐ体育の日。学校の運動会を始め、地域コミュニティなどでもスポーツイベントが多くなる時期です。しかし今、子どもの体力低下は深刻な状況を迎えています。親世代に比べ体力低下が著しいといわれている現代の子どもたち。一体、どんな状況になっているのでしょう。

子どもの体力低下 第1回


ケガの件数が増えている!
子どもたちの体力・運動能力の低下は、生活の中でも確実に影響し始めています。1978年の小学生のケガ総件数が約34.5万件だったのに対し、1999年には約45万件に増えています(日本体育・学校健康センター・1999年調査結果より)。この調査によると、すぐに骨折する子どもや顔・頭を怪我する子どもが多くなっていることがわかっています。これは、危険な場面に遭遇してもとっさに手をつくことができず、転んだときに顔や頭をぶつけてしまう、つまり上手な転び方を知らないということを示しています。
次に子どもの基礎体力も見てみましょう。

著しい子どもの体力低下
学校で行われる体力テスト。これは文部科学省が昭和39年(1964)から行っている『体力・運動能力調査』ですが、ここで測られる運動能力は昭和60年(1985)ごろを境に低下の一途を辿っています。10歳・11歳の「50m走」及び「ソフトボール投げ」について、親の世代(33年前の昭和47年(1972)調査)と比較すると、両テスト項目とも親の世代から著しく低下していることがわかります。

図1:親の世代との基礎的運動能力の比較
図1 親の世代との基礎的運動能力の比較
(文部科学省『平成14年度 体力・運動能力調査結果について』より)

山梨大学教育人間科学部助教授の中村和彦先生が1999年11月に山梨県内の小学校児童とその父母・祖父母の方々約6000人を対象に行った調査(図2・3)によると、現代の子どもは親世代のおよそ半分以下の時間しか外で遊ばない、また、遊び場所も山や空き地などの「自然的場所」がほとんどだった親世代と一変し、半数以上の子どもが室内で遊んでいるということがわかりました。室内でのゲーム遊びなどが主流のため、このように外遊びの時間・空間・仲間の減少が、子どもたちの運動不足、やがては体力・運動能力の低下に拍車をかけていると、中村先生は指摘されます。このような、子どもの生活の様子が大きく変わってきていることは、Benesse教育研究開発センターが行った『第1回子ども生活実態基本調査(2004)』(第1章 毎日の生活の様子/第1節 日頃の生活:参照)でも、明らかになっています。

図2:外遊び時間の変化
図2 外遊び時間の変化 (1999年:中村・稲葉調査)

図3:遊び場所の変化
図3 遊び場所の変化 (1999年:中村・稲葉調査)

体力低下に伴い、懸念される支障とは?
では、子どもの体力が低下すると、どんな支障が懸念されるのでしょう。
体力は、人間の発達・成長を支え、創造的な活動をするために必要不可欠なもの。体力・知力・気力の3つが一体となり健康的に活動することができるものです。
しかし、現実的に子どもの体力は低下の一途をたどっており、子どもたちの健康への悪影響、気力の低下などが懸念されています。実際に肥満傾向の子どもの割合が増加していて、高血圧や高脂血症など、将来の生活習慣病につながる恐れがあります。このまま子どもたちの健康への悪影響、気力の低下が続いて成人した場合、ゆくゆくは病気の増加や気力の低下によって社会を支える力が減少し、少子高齢社会となる将来に影響してくることが考えられます。
また、小学校高学年は、一生のうちでもっとも心身が成長する時期のスタートにあたります。骨成分の基礎形成や筋肉や内臓にいたる機能発達の重要な時期にあたるのですが、この時期にどう体力をつけるのかがとても重要になります。

このような子どもの体力低下について、文部科学省でも、「子どもの体力向上キャンペーン」を毎年実施するなど、体づくりへの課題意識をもっているようです。こうした現状から、保護者の方々はもちろん、周囲の大人たちは、子どもが外で遊んだり、スポーツに親しむ機会を意識的に作っていく必要があるでしょう。

次回は、「子どもの体力低下 第2回~親として子どもの体力低下についてできること~」です。ご期待ください。


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