これからの教員に求められる資質

2005/03/03 00:00:00

多くの場合、先生という呼称は「その道の専門家や、自分が教えを受ける指導者への敬称」(弊社国語辞典より)として使われます。しかし、学校の教員が周囲から先生と呼ばれる理由は、その専門性への敬意からだけではありません。

教員は保護者の次に子どもに大きな影響を与える存在
教員は保護者の次に子どもに大きな影響を与える存在です。子どもは生きる上での大切なことの多くを、周囲の大人たちの日常の姿、言動から学びます。子どもの姿はその子を取り巻く大人の姿でもあります。

教員はその人間性や生き方までも子どもの模範となることが期待されるからこそ、大人が対象の他の「先生」とは違う重さがあるのだと思います。

これからの教員には豊かな人間性が求められる
現在、文科省はいつの時代も教員に求められる能力(専門的知識・教養・実践的指導力など)に加え、これからの時代は特に豊かな人間性や高いコミュニケーション能力が求められるとしています。

また、適切な教科指導や生徒指導を行うためには、知識や技能だけではなく態度(どのように子どもに接するか)が重要であるとしています。つまり、教員は指導者である前に一人の人間として子どもたちを受け入れ、子どもたちに受け入れられるような豊かな人間性が求められるということです。

1998年の教育職員免許法の改正により、大学の教員養成カリキュラムは、子どもとのふれあいや体験を重視するよう大幅に改善されました。また、全国の教育委員会は公立学校の教員採用試験で、人物を重視した選考ができるように面接担当者に民間の人事担当者を起用するなど様々な工夫を進めています。学校教育の未来は、いかに多くの優秀で人間的な魅力にあふれた教師を育成し、現場に送り出せるかにかかっているからです。

ベテラン教員の大量退職、新卒教員の大量採用
そのためにはなるべく多くの志望者の中から、教員としての資質や能力、適性をじっくりと厳正に選考することが不可欠なのですが、どうも現実にはそれが難しくなりそうです。

1970年には37万人だった日本の小学校の教員数は、第2次ベビーブームを背景に極端な大量採用が行われ、1980年には47万人に達しました。その後の急激な少子化で教員の新規採用が減少したため、現在の小学校は教員の年齢層比率のバランスがいびつになっています。今後、毎年のようにベテラン教員の大量退職が続き、一方で少人数学級の広がりで必要な教員数が増加するため、新卒教員の大量採用が再び始まります。

不況を理由に企業が長期間、新卒採用をしないケースでは、「世代格差が広がり、組織内コミュニケーションが上手くとれなくなり、重要なノウハウや貴重な経験が受け継がれないまま消失してしまう」という懸念が指摘されますが、どうやらこれは教育現場でも例外ではないようです。

若い先生を育てる取り組みが課題に
東京都は優秀な公立小学校教師の養成を目的に「東京教師養成塾」を開校し、各大学からの推薦を受けた大学4年生を1年間、ベテラン教師の指導で授業の指導計画の立て方から学級運営手法まで、実践的な教育方法を学ばせてきました。その第1期生がこの4月から教壇に立ちます。子どもたちの健全な成長には、これからの教育現場を支える優秀で魅力ある「先生」たちを育てるための積極的な取り組みが重要なポイントになります。

若い先生たちをどのように支援し、地域社会で育てていくのか。保護者にとって新しい課題かもしれません。


※ベネッセ教育総研とベネッセ未来教育センターは05年4月に統合し、新名称「ベネッセ教育研究開発センター」に変わりました。

プロフィール

Benesse教育総研 矢野徹

「進研ゼミ小学講座」は1980年に開講して以来、「チャレンジ」の愛称とともに全国の小学生のやる気をひきだす自宅学習教材として親しまれてきました。現在、小学生の約5人にひとりが会員という、最も利用されている自宅学習教材です。

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