ソロバン【前編】右脳で行う暗算は脳のスポーツ[習い事入門]

インド式算数や脳トレーニングが脚光を浴びることで、昨年はソロバンの検定受験者も久々に上向きました。今こそ日本人が育んできたソロバンが見直されるときかもしれません。

前編では、十数年前に取材した「宮本暗算研究塾Max」を再び訪ね、お話を伺いました。

進化したフラッシュ暗算
「ねがいましては、6円なり8円なりひいては3円なり…… 答えは」
「はい」「はい」「はい」
4歳児から小学低学年たちがもみじのようにかわいらしい手を我先に挙げます。
指された子が答えを言うと全員が大きな声で「ごめい(ご名算)!」。熱気があります。

そして2桁に、さらに3桁になっていきますが、2桁くらいまでの計算では小さい子でも十分ついていきます。3桁の計算ができる幼児もいます。
むしろ驚くべきことは5桁、6桁の計算を小学生がすらすらできることです。
「ねがいましては5,654,358円なり、6,548,349円なり……」
大変な速さで読みあげていくので、私はもう聞き取れません。
それなのにこの段階でも、
「はい」「はい」「はい」
何人もの手が挙がります。幼児もあきらめていません。必死に耳を澄ませ、すばらしい集中力で、頭のなかにあるソロバンに数字を入れ込んでいきます。

そう、生徒は暗算でやっているのです。
「この十数年で変わったのはフラッシュ暗算が認められて、2000年からソロバンの全国大会の種目になったことです。うちの塾には10歳で暗算10段の子もいます」
塾長の宮本裕史さんは実はフラッシュ暗算の創始者でもあるのです。

右脳で行う暗算は脳のスポーツ
ソロバンは、かつては段を取って、簿記などに役立てる職業訓練的な側面が強かったのですが、今は脳のトレーニングや集中力、数の量的理解などに役立つことが注目されています。

宮本さんは早くからソロバンのもつ右脳のトレーニング力に気付いていました。
「筆算は論理的に考える左脳でやっているのですが、ソロバンをやっている子どもたちの暗算は芸術活動をつかさどるといわれる右脳でしているのです」
ソロバンを脳にイメージして、そこに数字の玉入れをしていくのです。だから小さい子どもが本物のソロバンだとそんなに早く指が動かないのに、頭のなかのソロバンはやすやすと動かすことができるのです。ソロバンの暗算は右脳を使っていることが脳の研究でも実証されています。

「上級者になるとうちの生徒は暗算の途中で話しかけても計算を続けられますよ」
この右脳を使った暗算は小さいころから始めたほうがより効果があります。宮本さんによると、幼児期に左脳の訓練ばかりしていると右脳が使いにくくなるのだそうです。右脳をいきいき動かして情操を高めることは幼児期には大切なことなのだと思いました。

ひとつのことに集中できた子はあとから伸びる
「宮本暗算研究塾Max」のすばらしいところは、幼児期から大変な集中力でソロバンに取り組んで、10年以上、ソロバンを続けている生徒が多いことです。壁にはズラリと段位者の木札が並んでいます。
「週3回、ずっと通っている子が多いですね。うちは午後3時から午後9時半まで授業を行っています。残るのは自由。2、3時間やっていく子もたくさんいます」

「うちの塾に限らず、ソロバンをやっている子の中には一芸入試で有名大学に受かる子も毎年たくさんいます。ソロバンに熱心に取り組むと集中力がつくので、毎年、現役で国立大学などに受かる子もいますよ。小さいときから、ずっと生徒を見守っているので、小学生のころはさほど勉強が得意でなかった子が、目標を定めて高校生くらいで伸びる例もたくさん見てきました。なにかに集中して苦労し、上達した経験は、どんな道に進もうとその子を支える大きな力になります」
生徒とともに歩んできた温和な宮本さんの言葉には重みがありました。

プロフィール

杉山由美子

NPO法人 孫育て・ニッポン理事長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。「母親が一人で子育てを担うのではなく、家族、地域、社会で子どもを育てよう」をミッションに、全国にて講演、プロジェクトを行う。東京都北区多世代コミュニティー「いろむすびカフェ」アドバイザー。産後のママをみんなでサポートする「3・3産後サポートプロジェクト」発起人。著書、共著に「ママとパパも喜ぶ いまどきの幸せ孫育て」(家の光出版)。

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