いじめや暴力に「毅然たる指導」を 体罰の定義見直しで文科省が通知

文部科学省は2月5日、いじめなどの問題行動に対応するため、教員による体罰の基準を見直して都道府県教育委員会などに通知しました。これは安倍晋三首相が設置した教育再生会議が第1次報告のなかで、暴力など反社会的な行動をとる子どもに対して「毅然たる指導」を行えるよう関係通知の見直しを提言したことを受けたものです。また、通知はいじめや暴力行為を繰り返す子どもに対して出席停止の措置を適切に活用するよう求めています。

これまで具体的な体罰の定義を説明したものは、約60年前の1948(昭和23)年に当時の法務庁が出した通達しかありませんでした。しかし、この通達は授業中に騒いだ子どもや遅刻してきた子どもを教室の外に出すことなども体罰に当たると定義しており、教育再生会議の議論では「教員が委縮して指導できない」などの批判が出されていました。

これに対して文科省の通知は、教員による体罰はいかなる場合でも行ってはならないと明記したうえで、「放課後等に教室に残留させる(いわゆる居残り)」「授業中、教室内に起立させる」「学習課題や清掃活動を課す」「学校当番を多く割り当てる」「立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる」ことなどは体罰に当たらないとしたほか、教員自身が身を守ったり、ほかの子どもや教員を守るために力を行使したりすることも体罰に該当しないとしています。

注目されるのは、通知が生徒指導の充実のために「いじめや暴力行為等に関するきまりや対応の基準を明確化したものを保護者や地域住民等に公表し、理解と協力を得るよう努め、全教職員がこれに基づき一致協力し、一貫した指導を粘り強く行う」としている点です。また、通知は、いじめや暴力を繰り返す子どもに対して、ほかの子どもの学習環境を守るために出席停止の措置を「ためらわずに検討する」ことを求めています。これは、ささいな問題行動も見逃さずに厳正に対応する米国の「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)」という生徒指導の理念が取り入れられていると見てよいでしょう。

ただ、いじめに加担していたとされる中学生が教員に注意されたあとに自殺した事件に見られるように、現在のいじめは加害者を強く指導したり、排除したりするだけで解決するような単純なものでないことも事実です。それどころか、加害者と被害者の立場が容易に入れ替わることも、現在のいじめの大きな特徴として挙げられています。仮にいじめに加担した子どもを厳しく指導したとしても、その子ども自身が以前はいじめの被害者だったということもあり得るのです。

現実に起こっているいじめや暴力行為をやめさせるには、厳しい生徒指導が必要です。しかし、それだけではいじめ問題は決して解決しません。たとえば、いじめが減らない原因は、多くの子どもがいじめを傍観しているからだと指摘する意見もあります。傍観者に「毅然たる指導」は実際問題として通用しません。

文科省の通知は、毅然とした指導の一方で、カウンセリングや教育相談の充実を求めていますが、厳しい指導はあくまで生徒指導の一部分であり、そのほかのさまざまな取り組みと相まって、初めていじめを減らすことができるということを教員も保護者も見落としてはならないでしょう。

伊吹文科相記者会見(通知の説明)

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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