PTA活動の本音と未来【前編】

今回は、教育発見隊のメンバーの皆さまにPTAに対する様々な思いや、姿勢、そして問題意識を聞いています(有効回答数:620名)。ご回答いただいた皆さま、本当にありがとうございます。
PTAの活動は、選ばれた(選ばれてしまった)PTAの役員がすべての実務や、お世話係をすることではありません。学校や子どもたちを取り巻く環境変化の激しいなかで、今、PTAの在り方が問われています。

■PTAはアメリカから生まれた!
■そもそもPTAの目的は何なのでしょう?
■PTAの活動が抱える課題とは?
■PTAが果たすべき活動5観点



■PTAはアメリカから生まれた!

PTAの歴史は、児童愛護と教育環境の整備をめざしたアメリカの母親運動からスタートしました。
あまり知られていないPTAの歴史を少し紐解きましょう。
1897年、PTAの創始者であるバーニー夫人は、周囲の協力者を得てワシントンで全米母親大会を開き、「全国母親協議会」を発足させました。協議会は、子どもの全人格を健やかに育てるには母親だけの力では限界があることを反省し、父親と教師に運動への参加を呼びかけました。その後、各地に地区組織が作られ、1924年には「父母と教師の全国協議会」が結成され、これが現在のPTAの母体となりました。現在、PTA活動の盛んな国としては、アメリカ合衆国をはじめ、日本、カナダ、フィリピン等を挙げることができます。

そして、わが国にPTAが誕生したのは、意外に古く、太平洋戦争直後になります。
1946(昭和21)年、日本の教育の民主的改革を進めるために来日した米国教育使節団は、その報告書の中でアメリカの成人教育に大きな役割を果たしているPTA活動について触れています。
その後、当時の文部省もPTA結成を呼びかけることになり、都道府県社会教育主管課長会議を開いてPTAの趣旨説明などを実施し、1948年にかけて全国的にPTAの結成が進みました。
その後、あっという間に、1950年4月までの時点で、全国の小・中・高の約98%の学校にPTAが生まれています。さらに1952年には「日本PTA全国協議会」と高等学校が抱える「全国高等学校PTA協議会」の発足を迎えています。

■そもそもPTAの目的は何なのでしょう?

「PTA」は何の略かはご存じですか?
ご存知のとおり「Parent-Teacher Association」です。日本ではこれを、「父母と先生の会」と訳しています。この名称の示すとおり、PTAは、「親と教師で構成され、両者が対等の立場で学習し、自己を高めていく団体」です。 
日本の単位PTA(学校単位のPTA組織)は、戦後の混乱と経済的に乏しい時代に誕生したという特別の事情から、PTAの役割は公教育費を補うための校舎や校庭の整備、学校施設整備、教材教具の購入など、学校後援会的な色彩が強くなりました。実は、このような背景が、戦後の学校教育を復興させる大きな力となった反面、PTAが学校の後援団体であるかのような誤った印象を強く持っている人も多いのかもしれません。

PTAの本来の位置づけは、保護者たちの自立的な組織によって運営される団体であるとされます。いってみれば、国や地方自治体から指導や助言を受けることはあっても、命令を受けることはないということです。もちろん、学校の付属機関ということではなく、保護者による独自性を持つ機関であるのです。
現実の課題として、今の子どもたちに自己教育力を身につけさせることは大切なことです。また、学校週5日制の実施に伴い、子どもたちが家庭や地域で過ごす時間が長くなるとともに、家庭教育の在り方や地域の教育の在り方が重要度を増しています。学校・家庭・地域社会の懸け橋であり、学校や行政などのルールに束縛されないPTAの役割は、とても重要になってきています。

■PTAの活動が抱える課題とは?

今回は、教育発見隊のみなさんに「実際にPTA役員を経験してどう思いましたか? あなたのお気持ちに一番近いものを選んでください」とお尋ねしています。【図1参照】
そこでは、「できることならやりたくない」「絶対にやりたくない」の回答を合わせると、回答いただいた方の約37%にも上りました。「またぜひやってみたい」「推薦されたらやってもいい」と肯定的にお答えいただいた方は約31%。やや、否定的な反応が多いようです。

【図1】
実際にPTA役員を経験してどう思いましたか?

さらに、「これからのPTAはどうあるべきか」をお尋ねしています。
自由にご回答いただいたなかに、PTAが存在する意味を測りかねているというご意見もいくつか寄せられました。

  • PTAの目的が不明です。学校で教育してもらえるのだから、細かい口出しは不要ではないか。
  • 役に立っているのか、よくわからない。現在、子どもの保育園に「父母会」というものがあるが、ほとんど意味がない。会費やバザーの収益金は、子どものため・・・というよりも、父母会やその周辺の人達の集まりに使われているようだし、父母会の役割の一つで、『保護者間の情報共有』などと言うが、そういったことは行われない。一部の人達だけで情報が交換され、保護者の間で力関係が生まれているように思う。
  • PTAの運営に関して、正直者、誠実な人、お人よしばかりが苦労する組織になってはいないか。


活動の段階で発生する、物理的な負荷や、フルタイムで働いているなど忙しいなかでの活動の難しさ、役員以外の方々の協力の乏しさ・・・などいくつかの声もいただきました。

  • 共働きが多く、しかも自分の時間を大切にする人が増えているなかでの束縛が多く、仕事は普通の会社の仕事となんら変わらないPTAの仕事は、ボランティアではもう誰もやらないと思う。
  • 子どものためを考えたPTAであるべきだと思う。親向けのお楽しみ行事(成人教育の社会見学でなぜ豪華なバイキングが必要なのでしょうか?)や球技大会・コーラスは必要ないと思うし、子どもを留守番させての夜の会合はいろいろな意味で負担が大きいです。子どもの安全を守るはずが子どもを危険にさらしてPTA活動だなんて本末転倒もいいところです。少子化で子どももPTAも少なくなっています。身の丈にあった活動に縮小し、本当に必要な時はPTA会員全員で取り組むようでないといけないのでないでしょうか?
  • 一部の人だけが熱心に取り組んでいて無関心な人との差が激しいと思う。役員のなかにも人任せで無責任な人がいる。子どもが学校に通っているからにはもっと真剣にいろいろなことを考え、取り組むべきだと思う。役員だけが大変な思いをするのではなくもっと責任を分担、軽減して多くの人が関われるといい。
  • 近年、ますます仕事を持ったPTA会員が増えてきた。実際、例年役員決めの際に「仕事をしているのでできません」という声が非常に多い。仕方なく引き受けてもほとんど活動に参加できなかったり、仕事の割り振りが難しい。
  • 各学校単位のPTAの負担が大きすぎるにもかかわらず、区や市のPTA協議会,連合会からは会議や講演会講習会への参加割り当てが強制される。子どもを抱えての活動なのに夜の会合などもある。学級の委員でさえなり手がないのに役員などになってくれる方はいるはずもない。また、結局やってくださるメンバーは決まっている。PTAの役員をやるために専業主婦をしているのではない。学校に子どもを預けている保護者すべてが平等に仕事を分担し、学校、PTA活動に関わっていく体制を作っていかなければ。

■PTAが果たすべき活動5観点

ここで、もう少しPTAの本来の目的を考えてみようと思います。

PTAは、一つの学校に通う子どもの保護者と教師から構成されるために、一般的に同じ学区や通学圏内に住んでいることが多いため、その地域に深い関わりを持ち、地域の教育環境を改善したり充実したりするには活動しやすいという特徴を持っています。
しかし社会構造の変化に伴い、子どもたちを取り巻く環境もPTAの発足当時と比べて大きく変化しています。情報の高度化、多量化、少子化等の面で大きく変化し、一方で家庭や人と人の結びつきの強かった地域社会の教育力の低下が指摘されているのは、マスコミ報道や雑誌などでも目にするのではないでしょうか。
子どもたちの安全や、地域で育むという観点からも、学校と家庭、地域社会を結ぶ懸け橋として、PTA活動への期待はますます高いものにならざるを得ないと思われます。
生涯学習審議会答申『地域における生涯学習機会の充実方策について』(1996年4月)では、「(中略)学校側からその現状を知らせ、課題を理解してもらい、その上で(地域社会の)協力を求めることが必要である。このためには、PTA活動の一層の活性化が不可欠である」と今から9年前にすでに指摘しています。

では、これからのPTAの果たすべき活動とは何なのでしょう。どのような活動が求められているのでしょう。

基本的なポイントは5つあるといわれます。

(1)保護者と教師の協力体制をつくる
つい、保護者の側からは教育の問題やPTA活動について学校に依存する傾向があります。また、学校側や先生方にも、多少閉鎖的な慣行や雰囲気があって、学校の抱える課題や現状を地域に知らせることが少ない……などの不安感を保護者が持ってきたことも事実です。しかし保護者は家庭教育の責任者です。教師は学校教育の専門家。相互に研鑽する関係性の構築が初めの一歩になります。

(2)学校教育の理解による「共育」をめざす
子どもたちが通う学校の教育方針、重点目標、具体的方法等を十分理解することによって、それぞれの家庭において学校教育に協力することができ、家庭教育の効果を上げること、つまり共に育む「共育」ができます。授業参観や懇談会に積極的に参加し、学級PTA、学年PTA、地域PTAの活動に取り組むことで、本来の学校教育の理解を深めることができると思います。

(3)家庭教育の危機を救うための情報交換・提供の場
ベネッセの各種調査でも明らかですが、最近の保護者は家庭教育に自信を失い、また子どもに対する成長実感も少なくなってきている傾向が見られます。社会環境の急激な変化にどう対応したらよいか迷っているお母さんや、家庭の行うべきしつけを学校に押しつけたり、過保護・過干渉に流されたりする現象などを的確にとらえ、家庭教育にはどのような手立てが必要なのかを考える機会が大切です。そのための家庭教育に関する研修会、講演会、自主研修等を行うこと、そして参加することがとても大切になってきます。

(4)校外の生活指導と教育環境の改善をめざす
校外における児童生徒の生活の安全を確保するため、不良出版物への対策、遊び場の確保などの外部環境への気配り、地域住民同士の明るい人間関係の醸成等の役割が期待されています。さらに、学校週5日制のなかで、地域の教育力を充実させるための地域に根ざした多様な地域活動にPTAが積極的に関わることも大切になっています。

(5)会員相互の学習機会を設ける
これはなかなか難易度の高い取り組みかもしれません。
しかし、親と教師が「子どもの幸せを願い、子どもの幸せを図る」ためにも、情報交換の機会や講演などの研修機会など、今の教育課題をとらえて、PTAは会員に対して教育的素材と学習の機会を豊富に用意することが大切になってきます。

今回【前編】は、PTAに求められる活動について概観してきました。お寄せいただいた声のなかには、PTAが「鬼っ子」のような存在になっている一面もあるように感じました。しかし、これだけ子どもたちを巡る環境が変化していくなかで、PTAの役割や機能を考えていく必要があるように思います。次回【後編】では、教育発見隊アンケートにお寄せいただいた回答から、どのような取組みや考え方で、PTAと向き合うべきかを探ってみたいと思います。ぜひ、ご期待ください。

【参考文献】  

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