子連れで電車に乗るのが怖い[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
電車に乗っていて、それまで静かだった3歳の息子がとつぜん歌を歌い出しました。すると、すかさず近くにいた若い男性に「うるさい!」と怒鳴られました。私は平謝りに謝って、次の駅で降りました。
そこから目的地までタクシーで行きましたが、タクシーの中で「出かける前に『電車の中では静かにしようね』という約束もしたのに…」「そんなに大声でもないのに、なんで?」「言い返せばよかったのか?」など、いろいろ考えると悔しいやら情けないやらで涙が止まりませんでした。
私はあのときどうすればよかったのでしょうか?その後、子連れで電車に乗るのが怖くなってしまいました。でも、毎回タクシーというのは経済的に無理です。これからどうすればいいのでしょうか?
たまごっち さん(年少男子)

 

【親野先生のアドバイス】
拝読しました。
それはつらい経験をしましたね。
なにも怒鳴るほどのことではないですよね。

3歳の息子さんは電車に乗って楽しくなって、歌い出してしまったのでしょう。
すごく自然なことであり、当たり前のことです。
3歳の子どもが電車に乗って、楽しくなって歌を歌って何が悪いんでしょう?
微笑ましいじゃないですか。
もちろん、がなりたてるような大声でというなら話は別ですが、文面から推測する限りそうではないようです。

いくら事前に言い聞かせたり約束したりしても、こういうことはよくあることです。
電車の中だけでなく、どこでも起こりえることです。
だって、子どもなんですから。
こんなとき「しつけができてない」などと言われても、親としては困りますよね。
どんな親でも子どもを完全にコントロールすることなど不可能ですから。

でも、私は、たまごっちさんが言い返さずに謝ったのはよかったと思います。
というのも、その男性がどんな人かわからないからです。
とりあえずわが子を守るのは最優先ですし、悔しさに耐えてそれを実行したのは親として非常に勇気ある行動だったと思います。
たまごっちさんは親として立派な行動をしたのです!

もちろん、言い返せばよかったと思う気持ちもよくわかります。
でも、こういう人に言い返したり、子育ての大変さや今の事情を話したりしても、たぶんムダでしょう。
それどころか、さらに激高する可能性もあります。
繰り返しますが、相手がどんな人で、今どんな精神状態なのかなど、まったくわからないのですから、たまごっちさんの行動は正しかったのです。

とはいえ、子連れで電車に乗るのが怖くなってしまったというのも、またつらいことですね。
一つのつらい経験が心の傷になって、また同じことが起きるのではないかと考えてしまっているわけで、一種のトラウマといえる状態かもしれません。
本当に、いきなり人を怒鳴るなんてとんでもない罪深いことです。

でも、くだんの男性のような人はそれほど多くはありません。
子連れの人を温かく見守ってくれる人もたくさんいます。
子連れで苦労している親や周りに気を遣って小さくなっている親を見て、「たいへんだなあ。何か役に立ちたい」と思っている人もたくさんいるのです。
ですから、「子連れで電車」をあきらめないでください。

たまごっちさんが男性に怒鳴られたときも、近くにいた人は男性の行為の方を不愉快に思ったと思いますよ。

それと、心の傷を癒す必要もありますね。
夫、両親、家族、友達、幼稚園・保育園の先生、などに愚痴を言いまくって聞いてもらってください。
怒鳴られたときの状況や気持ちを文章や絵にかくのもいいでしょう。

臨床心理士やカウンセラーに聞いてもらうのもいいですね。
早めに心療内科、精神科、メンタルクリニックなどで看てもらった方がいいかもしれません。

ところで、私もよく電車に乗りますが、たしかに子連れで電車移動は大変ですよね。
去年電車の中で見た光景ですが、あるママさんがベビーカーに一人乗せて、もう一人の子と手をつないで、肩には荷物をいくつかさげていました。

電車が地下に入ったとたんに、手をつないでいた子が泣き出しました。
急に暗くなったのと電車の音が大きくなったのに驚いたのでしょう。
ママさんが荷物を下ろして抱き上げても、鳴き声はますます大きくなるばかりでした。

おまけに、電車が駅で止まったときに、下ろしてあった荷物がばらけて散らばり、中身が出てしまったのもありました。
大量に同じ物が出たので、内職で組み立てる部品のように思いました。
相変わらず泣き叫ぶ子どもを抱きかかえたまま、「すみません。すみません」と言いながら、もう一方の手で荷物を集めるママさんの姿…。

私はちょっと遠いところに立っていたのですが、ママさんのところに行って、荷物を集めるのを手伝いました。
ほかにも7,8人の人が手伝いました。
いち早く床に這いつくばって集め始めた中年男性もいました。
ことが起きてすぐに動き始めた人もいたので、私は「みんなけっこう気にしながら見ていたんだな」と思ってうれしくなりました。

でも、近くにいたのに何もしない人もいました。
こういうときは、さっと動ける人でありたいものだと思いました。
もう一つそのとき思ったのは、「そもそも座っている誰かが席を譲ってあげていれば、これほど大変な状況にはならなかったのに」ということです。

どんなに立派な地位にいても、どんなに学歴が高くても、どんなに仕事ができても、どんなにおしゃれをしていても、目の前で困っている人も助けられないようでは、何の価値もありません。

少し話がそれましたが、これからも「子連れで電車」をあきらめないでください。
そして、心の傷は早めに癒すようにしてください。

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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