悩んでいる子どもが前向きになる!「モノ」を使ったコーチング[やる気を引き出すコーチング]

コーチングのプロ、石川尚子さんが子育てに役立つコーチング方法を伝授いたします。

 春となり、また、受験の報告を聴かせてもらう時期がきました。嬉しい報告もあれば、残念ながら、そうではない報告もあります。先日、高校を卒業したばかりのMさんの報告は、どうやら後者のほうでした。
 Mさんは、第1志望、第2志望からは合格を得られず、唯一合格した第3志望の大学に、仕方なく入学することを決めたようです。「もう人生、終わりましたよ」とかなり落ち込んでいました。

「モノ」を使って質問してみる

 しばらく、「これからどうしたら・・・」と悩んでいるMさんの話を聴いていたのですが、ふと思い立って、テーブルの上に置いてあったキャンディをつまんで、こんな質問をしてみました。

「Mさん、ここに、3つの種類のキャンディがあるんだけど、レモン、ストロベリー、オレンジの3種類。どれが好き?どれから食べたい?」
「え?うーん、今は、レモンって気分かな」
「じゃあ、ここに、第一志望A大学に入ったMさんがいるとするね」
レモン味のキャンディを1つ、Mさんの目の前におきました。
「次は、どれがいい?」
「えー?!第2志望ってことですか?やっぱり、ストロベリーかな?」
「これは、第2志望B大学に入ったMさんね」
 レモン味の隣に、ストロベリー味のキャンディを置きました。
「じゃあ、今日のところは、これがC大学に入ったMさんということにするね」
オレンジ味のキャンディも並べて置きました。
「今、Mさんは、ここにいるとして、それぞれ、4年後はどうなっているのかな?何が違うのかな?」
 正直、あまり深い意図はなく、少し俯瞰して人生を見てもらえたら、という気持ちで、キャンディを使ってみました。

 Mさんは、じーっと、キャンディを眺めていましたが、こんなことを言いました。
「将来、やりたいことは決まっているので、どれを選んでも私は、多分、そこに向かっていると思います。高校生の私は、レモンが美味しいかもって思ったかもしれないけど、実際に食べて見たら、オレンジも美味しいかもしれませんよね。
 キャンディには変わりないですよね。今回は、私の努力が足りなかったので、ここに行くことになったけど、レモンでもオレンジでも、自分ががんばるかどうかですよね。4年後、やっぱりレモンにしとけばよかったって思わないように、今度はもっとがんばればいいんですよね!」

 私が想定していた以上の言葉に、深い感動を覚えました。なぐさめたり、励ましたりしなくても、ちょっと客観的に考える機会を作れば、自分で省察し、前を向ける力をMさんは持っていました。

自分を外側から見てみる効果

 以前、訪問した高校の相談室には、手のひらサイズのかわいいぬいぐるみがたくさん置かれていました。相談員の先生が、「これ、便利なんですよ!」と説明してくださいました。

「女子は、特に、人間関係のごたごたで悩んでいる子が多いのですが、話を聴いているだけでは、私も頭の整理ができなくなるので、このぬいぐるみを使って説明してもらうんです。
 『これがAさんね、で、その仲良しがBさんね、そこに、Cさんがやってきて・・・』と、ぬいぐるみに名前をつけて、動かしながら説明してもらうと、本人も何かに気づくようです。『そっか!Bさん本人はどう思っているのか聞いてみないとわからないですよね。勝手に嫌われてるって思っているだけかもしれないですよね』って。けっこう使えるんですよ!これ」

 視野が狭くなっている時は、なかなか悩みから抜け出せないものです。そんな子どもに対して、「もっと大きな視点で考えなさい」と言うだけでは、ピンとこないこともあります。反発も湧きます。何かモノを使って、外側から考える環境を作ることは非常に効果的だと、私もあらためて感じました。大人も子どもも、深刻に考え過ぎず、客観的に頭の整理、気持ちの整理をしてみるのはいかがでしょうか。

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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