オランダの子どもたちはなぜやる気に満ちているのか?[やる気を引き出すコーチング]

今年もまた、オランダの教育現場視察に行ってきました。
子どもの幸福度が高いオランダの教育のベースには、コーチングの手法や考え方が根付いています。その点が、私には非常に興味深く、ここ数年、現地に出向いて研究しています。

オランダでは、「学校の数だけ教育がある」と言われるほど、学校によって多様な教育手法が採用されています。校区はなく、子どもと保護者が、子どもに合いそうな教育を行っている学校を選んで入学します。「自分が行きたい学校は自分で選ぶ」という主体性を尊重する制度からして、すでにコーチングだと感じます。

印象的なのは、子どもがイキイキと能動的に学んでいる姿です。居眠りをしたり、ぼんやりしているような子どもはいません。目の前の課題に嬉々として取り組んでいます。なぜ、それが可能なのでしょうか?

やる気の第一歩は「自ら選ぶこと」

今回、視察した小学校の一つは、1時間目:国語、2時間目:算数といった時間割がありません。あるのは、テーマと様々な課題。今回は、「西ヨーロッパ」というテーマが掲示されていました。あわせて、西ヨーロッパについて詳しく学ぶための課題がいくつか提示されていて、その中から子どもたちが取り組みたい課題を自分で選択します。

「西ヨーロッパの建築物を作る」という課題に取り組んでいる子どもは、段ボール箱を使って工作に取り組んでいます。その隣では、「西ヨーロッパの音楽を作る」という課題に取り組んでいる子どもが、パソコンに向かって何かを検索していますし、そのそばでは、ラップのような歌詞をノートに書きこんでいる子どももいます。自分たちで作詞もしているとのことでした。

基本的に、自分が「やりたい」ことに取り組んでいるので、やる気に満ちています。「やらされ感」はありません。教室内で、先生が講義をする時間はあまりなく、まるで、自習時間のような光景です。
先生は、時々、各テーブルを回りながら質問をします。「これが西ヨーロッパの建物だとわかる特徴は何?」などの質問を投げかけることで、子どもが自ずと「特徴って何だろう?もっと調べてみよう!」と学習意欲を湧かせます。やりたいことを「自ら選ぶこと」はやる気の源泉だなとあらためて感じます。

質問によるコミュニケーション

こんな話をすると、「それは、オランダだからできることであって、今の日本の教育制度では無理でしょう」と言われそうですが、最初から、あきらめないでいただきたいのです。たとえ、時間割や教科書、宿題などが決まっていたとしても、「自ら選んで学ぶ」工夫をする余地はあります。その一つが、質問によるコミュニケーションです。

「この課題のうち、どれから取り組む?」、「今日、学んだことの中で一番印象に残ったことは?」、「次はどんなことをもっと知りたい?」などの質問を投げかけてみるだけでも効果があります。一方的に教わることに慣れている子どもたちからは、最初は、なかなか答えが返ってこないかもしれませんが、慣れていないだけです。試してみる価値は大いにあります。

「できる子」として関わるあり方

実は、教育制度や手法のユニークさよりも、私がオランダの教育に感銘を受けていることは、子どもと関わる大人のあり方です。「この子は自分で考えられる。自分で学習できる」と信じている姿勢が随所にうかがえます。子どもの選択を尊重することもそうですし、質問をして答えを待つ姿勢もそうです。

「教えてやらないとできない」と思うと、つい、子どもをコントロールしようとしてしまいます。口や手を出してしまいます。それが、子どもからやる気や自発性を奪います。

自発的な学びを信じて見守ろうとするオランダの先生や保護者の皆さんの姿勢に、日本でもできることがまだまだあるのではないかと感じます。コーチングの手法のみならず、コーチングの哲学をもっと日本でも伝えていけたらと思います。

(筆者:石川尚子)

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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