子どものやる気スイッチは大人の「前提」しだい[やる気を引き出すコーチング]

今年度も、各々のゴールに向かう受験生とコーチングをする機会をいただきました。おかげさまで、最終的に、嬉しい報告ばかりでしたが、話を聴いていて、悲しい気持ちになることもありました。それは、コーチングをしてきたお子さんに対してではなく、この子の周囲にいる大人の接し方に対してです。

子どもを傷つける「できない子」が前提の接し方

例えば、「志望校に合格しました!」と報告に行ったら、担任の先生に、「お前が?本当に?親のコネでも使ったのか?」と言われたという話です。たとえ、冗談だとしても、成果の報告に来た生徒に最初にかける言葉ではないように思います。

「別にいいんです。いつものことなんで」と笑って話していますが、「私、ダメダメだと思われてたんで」と言う言葉の裏に、この子の心の痛みを感じずにはいられません。子どもをどんな存在として見ているのかを見直してみるだけで、子どものやる気はもっと引き出されるのにと思います。

コーチ仲間のYさんが、受験生だった息子さんから、ガツン!と言われた言葉をご紹介します。
「お母さん、やっぱり、○○高校を受けようと思うんだけど」
「え~?!あそこは、あなたにはちょっと無理なんじゃない?」
「お母さんってさぁ、僕が失敗することを前提に、いつも考えてるよね」

「『相手の可能性を信じることが大切』などと人には言いながら、自分の子どものことはぜんぜん信じていなかったんだな~と、思いっきり気づかされましたよ」とYさんは苦笑いしていました。

悪気はないけれど、Yさんのように、「あなたはできない子」という前提で接していることはないでしょうか。

「うわぁ~、今日は何も言ってないのに、自分から宿題してる~!明日、台風が来たらどうしょう?」
「何か買ってほしいものとかあるの?めずらしく、そうじなんかしちゃって」などの言葉です。こちらに、「できない子」、「言わないとやらない子」という前提があると、つい、こういう言葉が出てしまいます。

下心などなく、「今日はやってみよう!」という気持ちになったのに、そんな心ない言葉で、たちまち、出鼻はくじかれます。

「できる子」という前提で向き合う

この春、第一志望の大学に合格した高校生のAさんとは、月に1回1時間、半年ほど、電話でコーチングをさせてもらいました。

基本的に私は、「先月は、どんなふうに過ごしていたの?今月はどうするの?」と質問して、話を聴いているだけだったのですが、Aさんは見事に目標を達成しました。最後のコーチングの時に、彼女はこう言ってくれました。

「国公立はこことここを受けて、私立はこことここを受けるっていう話を私がした時に、石川先生が、『それ、全部うかったらどうする?』って聞いてくれて、すごく嬉しかったんです。全部落ちたらどうしよう?って考えて不安になってたし、全部うかるなんて考えたこともなくて。でも、全部うかったらって言われた時に、それ!すごいかも!って思えて、またやる気になれました。私が全部うかるって思ってくれて、ありがとうございました」。

Aさんの言葉を聴きながら、思わず、涙がにじみました。最初から、「失敗したい」と思っている子どもはいないし、もともとやる気がない子どもなんていないのです。「できるよ」、「あなたには力があるんだよ」という前提で接した時に、子どものやる気スイッチは自ずと入るのです。

子どもは、大人が自分のことをどう思っているのか、こちらの前提を見抜く力にものすごく長けていると感じます。大人はどうでしょうか。大人も、子どもの本質にしっかり目を向けていきたいものです。子どもは本来、「もっと成長したい」、「もっとできるようになりたい」と思っている存在なのです。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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