子どもが「自分で決める」効果 [やる気を引き出すコーチング]

日常生活において、子どもが「自分で決めている」場面がどのくらいあるでしょうか?
朝、起きたら、「はい! 着替えて! 早くごはん食べて! 出かける準備して!」。学校へ行ったら、時間割が既にあって、「はい! 教科書の○ページを開いて! ここから読んで! これを解いてみて!」。
大半のことが、子どもの意思とは関係なく、進んでいたりしないでしょうか。そんな環境の中で、「もっとやる気を出しなさい!」と言われて、果たして、やる気は湧いてくるものなのでしょうか。今回は、「自分で決める」ことによって変化したお子さんの事例をご紹介しましょう。

子ども自身に「選択」を促す

T君は、中学校に入ってから、しだいに、勉強が楽しくなくなり、学校にも行ったり行かなかったりを繰り返すようになりました。「勉強しなさい」と言っても、「やりたくない」と言うばかり。「学校に行きなさい」と言えば、「行きたくない」。何を言っても、そんな調子なので、「~しなさい」と言うお母さんのほうがすっかりまいってしまいました。

それでも、なんらかの形で、勉強はしたほうがいいと思ったお母さんは、T君に塾をすすめました。初めは、しぶしぶ行った塾ですが、この塾がなかなかユニークな塾だったのです。先生は、すぐには教えません。「T君、どうしたい?」と、話を聴くところからスタートするのです。

「勉強はわからないから、やりたくない」。
最初はそう言っていたT君でしたが、塾に置いてある歴史の漫画は気に入ったようです。
「T君、今日はどうする?」と、先生は毎回、聴いてくれます。

「漫画を読む」
「そうか、その次は?」
「その次は……」
と、自分で、何かしら今日やることを決めるようになりました。そのうち、「今日は、歴史のテストを受けてみたい」と言い始めました。漫画で勉強したので、力を試したくなったのでしょう。

ある時は、「先生、中学校の数学は難し過ぎるから、小学校の内容からやってもいい?」と言ってきました。先生は、まったく反対することなく、T君がやりたいという勉強に付き合ってくれました。しだいに、「勉強しなさい」と言わなくても、自分から勉強するようになり、中学校にも通うようになったとのことです。

自分で決めたことは「やろう」と思える

この変化に、お母さんはとてもびっくりしたようですが、今では、塾の先生をまねて、何でもT君の気持ちを聴いてみるようにしているそうです。

「そろそろ7時だけど、次はどうする?」
「今日はどこに行きたい?」
「ゲームはいつまでやる?」

自分で決めたことが、いつも全部守れるわけではありませんが、少なくとも、「~しなさい」と言っていた時よりは、早く取り掛かれるようになり、お母さん自身もずいぶん楽になったそうです。

もちろん、学校の宿題など、自分では選んだり、決めたりできないこともありますが、それでも、「今日は、何からやるの?」「いつまでに終わらせる予定?」と問いかけることで、自分の行動を自分で決めることはできます。「やりなさい」と言う代わりに、問いかけて、T君が自分で決めるよう促しています。

そんなT君のお母さんの言葉がとても印象的でした。
「不思議なんですよね。宿題とか片付けとか、本人がやっていることは前とそんなに違わないと思うんですけど、こっちから『やりなさい』って言ったことより、自分で『こうする』って言ったことはやるんですよね。結局、周りがどんなにあれこれ言っても、自分で『やる』と決めたことしか、人はやろうとしないってことなんですよね」。

日頃から、子ども自身が「どうしたいのか?」を選んで決める機会を増やしていきたいものだな、と思います。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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