いい子症候群~期待に応えすぎる子どもたち【前編】

一口に「いい子」といっても、いろいろなタイプがあります。自分の気持ちを正直に出し、心身ともに健やかに成長している子どもを、一般的な「よい子」だとすれば、自分の気持ちを抑え込み、保護者や大人たちの期待に過剰に応える「いい子」もいます。そこで、明治大学文学部教授で教育カウンセラーでもある諸富祥彦先生に、期待に応えすぎる、いわゆる「いい子症候群」の子どもたちについて教えていただきます。



期待に応えすぎる「いい子」とは?

多くの子どもたちは、自分をほめてもらいたくて、保護者の期待に応えようとがんばります。でも期待に応えすぎる「いい子」は、ほめられることより保護者が不機嫌になることを恐れ、どうしたら保護者が喜ぶのかを常に考えて、その期待に過剰に応えようとします。そこが、一般的な「よい子」との大きな違いです。

彼らは、決して保護者のいいなりになっているのでも、「いい子」を演じているのでもありません。「いい子」でいることに過剰に適応してしまい、感情がマヒしてしまっているのです。保護者の機嫌を損ねないよう、常に顔色をうかがいながら、期待されている「答え」を先取りして行動しているうちに、自分の意思で行動しているのか気持ちを抑えて行動しているのかわからなくなってしまっているのです。自分の考えがあるけれど主張できないのではなく、自分に考えや気持ちが存在すること自体に気付けないでいる。そして、「いい子」を演じているという自覚のないまま、この状況が当たり前だと思い込んでしまっている、そこがこの症状の怖いところです。



「いい子」は大人になっても「いい子」!?

期待に応えすぎる「いい子」が生まれる原因は、保護者との関係にあります。「いい子」は第1子に多いのですが、初めての子育ては不安も多くまた子どもへの期待も高いため、保護者の期待に応えられる「いい子」だと、子育てが間違っていないという安心感と、期待に応えてくれる満足感が得られるからでしょう。また日本では、昔から泣いて気持ちを表すより、がまんする子を一般的な「よい子」とする風潮があります。このような日本独自の文化も、「いい子」を生む原因の一つだと考えられます。

「いい子」がそのまま大人になると、さまざまな問題を抱える可能性があります。たとえば、ある女性は友人と食事に行った時、自分の意思でメニューを選べず困ったそうです。これまで、保護者の期待に応える選択しかしてこなかったため、自分の意思で選べなくなっていたのです。ほかにも、涙を流しているけれど自分が悲しい気持を抱いていることがわからないと訴えるかたもいました。常に自分の感情を持つことを禁じられてきたため、自分が悲しくなっていることがわからなかったそうです。

がまんをしたり、自分の意思を抑えたりすることは、多少は必要だと思いますが、行き過ぎた抑制は子どもを生きづらくさせてしまいます。我が子を期待に応えすぎる「いい子」にしないよう、十分な配慮をしていただけたらと思います。


プロフィール


諸富祥彦

明治大学文学部教授。教育カウンセラー。教育学博士。臨床心理士。全国で保護者向けの講演を実施。『ひとりっ子の育て方』『男の子の育て方』『女の子の育て方』 (WAVE出版)ほか、教育・心理関係の著書が100冊を超える。

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