【中学入試】「対話型学習」で思考力・表現力を養う

思考力入試、適性検査型入試などと呼ばれる新しい入試が、近年増え続けています。前回に続き、今回は、これらの入試で求められている思考力や表現力をつけるのに有効な対話型学習について、詳しくお話しします。

◆まずは受け入れ、別の視点を示して深掘りを促す

前回お話ししたとおり、思考力・表現力を問う問題の多くは、正解がひとつではありません。このような問題に対して、まず大切なのは「間違えてはいけない」と思わせないこと。問題を自分なりの視点でとらえ、恐れず考えを表現できるようになるためには、対話型学習が有効です。ぜひ、過去の入試問題や時事問題を材料に、ぜひご家庭で話し合ってみてください。

その際、大切なのは、「否定しない」ということです。お子さまの考えが間違っているとか無理があると感じても、まずはよく聞いて受け止めてあげられるかが重要なのです。なぜそんなふうに考えたか、お子さまの考え方の背景を聞いたうえで「でも、こういう時はどうするの?」「こんなふうに考える人もいるかもしれないよ」などと、別の視点を示してあげてください。

たとえば人口減少に悩む町について、写真やグラフなどいくつか資料が提示され、「もしあなたがこの町の町長だとしたら、どんなことをしたいと思いますか」という問題があったとします。特産品や観光スポットの開発、企業や公共施設の誘致など、様々な方法が考えられますね。
これに対し、たとえばお子さまが「遊園地をつくればいい」といった場合。「それはいい考えだけど、ここは交通がすごく不便なんだよ。大きな町のそばには、ほかに楽しい遊園地もいっぱいあるよ。遠くからお客さんを呼ぶには何か工夫が必要なんじゃない?」というふうに、お子さまの考えが深まるようなヒントを示してあげましょう。その考え方を否定するのではなく、根本は受け入れたうえで、問題点を指摘してあげることが大切です。その問題点をどう乗り越えるか、お子さまが粘り強く考え、「最初に出した答えより、こっちの答えのほうがいいな」と、自分で気づくことができれば良いですね。

◆保護者の苦手分野は「子どもに教わる」つもりで

ただし、すべての分野の問題に対して、お子さまの答えと異なる視点を示すのは難しいかもしれません。保護者のかたの苦手分野であれば、「どういうこと? よくわからないからもっと詳しく教えて」というふうに、少年・少女になったつもりでお子さまに説明してもらい、それを聞いたうえで素朴な疑問をぶつけてみるとよいと思います。お子さまが答えられなければ、一緒に調べてみましょう。インターネットでどんな言葉を入れて検索するか、図書館でどんなふうに目的の資料を見つけるかなど、「調べ方」を知ることも非常に大切です。調べてわかったことをお子さまに発表してもらうプレゼンテーションの機会をもつとさらに良いですね。表現力もつきますし、「自分の考えをお父さん、お母さんが一生懸命聞いて、ほめてくれた!」という体験は大きな自信につながります。

◆間違いを恐れず「理屈をこねる」楽しさを伝える

思考力入試には、どちらの答えが正しいか論じさせる、証明させるといったタイプの、正解のある問題もあります。その場合も、たとえ結論が間違っていても、途中の考え方が正しければ部分点をもらえることがほとんどです。中学・高校以上になると、より論理の正しさが厳しく問われるようになりますが、現時点では、まずは「自分で考える」楽しさを伝えてあげてください。間違っていても、とりあえずは「面白い理屈をこねているなあ」と、お子さまの考え方を聞いてあげましょう。科学は、無数の間違いや試行錯誤のもとに発展してきたわけですから、間違いを恐れずに考える習慣をつけることのほうが大切です。「こういう見方をすれば、こっちも正解だよ」というふうに、肯定的なメッセージを伝えてあげましょう。

なお、論理性をはぐくむ材料として、英国で開発された中高生向けの数学教材Bowland Mathsなどを見てみるのも面白いと思います。
http://bowlandjapan.org/
また、グラフ電卓などを使って、グラフの描画やプログラミングに親しむのも、論理性を身につけるのに役立ちます。

◆実体験と結びついた知識が思考力を育てる

思考力は、実体験と知識を結びつけることで育っていきます。たとえば教科書で見た「扇状地」という言葉と、実際に扇状地に立ってそこの空気や風景を肌で感じた体験が結びつくことで、強固な記憶になり、そこを出発点に様々な発想が生まれてくるんですね。特に時間に余裕のある4年生の間は、ぜひ博物館や美術館、動物園や水族館、海や山など自然の中へ出かけて、お子さまと様々な体験を楽しむ機会をつくってください。お出かけのあとでおしゃべりを楽しんでいるうちに、知らず知らず思考力や表現力は育っていきます。
初夏から夏休みにかけて、ご家族で過ごす時間が増えるこの時期、ぜひお子さまとたっぷり対話を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(筆者:森上展安)

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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