2017年東京・神奈川の公立高校入試問題にみる今後の傾向と対策

大学入試改革の方向性を受けて、公立高校の入試問題も変わりつつあります。例として2017年の東京都・神奈川県の入試問題を見ながら、傾向と今後の対策について考察していきます。

◆グラフや図表の読み取りは、どの教科でも頻出

2017年の入試問題では、理科や社会だけでなく、どの教科でも「資料を読み取る力」を問う問題が目立ちました。たとえば、神奈川県の英語の問題では、ニューヨーク、シドニー、リオデジャネイロの気温・降水量のグラフや、日米の自動販売機の台数を示したグラフが提示され、その内容を読み取りながら答える問題が出題されています。

◆英語——「覚える」だけでなく「使う」力を問う問題へ

基本的な英単語や漢字、理科・社会の用語などを書かせる問題は、どの都県でも出題されています。基本事項をきちんと覚えることは、もちろん必要です。その一方で、その場で提示された情報を使いこなす力を問う問題が増えています。
たとえば英語の長文問題では、多くの単語の意味があらかじめ注として示されています。その内容も、「コンビニエンスストア」「無料インターネットサービス」(神奈川県)など、日常的によく使う言葉です。
東京都の英語の問題では、漢字の書き方をめぐる会話やメールのやり取りが扱われ、「相手に伝えたいことを自分で考えて英文で書く」問題が出題されました。

◆機械的なアウトプットではなく、「考える力」が求められている

東京都の数学では、ある規則に従って、階段状に並べた数字を使った証明問題が出されました。また、神奈川県の社会では、都市圏と地方圏の人口増減のグラフが提示され、移住、働き口という二つの語句を使って、政府がハローワークを通してどのように課題を解決しているかを書かせる問題が出題されました。
東京都の社会でも、地理・歴史・現代社会の融合問題が多く、基礎的な知識、資料を読み取る力、考えて書く力のすべてが必要とされているといえます。

◆ニュース番組・新聞などで時事問題に触れ、考える習慣を

国語では、従来のとおり、文学的文章や古典の読み取りも出題される一方で、きわめて現代的な問題を扱った説明的文章が出題される傾向にあります。神奈川県の国語で出題された内山節「半市場経済」の文章については、「コンプライアンス」「フェア・トレード」などの語句の意味が注として提示されていますが、新聞などでタイムリーな経済・社会についての文章を読み慣れていなければ、限られた時間の中で読みこなすのはなかなか難しいでしょう。
東京都では、原田信男「日本人は何を食べてきたか」の文章に関連し、「食生活と歴史」について、「自分の具体的な見聞や体験も含めて、意見を200字以内で書く」問題が出題されています。

このように、近年の入試問題は、思考力や表現力を問う問題が増えています。ふだんから、自分の頭で考え、考えたことを話したり、書いたりして人に伝える訓練をしておくことが必要です。思考力や表現力をつけるには時間がかかりますが、少しずつ慣れておくことが大切なのです。

ちなみに、東京都の進学指導重点校・進学重視型単位制高校は、これまでグループ作成問題で入試を行ってきましたが、2018年から、各学校で独自に問題を作成することになりました。特にこれらの学校を志望する場合は、早めに「考える」・「書く」訓練を始めておくことをおすすめします。

※2017年の入試問題はここから見ることができます。
東京都
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2017/pr170224b.html
神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f160600/p1111571.html

(筆者:安田 理)

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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