速報!2017年首都圏中学入試 理科

2017(平成29)年の首都圏中学入試にはどんな傾向が見られ、どんな力が問われたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「平成29年首都圏中学入試の結果と分析」での、小川理科研究所の小川眞士先生による「理科」の分析をお届けします。

※以下は同セミナーでの小川眞士先生による分析を抄録したものです。

■大学入試改革を意識した問題の増加——データ分析中心の「思考の理科」へ

昨年から、大学入試改革を意識した問題が増えてきており、今年はさらにその傾向が進んだといえます。分野別にみると、生物・地学・物理・化学の4分野からまんべんなく出題されていますが、なかでも物の運動や状態変化のデータ解析をさせる問題が目立ちました。文章はもちろんですが、図、グラフをかいて答えさせる記述問題も増えています。
問題文の字数も増加傾向にあります。これは、問題の前提条件を読み取り、整理する力が問われているためと考えられます。

■教科書に載っている基本事項の理解がカギ

昆虫の体のつくり(早稲田)、アサガオとヘチマのつくり(開智)をはじめ、教科書に載っている基本事項は数多く出題されました。基本事項を確実に理解したうえで「いかに考えるか」を問う問題が増えています。

■身のまわりのものを題材に掘り下げる

東邦大学付属東邦では三路スイッチの問題、横浜共立ではボールペンに使われている「し温インク」について出題されました。食育と絡め、マメ科の植物やもやしについての出題は、慶應普通部フェリスなど様々なところで出ています。白百合ではラムネ、鎌倉学園ではスプーンに映る像について出題されました。

■各分野の特徴的な問題

<植物>
基本事項を確認した上でのデータの読み取りが増加しています。光合成は明治大学附属明治、大宮開成、東邦大学付属東邦などで出題。麻布では、光合成の基礎知識に光の色を絡めた「光発芽」の問題が出題されました。

<動物>
昆虫、メダカ、人体を中心に、データ読み取りの問題が増加しています。サレジオ、本郷では、胎児循環やヘモグロビンについて出題されました。これらも、提示されたデータをいかに読み取るかが重要な問題です。

<天体>
太陽・地球・月、星の動きについての総合的な把握が大切です。早稲田では、星座早見盤や惑星の会合周期について出題されました。女子学院では、惑星の半径や密度のデータ解析や周期、惑星探査機「あかつき」などの時事的な話題を絡め、様々な角度から考えさせる問題が出題されました。

<気象>
増加傾向にある分野です。飽和水蒸気量に絡め、湿度や露点について問う問題が増加しており、中央大学附属、城北、白百合、桐朋女子などで出題されました。

<大地(地学)>
流水のはたらきについてのグラフ読み取り問題が、大宮開成、鎌倉女学院で出題されました。地層(栄東、立教新座など)は、立体の断面図を問う理論的な問題として出題されるケースが増えています。プレート(和洋国府台等)・火山(大妻等)、地震(東洋英和・サレジオ等)は、時事問題と絡めて出題される傾向があります。

<力学>
データに基づいた計算の出題が増加しています。海城では、グラフを見ながら、キャリーバッグの重心や地面との角度について考えさせる問題が出ました。振り子、放物運動、斜面の運動、ばね、衝突などの問題は非常に多く出されています。学習院女子では、力の大きさをはかるセンサーに振り子をつるし、振り子の運動について解析する問題が出題されています。
麻布では、慣性の法則が出題されました。これは、自転車のかごに入れたボールと水筒、遊園地のアトラクションなど様々な材料を提示しながら考えさせる難問でした。

<電気>
磁気作用や発熱、電圧に関して思考を問う問題が目立ちました。白百合では、電磁石について総合的に考えさせる問題、の電圧・電流の問題が印象的でした。LED、コンデンサー、光電池、手回し発電に関する出題は、昨年よりは少なくなりました。

<光・熱・音>
光と熱に関する問題が増えています。光に関しては反射(浦和明星など)が多く、洗足では光速に関する問題も出題されています。また、今年は三原色の問題が目立ち、鷗友、浅野、青山学院などで出題。鴎友の三原色の問題はカラー印刷での出題です。
熱に関しては、状態変化を絡めた問題が頻出。城西川越では、水分子と状態変化について出題されていますが、問題をよく読めば解けるように構成された問題といえます。

<水溶液>
溶解、水溶液、物質、気体などの基本事項は、数多くの学校で、今年も確実に出題されています。燃焼や気体の発生・中和に関しては、グラフや表の読み取りが中心です。

<実験器具の使い方>
メスシリンダー、顕微鏡、上皿てんびん、ガスバーナーなどが中心。実験器具の使い方を具体的に問う問題や、メスシリンダー等の目盛りの読み取りもよく出題されています。海城では、気体発生の問題と絡め、試験管の正しい加熱のしかたを図にかく問題が出題されました。

■時事問題は増加。社会など他教科横断型の問題も目立つ

時事問題を切り口とした問題は増えています。今年度はニホニウム(学習院、麻布、東邦大付属東邦、立教新座など)、スーパームーン(頌栄、慶應中等部、開智先端など)、重力波(巣鴨など)、台風・豪雨(学習院中等科、立教女学院、雙葉、栄東東大コース など)が取り上げられました。社会との他教科横断型の問題も目立ちます。

■注目したい問題——教科横断の総合的な思考、理科的なものの見方を問う

女子学院渋谷幕張では、植生の変化と気温の相関関係を示す「暖かさの指数」に関する問題が出題されました。日本列島の地図を見て、気候を頭に入れながらデータを読み取ることが求められる、理科・社会の融合問題です。
頌栄、聖光、芝では、環境や進化について幅広く、深く考えさせる問題が出題されました。

今年話題となったのは、光塩のアンドロイドと人間に関する問題です。石黒浩著「アンドロイドと人間の未来」、そこに登場する桂米朝師匠のアンドロイドに絡めて落語、茶運び人形のしくみやドラえもんのマンガなど、様々な資料を読み進めながら思考を深めていくもので、国語、理科、社会の総合問題となっています。先生方の苦心が偲ばれる素晴らしい問題だと思います。
また、広尾では水鉄砲で的を射る図が示され、「この図から考えられることを理科的視点に立って述べなさい」という問題が出題されました。先生方は採点基準も含め、「理科的視点」について深く議論されたのではないでしょうか。「理科的に考えられる生徒を育てたい」という姿勢がはっきりと現れた問題といえます。 大学入試改革をにらみ、今後はますますこのような問題が増えていくでしょう。

■今後に向けて——基本事項の確認と理科的思考力の充実を

教科書を中心とした基本事項を確実に理解したうえで、条件を整理し、表・グラフなどのデータや文章を正確に読み取る力が問われています。近年は身近な現象、時事的な話題など、あらゆるところから出題されますので、アンテナを高くして、体験から学ぶことも大切です。演習では良問を取り上げ、いろいろな視点から考え分析する必要があります。様々な場面を使って、理科的な思考力を深めていきましょう。

プロフィール

小川眞士

小川眞士

東京都練馬区立の中学校で理科を教えたあと、四谷大塚進学教室理科講師。四谷大塚副室長、理科教務主任を勤めたカリスマ講師。2009(平成21)年に小川理科研究所開設。

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