今こそ、子どもと話し合っておきたい「将来」と「進路」 [高校受験]

2学期に入ると、勉強も忙しく、学校行事も多くて気分的に余裕がなくなるため、志望校についても「受かりそうなところでいい」と考えてしまいがちです。そこで、2学期が始まる前に、あえて親子で考えていただきたい「将来と進路」についてお話しします。

仕事をするってどんなこと? 進路とどうかかわる?

「医師になりたいから、医学部進学コースのあるA高校に進みたい」というふうに、将来の夢と進路が直結しているとしたら、それはすばらしいことです。しかし、そこまで具体的に考えている中学生は少数だと思います。むしろ、仕事について真剣に考えたことのないお子さまが大半ではないでしょうか。志望校最終決定が迫って学校のことしか考えられなくなる前に、ぜひ一度「将来」についてお子さまと話し合ってみてください。

仕事は、単にお金を得るための手段というだけでなく、社会と向き合う手段ともいえます。自分の持ち味を生かし、それを磨くことで、誰かに求められ、社会の役に立つ。そうすることが自分の生きる基盤にもなる--これが仕事の理想形ではないでしょうか。

つまり、将来を考えるためには、まず、自分の長所を自覚し、「自分というものを、社会にどのように生かせるだろうか」と考えてみることが必要です。長期的な視点で自分を見つめることで、「合格のために、受験勉強をいやいやがんばる」のではなく、「自分の適性を伸ばしてくれそうな高校を選び、そこに向かって努力する」という前向きな姿勢が生まれます。

「仕事」について考える材料を用意して

子どもが仕事に興味を持つきっかけとして、「親戚の話を聞いて」というのが意外に多いようです。親戚や知人を通して紹介してもらい、さまざまな仕事の現場を見せてあげられるといいですね。また、気恥ずかしさがあるかもしれませんが、ご自身の進路選択、仕事の面白さや苦労について、お子さまに話してあげるのもよいと思います。学んだことと仕事が直接は結び付かず、回り道が多かったとしても、お子さまに響くものは必ずあるでしょう。むしろ、これまでの経験すべてが、保護者のかたの「今」につながっていることが実感できるかもしれません。

また、お子さまが仕事に興味を持ち始めたら、こんな本もおすすめです。
・村上龍『新 13歳のハローワーク』(幻冬舎)
・三浦しをん『ふむふむ おしえて、お仕事!』(新潮文庫)
どちらも、世の中には驚くほど多様な仕事があること、たとえ人目につかない仕事でも、こだわりや誇りを持ってと取り組むプロたちの姿がいきいきと伝わってくる本です。

先の見えない世界だからこそ、「好き」という軸を大切に

オックスフォード大学のオズボーン准教授の研究によれば「今後10~20年で、全米の702職種のうちの47%の仕事が自動化される可能性が高い」といわれています。また、日本では現在、働く人の約40%が非正規雇用であり、生涯ひとつの企業で働き続ける人は減っています。「この仕事に就けば」「この企業に就職すれば」将来は安心、といったことが見えにくくなっているのです。

しかも、人口の減少で国内の生産能力・消費能力が縮小傾向にあるため、多くの日本企業が発展途上国にビジネスの力点を移しつつあります。ですから、今の子どもたちは、望むと望まないとにかかわらず、発展途上国で働く可能性が高いといえるでしょう。そのような社会情勢についても、折にふれて話題にしてみてください。
先の見えにくい世の中で不可欠なのは、どんな場所でも生きていける、柔軟さやタフさではないでしょうか。

このような「しなやかな強さ」は、大人に言われるままに無難な道を選んでいるうちは身に付きません。お子さまが長期的な視点でゆっくりと自分を見つめる機会を、ぜひつくってあげてください。

(筆者:安田理)

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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