入試直前・直後の過ごし方 [中学受験 6年生]

中学受験において保護者の役割は、子どもの成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。6年生を対象に、1月時点でわかる首都圏入試の出願傾向と、入試直前・直後の過ごし方について取り上げます。

■本命狙いで、併願校は減少傾向に

今年度の出願傾向を見ると、併願校の受験数は減少傾向にあります。東京の受験生が、1月に行われる埼玉や千葉などの学校を受験する、いわゆる「1月入試」の受験数は1校というケースが多く、逆に埼玉や千葉の受験生は東京の学校を受けないケースが増えています。また、午後入試の受験者数も減少傾向にあります。つまり、併願校の数は増やさず、本命校の受験に力を入れるケースが増えているといえます。

また、以前に比べ極端な難関志向は見られなくなっています。早慶系の学校は、例年どおり多くの志願者を集めてはいますが、極端な高倍率は見られませんし、男子校・女子校の難関校でも、一部で倍率の緩和が見られます。偏差値より、お子さまに合った学校をという視点で受験校を選んでいるかたが増えているように見受けられます。

■後期日程の入試にも注目を

近年は共学志向が続いており、中堅の男子校・女子校は入りやすくなっています。「狭き門」ではなくても、ユニークな教育で実績を出しつつある学校も数多くあります。

もし、ご本人が2月1日、2日にあまり調子がよくなかったと感じているようなら、その後の日程で入試を行っている男子校・女子校を検討してみるのもおすすめです。また、品川女子の表現力総合型入試(4日)、宝仙学園のリベラルアーツ入試(4日)など、偏差値にとらわれないユニークな入試を行っている学校もあります。

■私立入試の多様化と高大連携の動き

公立校の変化に伴い、私立の学科や選抜方法にもドラスティックな変化が見られます。インターナショナルスクール化する、理数教育に特化したコースを設けるなど、特色あるカリキュラムを組むと同時に、中高一貫校で行われるような適性検査や面接、プレゼン能力を見る入試も増えてきていますし、英語だけの入試を行うところも増えています。

また、今年度は大学附属校に数多くの受験生が集まりましたが、近年、高校が大学と連携を強め、附属校でなくても、成績に応じて提携大学に進学できるようにする「高大連携」の動きが活発化しています。この傾向は、近年希望者が減少傾向にある女子校で特に顕著です。高大連携は、今後公立でも私立でも拡大していくでしょう。高大連携が進むと、高校生活も変化し、「大学入試のため」ではなく、「自分のため」、自分に合った分野で身を立てるために学ぶ場という意味合いが強くなると考えられます。

■毎回「答案に対して実力を発揮できたか」の確認を

既に1月入試を受けたかたも多いと思いますが、入試のあと、最も大切なのは合否よりも「答案に対して、実力が発揮できたか」「思いどおりの答案が書けたか」を反省し、次回に生かすことです。入試というのは実力を発揮する練習と思えばよいのです。これは、第一志望校の入試でも同じことです。

■合否をどう受け止めるか

保護者のかたに最も注意していただきたいのは、合否を人格と結び付けるようなほめ方、叱り方をしないことです。入試本番で緊張のあまり、ペースをつかめなかったとか、大きなミスをしてしまうというのはよくあること。これは単なる答案技術の問題であり、ご本人が入試本番に向けて努力してきたという事実は変わりません。

入試が残念な結果に終わった場合、ここまでがんばってきた保護者のかたもショックを受けるのは当然と思います。しかし、お子さまの前では「大丈夫、どうってことないよ」とほほえんでいてください。受験期間の数日でかまいませんので、余裕ある態度を演じきっていただきたいんですね。親思いのいい子であるほど、保護者のかたの表情をよく見ていますから、保護者のかたの落胆が子どもにも伝染しがちです。「お父さん、お母さんに申し訳ない」と思ってしまい、不合格だったことがトラウマになってしまいがちです。

逆に、難関校に合格できた場合も、その子の努力をほめてあげることは大切ですが、結果だけをほめそやすのはよいことではありません。4月からは、同じ学力の子たちと一緒の学校生活が始まるわけですから、子どもに「自分はすごいんだ」と思い込ませ、「天狗(てんぐ)」にしてしまうのはかえってかわいそうです。喜びも、悲しみも、一歩引いた視点でゆったりと受け止めていただきたいと思います。

■長期的な目線で「これから」を考える

今は大学も高校教育も過渡期にあり、特に公立高校は大きく変わりつつあります。自分の進路の希望がはっきりしてきたら、高校入試で再チャレンジという選択をする子どもも増えています。「とりあえず」今の選択がベスト。別の道が見えてきたらそちらに……、そのような長期的な目線で、お子さまのこれからを考えることが大切ではないでしょうか。

入試本番、合格発表、入学手続き、新学期……と、保護者のかたはまさにこれから、中学受験のフィナーレを迎えられることと思います。お子さまのご健闘と悔いのない選択を、心からお祈り申し上げます。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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