学習ペースの最適化をはかる [中学受験 4年生]

中学受験において保護者の役割は、子どもの成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。4年生を対象に「学習ペースの最適化」についてお話しします。

■新5年生カリキュラムに向けて、勉強時間の確保を

2月になると、多くの塾で新5年生向けのカリキュラムが始まります。これまでとの大きな違いは、内容が本格的に入試問題レベルになること。それに伴って授業のコマ数が増えることです。勉強時間が増えるので、生活を見直さなくては追い付かなくなってきます。
ですから、この時期には「成績が低迷している」「塾の宿題がこなせない」といった相談をよく受けます。勉強しないと叱られるのでいやいや机に向かっている、保護者のかたとの関係が険悪になるといったことも起こり始めます。

まずは、勉強時間を確保するため、生活をシンプルにすることが大切です。習い事を複数している場合は、お子さまが本当に好きなものか、会話やゲーム中心の英会話など、家での予復習が必要なく勉強の気分転換になるものに絞ったほうがよいでしょう。

■宿題の量は「ちょっと大変」くらいに調整

宿題は、ご本人にとって「ちょっと大変」なくらいが適量です。ところが、正直に申し上げて、多くの塾では課題を出しすぎていると感じます。もちろん、よくできる子ならどんどん問題を解かせればよいのですが、まだ受験勉強に慣れない初学者には、オーソドックスな良問に絞って丁寧に解き方を教えるほうがずっと効果的です。ところが塾側には、保護者のかたから「こんな傾向の問題への対策が不十分ではないか」と言われることを恐れて、なかなか問題数を絞り込めないという事情があり、その結果、子どもに過度の負担をかけることになりがちです。ですから、宿題の量はお子さまの習熟度に合わせて調整し、「これだけでいいよ」と言ってあげる必要があるのです。

まずはお子さまに問題文を音読させ、解く様子を観察してください。問題の意味もとれていないものは飛ばしてかまいません。自分で題意をつかめ、手を動かしながら考えられる問題を中心に解かせるようにします。手が付けられない問題のほうが多いようでしたら、塾や学習法を見直したほうがよいでしょう。

■目標を低めに設定して「毎日勉強すること」に慣れさせる

入試問題は、中堅校レベルと難関校レベルの2つに大きく分けられますが、中堅校レベルでも、教科書レベルよりははるかに難しいといえます。ですから、これまでは8割以上の問題ができていたのに、5年生で入試問題に取り組み始めると、6割、5割以下しかできなくなる子も出てきます。
この2、3月は、目標は苦手教科で6割程度と低めに設定しましょう。大切なのは、「毎日勉強する習慣を付ける」ことです。成績は多少悪くても、基本事項だけはマスターしてなんとか「ついていく」状態を目指してください。偏差値が55%程度なら「ついていっている」状態といえます。

なお、5年生の時点で7割の問題ができれば、超難関校を目指せるレベルです。6割できれば標準的なレベルで、6年生になってやる気が出た時にがんばれば難関校も目指せます。今から7割・8割を目指すと、子どもたちは息切れしてしまいがちです。今は、難問にも取り組めるようになるための下地づくりの時期と心得てください。

■「昨日より今日」の小さな努力を認めて

大人はつい、「子どもは毎日勉強するのが普通」と考えがちですが、それは大きな思い違いです。そもそも、子どもはおもしろくないことを我慢してやり続けられるようにはできていません。勉強が楽しくてよくわかり、それをほめてもらえるような環境であれば、子どもは自然に伸びていきます。ところが、理解させることに力を入れず、受験テクニックばかりを暗記させるような、子どもには向かない教え方をする先生も少なからずいます。ですから、子どもにだけ努力を求めず、勉強の楽しさを教えてくれるようなよい先生、よい環境を見つけてあげることが保護者のかたの務めだと思います。

「毎日勉強する」習慣を付けるのは本当に大変です。お子さまと一緒に勉強の時間や量を決めて、それを守れたらほめてあげる、好きなおやつを用意するなど、お子さまが「お父さん、お母さんとの約束を守れた」「昨日より今日はちょっとがんばれた」という実感を得られる工夫をしてあげてください。"ちょっと努力した"実感が、今はとても大切です。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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