小説家の柴崎竜人さんに聞く 将来、小説家になるためには

小説家になるには中学や高校の頃から準備するほうがよいのでしょうか。そもそも作品を書くのにどのような心構えが必要なのでしょうか。そこで、『三軒茶屋星座館』シリーズや、『あなたの明かりが消えること』の著者で、写真展やイベントの開催などマルチに活躍されている小説家の柴崎竜人さんにお話を伺いました。


学生時代のインプットが大事

 小説家という職業に年齢は関係ありません。いつでもなれますから、いろんなこと経験したあとでも全然遅くないです。中学生や高校生の頃から志しても、もちろんよいと思いますが、50代からの楽しみとして取っておくのもありだと思いますよ。難しいのは「小説家であり続ける」ということ。1冊の本を出すというのはそこまで大変ではないと思います。ですが、小説家として書き続けることはとても難しいです。人生の中でも、中学生や高校生のときの経験は作家としての自分を方向づけますので、学生時代をどう過ごすかはとても大事です。だから、今の学生生活がどれだけ大事かを考えて、この期間に大量にインプットすることが大切なのではないでしょうか。

 

 

親に見せられるようなモノは書くな

 以前、「本をそんなに読んでないんだけど作家になりたい」という相談をされたことがありましたが、正直それは難しいと思います。たとえば、外食しないのにコックになりたいというのは、はっきり言って無理ですよね。小説も同じで、1、2冊しか読んでない人より1,000冊、2,000冊の本を読んだ人のほうが多くの物語を知っていて、引き出しもより深いと思います。

 

また、「小説を書きたいけど何を書いていいかわからない」という人にも会ったことがあります。そういう人には「親に見せられるようなモノは書くな」とアドバイスしています。親に見せられる話のなかに、秘密はありません。そこには心の醜い自分や、恥ずかしい自分はありません。でも読者は、主人公が自分の心の醜さに悩んだり、恥をかいたり、悔しがったりしながら成長するところに、共感するのです。はじめて小説を書くのなら、親には見せたくないような小説を書いて下さい。

 

 

自分を救ってくれた小説を追い続けたい

 モノ作りをしている人たちは、自分のことを救ってくれたモノを追いかけていると思います。たとえば音楽を作っている人の中に、音楽に救われたことのないという人はいないと思うのです。それは小説家も同じでしょう。僕は小説がやっぱり1番好きだから、ひとりでも多くの人たちに「小説っておもしろいじゃん」と言ってもらいたいのです。そのために小説の魅力を別の切り口で自分が伝えたいと思っています。自分の可能性というよりは、小説の可能性を広げたいのです。

 

今は小説を書くこと以外にも「写真3枚から即興で小説をつくる」というイベントを開催するなど、もっとカジュアルに、興味本位で小説の魅力に触れることができるよう、常に挑戦しています。そのイベントも、もともとは書き手仲間で大喜利のように遊んでいたのがいつのまにかイベントになったものです。実際、それをやると小説を書くレッスンにもなりますしね。

 

 

書籍以外にも小説の可能性を模索する

 今後は歌詞や脚本なども積極的にやりたいです。小説を作るのはもちろん好きですが、本を出しても読者からのリアクションはリアルタイムで見られませんよね。自分の小説が面白かったという話を聞くのはもちろんうれしいですが、そのリアクションがすぐにわからないのは悔しい。それが、舞台や映像などの脚本だったら、自分がお客さんと同じ空間にいればリアクションを見ることができますよね。

歌詞であったり脚本であったり、文章講座であったり、イベントであったり、小説の可能性を広げることにはどんどん挑戦していきたいです。

 

今後、電子出版が広まっていくのであれば、そのお手伝いもしたいですね。作品づくりの外側のプラットフォームに参加して、なにか役に立てたらとも思っています。より多くの人たちに「小説って面白いじゃん」と思ってもらいたいですから。

 

 

プロフィール

柴崎竜人(しばざきりゅうと)

小説家、脚本家。1976年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。東京三菱銀行退行後、バーテンダー、コンセプトプランナーなどを経て、2004年「シャンペイン・キャデラック」で第11回三田文学新人賞を受賞し作家デビュー。近著『三軒茶屋星座館』は文教堂 三軒茶屋店で10週連続ランキング1位を記録した。2014年12月、柴崎竜人の新境地を拓く最新刊「あなたの明かりが消えること」発売中。

子育て・教育Q&A