【回答:若泉 敏】適性検査・受検対策<その2>

「中学受検は親子の受検」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受検準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

公立中高一貫校受検は、生活態度や校内・校外活動の有無を問われますか?

公立中高一貫校の対策、通信教育に塾をプラスする際の活用法などを知りたい

作文で、自分の体験をわかりやすく伝えるためのトレーニング方法は?

公立中高一貫校受検は、生活態度や校内・校外活動の有無を問われますか?

公立中高一貫校の受検について悩んでいます。現在5年生ですが、担任の先生によると成績が良いのは大前提で、その他生活態度も極めて良く、学校や地域の活動などにも率先して参加していないと難しいでしょう、とのことでした。
子どもは言われたことはコツコツするタイプですが、のんびり屋でリーダーシップをとるような性格ではありませんし、今のところ特に何か活動したという実績もありません。
そのような子どもでは、やはり合格は難しいのでしょうか。
調査書は無視できないが、それだけで差はつかない。日頃の校内校外活動に積極的に取り組み、幅広い興味関心をもつ姿勢が大事

小学校の先生がおっしゃるように、公立中高一貫校に合格する子どもは、おおむね学校の生活態度や成績が良好な児童、何事にも意欲的で興味関心の幅が広い児童が多いことは確かです。しかし質問者のような傾向の子どもの合格は難しいかというと、そんなことは決してありません。

一人ひとり個性があり、得意不得意が違いますから、一般的な傾向をもっていないからといって、それで合否が決まるわけではないと考えましょう。
確かに8教科の3段階評定が点数化される小学校の報告書・調査書は、適性検査などを含めた総合成績の2割から4割のウエートを占めますから、決して軽く見てはいけませんが、実際に合格している子どもは、ほとんどの評定が3というわけではありません。各学校の校長先生の話によると、評定3と評定2が半々の子どもでもけっこう合格しています。むしろ、調査書ではほとんど差がついていないというのが実情です。評定2があっても、適性検査の結果が良ければ、問題はありません。ただし、受検に向けて、幅広い興味関心や校内校外活動の積極的姿勢を高めておくことは、公立中高一貫校合格後の生活をより充実させるためにも必要ですから、小学生のうちから親子で意識的に取り組むことは大切です。

公立中高一貫校の対策、通信教育に塾をプラスする際の活用法などを知りたい

県立広島中学校の受検を予定しており、5年生からベネッセの「作文・表現力講座 公立中高一貫校受検対策コース」で学習をしてきました。6年生の5月になって、過去問を本番の試験と同じ制限時間で解かせたところ、適性検査1については時間がなくて、ほとんど解けませんでした。適性検査2はすべて解答し、ほぼできていたようです。
これから先、通信教育のみで合格できるのかとても不安で、塾通いも考えています。進研ゼミの「チャレンジ」の基本コースでのつまずきもなく、過去問もじっくりと時間をかければなんとか解けるようですが、どのような塾に行き、どのように活用すべきか悩んでいます。
できればこれまでのように「チャレンジ」の受講も続けていきたいのですが…。アドバイスをお願いいたします。
県立広島中学校の適性検査問題は全国でも高レベルだが、今の段階で合格点がとれなくても心配はない。親の不安な気持ちは、子どもに影響を与えるので、要注意

県立広島中学校の適性検査問題は、全国の適性検査問題の中でも高いレベルにあります。したがって、6年生5月の段階で本試験と同じ制限時間内で解かせても、合格点をとることは非常に厳しいでしょう。6年生の1学期初めの力と3学期の実力には相当大きな開きがある、という事実を踏まえて判断しなければいけません。適性検査1の合格者平均点は5割に達していない可能性があります。適性検査2はほぼできていたようですから、焦らずに実力を養いましょう。県立広島中学校の適性検査レベルは、京都市立西京高校附属や東京都立の問題と同レベルにありますので、それらの過去問にも当たり、問題分析力を高めることが大切です。
「チャレンジ」の受講を続けながら、拙著『公立中高一貫校・合格への最短ルール~適性検査で問われる「これからの学力」』(WAVE出版)を十分参考になさって対策を立てれば合格に近づくでしょう。親のかかわり方しだいで、通塾なしの合格は可能なのです。

ところで「これから先、通信教育のみで合格できるかとても不安」に感じているようですね。子どものことで一度不安を感じると、母親はその呪縛(じゅばく)からはなかなか逃れられません。相談者の場合は塾に通わなければ不安がますます大きくなるタイプなのでしょう。塾通いをさせなければ不安を解消することは難しいかもしれません。
広島県は、私立の中高一貫校も多いですから、きっと良い塾があると思いますよ。ただし、塾に入りさえすれば合格に近づくと考えると、失敗することがあります。選択した塾が、県立広島中学校の問題レベルに対応した適性検査対策を行っているのかを判断するのは親の力です。塾長だけでなく、担当講師の説明を十分に聞いて判断しましょう。どのような考え方で、具体的にどのような方法で指導するのかを聞いたうえで、塾を選択します。子どもの合格のためには、そのような選択判断が必要となります。

作文で、自分の体験をわかりやすく伝えるためのトレーニング方法は?

先日、公立中高一貫校用の模試を受けました。点数はわりと良く、実際に子どもの書いた作文を読むと、全体的な組み立てはできているように思うのですが、「自分の体験を端的にわかりやすく伝える」ということができていないようです。家庭でどんなトレーニングをしたらいいでしょうか?
志望校の過去問を調査して、問題の特徴をつかんでから似たような傾向の問題を選んで、他人が読んでもわかりやい作文を書くトレーニングをしよう

公立中高一貫校の作文課題は、都道府県や学校によって、出題の傾向や形式はさまざまです。一方、公立中高一貫校用の模試の問題は全国の受検者に共通の問題です。したがって、模試の問題で点数が良かったからといって、必ずしも志望校の作文課題でも同じように良い点数がとれるとは限らないと考えてください。模試の評価を参考にして、自分の課題を見つけたり、技術的な面を修正したりすることに役立てましょう。

ご家庭で対策を立てる場合に最初に調べなければいけないのは、志望する一貫校の過去に出題された作文課題です。その特徴をつかんだうえで、全国の適性検査問題から似た傾向の問題を選び出します。選んだ学校の作文課題を練習することが、志望校の作文トレーニングとして効果的な方法となるでしょう。
「自分の体験を端的にわかりやすく伝える」ためには、まず「体験を(他人が読んでも)わかりやすく」なるように書くことに主眼をおきます。最初は字数制限を無視して、他人がイメージをもてるように詳しく書きます。思いや感想よりも「事実を記述する」ことを心がけましょう。
次に「体験を端的に伝える」練習に入ります。最初に書いた作文を土台にして字数を少なくしていきます。300字以内、200字以内、150字以内というように書き直していきます。書いたものはすべてとっておいて、あとで比較検討をしてみましょう。まだ本番には時間的余裕があるのですから、じっくり取り組んでいくことです。
ただし、作文課題でいちばん重要なのは、自分の体験と課題との関連性です。そして課題に相応した自分の考えが明確に記述されていることですから、その点を忘れないようにしてください。

プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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