渋谷教育学園渋谷中学校1年生 Kさんのお母さま

受験校に関しては、渋渋以外は考えなかったのですか?

受験するのは志望校である渋渋1本、だめなら地元の公立中学に行く、と本人も私を含めた家族もそう決めていたはずだったのですが、年の瀬も押し迫る頃になって、あろうことか、あれだけ揺るぎない「信念」をもっていたはずの私自身が急に不安になりました。
過去問の結果が思うように伸びなかったことがいちばんの原因ですが、特に時間をかければ正答できるのに、なかなか時間内に解けない。転塾して問題を解く楽しみに気づいたおかげで、がんばってあきらめないで難しい問題を解く、という「根性」は身についたのですが、今度は「時間配分」という基本的な、しかも最も重要な壁が待っていました。
塾の先生に相談したところ、やはり心配だったのでしょうね。それまでは併願校の話はいっさいなさらなかったのですが、やっと来たか(笑)という感じで、考えてもみなかったいろいろな学校の名前が挙がりました。さっそく塾でも過去問を解かせてみますから、ということになり、それまでは渋渋以外どこの学校も学校説明会どころかホームページすらチェックしたことがなかった私は、慌てて偏差値表とにらめっこの日々。実は、偏差値表もじっくりと分析したことがなかったのですが、その頃になって初めて真剣に偏差値表や倍率予想を確認したような次第でした。

だんだんと本番までのカウントダウンが始まるなか、私の頭も普通では考えられないほど混乱していたようです。今まではただひたすら本人のモチベーションを保ち、応援する、というスタンスで、併願校の話などしなかったのですが、年が明けてお正月特訓をとらずに自宅学習をしていたときに、「他の学校も見てみようか? ちょっといいところがあるんだけど」と切り出しました。12月後半から塾でも他の学校の過去問をやらされていたので本人も少しは予想していたようですが、それでも、表情を硬くして「どうして? 僕は渋渋以外は行かないよ」と言うのです。「しまった…」と思いましたが、そのときの「別の私」はとにかく焦りと不安があったのでしょうね。「見るだけ見ようよ」と1月のある日、2人だけの“学校ツアー”を強行しました。本人の希望である共学校をいくつか回りましたが、その中で本人がここなら…と気に入ったのは1校だけでした。
その間夫は、唐突に右往左往し始めた私の様子を責めるでもなく、一貫して「本人は渋渋に行きたいから受験を決めたんだから、だめならだめでいいじゃないか」とどっしりと構えてくれていましたが、私はここまでのことを考えると、正直割りきれないものがありました。

でも、少しのことでパニックになったり、夜にやることが終わらないといつまでも疲れきった頭で机に向かって、寝るのが不安になってくるなど、息子の様子が少し不安定になり、私がいつも通っていた鍼灸(しんきゅう)治療院の先生に相談し、連れて行ったところ、過度のストレス状態だと言われました。
当然ですよね。今になって思えば、12歳の子ども、しかも大人が思っている以上に緊張と不安でいっぱいの時期に、酷なことをしてしまったと本当に反省しています。けれど、このおかげで私もはっと我に返り、「初志貫徹」あるのみ、わが家はわが家の受験をすればいいのだ、と改めて基本に戻ることができました。

結果的に第1志望の渋渋に合格することができて、本当にほっとしています。


最後に、3人のお子さんの受験を通してどんなことを感じられましたか?

やはり、一人ひとり違うということですね。子どもによって、かかわり方も変えないといけなかったと思います。私は、どちらかというと親が受験にどっぷりとかかわるのをよしとしない気持ちが強くて、あえて距離をとろうとしているところがあったのですが、精神的に幼い子どもに対してはスケジュール管理など、もっとしっかりとかかわる必要もあったと反省しました。
私自身、たかが中学受験と思ってはいたのですが、兄弟と同じ学校を受ける分、知らず知らずのうちに思いも強くなっていたので、本人には見えないプレッシャーとなっていたということを理解するべきでした。
人生は思うようにはいかないことがあるけれど、努力することは無駄ではないということを、身をもって体験できたことは良かったと思います。


  • 受験前に神社で合格祈願をしたときにいただいたという掛け襟とお守り。お母さま手作りのお守りもある。


<取材後記>
論理的な考え方をされるお母さまで、中学受験に対してもしっかりとしたポリシーをもって取り組んでいらっしゃいました。それでも、思わぬことが起こるのが、中学受験。目標に向かって最短の距離で無駄を省いた受験勉強ができたらいちばんいいのでしょうが、学ぶ楽しさ、解けた喜びを体感したことはそれ以上に大事なことかもしれません。(教育ジャーナリスト 中曽根陽子)


プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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