麻布中学校3年生 Rさん/栄光学園中学校2年生 Yさんのお母さま

今回は、ご長男が麻布中学、ご次男が栄光学園中学に通われているお母さまにお話を伺いました。短期集中で、見事第一志望校合格を果たしたお兄さん。一方、「中学受験に向いていないのでは?」とお母さまが心配していた弟さんも、見事栄光学園に合格。タイプの違う2人の兄弟の、涙あり笑いありの中学入試を支えた家庭力とはなんだったのでしょうか。(2009年6月19日)


profile
麻生中学校3年生Rさん
栄光学園中学校2年生Yさん

神奈川県在住。
兄のRさんは2007年4月に麻布中学校に入学、現在中学3年生。弟のYさんは、2008年4月に栄光学園中学校に入学、現在中学2年生の兄弟です。他に、高校3年生になるお姉さんとご両親の5人家族。
お母さまによると、Rさんは「中学受験も自分で決めたというくらい、自分の意志がはっきりしている」お子さん。一方、「発想がユニークでいいものをもって いるが、受験向きではないと思った」というYさん。しかし、次第に頭角を現し栄光学園中学に合格。年子で、小さい頃からいつも一緒に育ってきた仲良し兄弟が、校風の違う中学に通いながら、それぞれの個性を伸ばしています。

■「成績によって序列がある環境で、もまれて勉強する塾は向いていない」と4年生の冬にはいったん塾をやめ、国立大学付属中学だけを考えて自宅で自学自習をしていた兄。

中学受験は、いつ頃から考えていましたか?


明確な理由があったわけではないのですが、隣の家のお子さんたちも、娘さんは小学校から横浜雙葉、息子さんは中学から栄光学園に通っていらして、私学の良さについてお話を伺っていたので、なんとなく考えてはいました。
それで、長男は4年生から大手塾に入れたのですが、成績で席順が入れ替わるような環境に本人があまり向いていなくて。私も、早くから毎週テストに追われるような生活をさせたくなかったので、「今日のテストはお休みします」などと言って受けさせないと、塾の先生にびっくりされるし、1回のテストで席順が替わることにも驚きました。なんとなく最初から、塾と家庭の考え方にも距離があったんですね。
それと、当時わが家には、イギリス人がホームステイをしていて、長男が4年生の夏休みにイギリスに招待してくださったので、家族で1か月行くために夏期講習を休ませたのです。そうしたら、またとてもびっくりされて。
私としては、「そこまでがんばらないとだめなら、中学受験は無理してさせなくてもいい」という思いがあり、一応秋以降も行かせましたが、あまりに本人がいやがるので、冬頃には思いきってやめさせました。
しかし、そのまま公立中学に進ませることには不安もあったので、基本的なことをおさえていれば受験できそうな、国立大学附属中学を受けさせたいと思っていました。


国立大学附属中学合格のための準備は何かなさいましたか?


5年生の後半から四谷大塚の通信教育を家庭で勉強して、テストだけ受けに行っていました。具体的には、横浜国立大学附属か東京学芸大学附属世田谷あたりがいいのではと思って、子どもを文化祭に連れて行きました。特に学芸大学の文化祭は、在校生の雰囲気もとっても良くて、生物部ではヘビを触らせてもらったり、エンゼルフィッシュの稚魚をいただいたりして本人も喜んでいました。そんなとてもいい出会いもあって、「ここに入れたらいいな」と思っていました。


それが麻布をめざすことになったのはなぜですか?


思い返してみると、必然だったような気がします。
というのも、先ほど申しあげたように、近所のかたのお話を聞いていて、なんとなく受験を考え始めていた頃に、ふと書店で見かけた『麻布の教育』という本が気になって買ったのです。それが麻布との最初の出会いでした。

本では麻布の卒業生たちが母校の教育を語っているのですが、その中に「数学がとても得意な生徒が1学期の前期試験の答案を白紙で出したら、先生が100点をつけた。期末試験も同じように100点をつけた」というエピソードが載っていたのです。その生徒は当時家庭に問題があって、不安定になっていたことをその先生は知っていて見守っていらしたのだそうです。そして結局その生徒は夏休みを過ぎてから気持ちが落ち着いたのか、元の優秀な成績に戻ったのだそうですが、そのようなことから、麻布は人間を育てる学校なのだということを知りました。また、校長先生の「麻布学園に子どもを入れると、親としてははらはらするでしょうが、子どものもつ力が成長していくことを思えばいい経験になります」というお話が載っていて、そんなふうに大きな心で生徒を育てる学校があるのだと感動したのです。その本をリビングに置いていたら、いつの間にか長男も読んでいたようです。

また、そのあと再び麻布を意識させるできごとが待っていました。
私は、長男が5年生の終わり頃に「横浜子育てサポート」に登録をしたのです。ご両親がお仕事をもっていらっしゃるお子さんの送り迎えなどのお手伝いをするのですが、その中にたまたま、長男がやめたあの大手塾にお勤めのかたのお子さんがいらっしゃったんです。「以前、通っていたんですよ」とご両親にお話ししたところ、「その成績で、受験をやめてしまうのはもったいない」ととても熱心に資料などをくださって…。いただいた資料を子どもがパラパラと読んでいるうちに、「行きたい学校がある」と言いだしたのです。それが、麻布中学だったのです。

長男は小学生のときから、例えば先生によって変わる学校の規則など、納得のいかないことには疑問をもつタイプだったので、麻布の教育の姿勢がとても心に響いたようです。また、当時兄弟で将棋に凝っていまして、麻布が将棋で連続日本チャンピオンになったという記事が出ていたのですね。そんなこともきっかけになったのかもしれません。


それからは、どうされましたか?


子どもが言いだしたことですから認めてはやりたい。けれど超難関校ですし、6年生になっていたし。正直とまどいました。
それで「麻布はとっても難しいから塾に行ったほうがいいんじゃない」ということになりまして。その大手塾にお勤めのかたにご相談したところ、「6年生の今から大手塾に行っても育ててもらえない。それより麻布に行きたいなら、そこに強い塾がありますよ」と紹介されたのが、戸塚にある啓進塾という地元密着型の塾でした。
実際に問い合わせをしたのが6月です。しかし、電話で「今まで塾に行っていなくて、麻布を受験したいなど無理」と断られてしまったのです。
そこで、今度は直接伺って、四谷大塚の模試の成績を伝えたところ、「とりあえず算数の授業に出てみますか」と言ってくださったので連れて行きました。結果的に、「いちばん上のクラスの算数の問題プリントを割と速く解けていました」と塾長からお電話をいただき、6月の3週目から入塾しました。


入塾前の四谷大塚の模試ではどのくらいの成績をとっていたのですか?


四谷大塚は、難易度別のコースになっていて、初めはAコースの受講で、算数、国語共に偏差値76くらい。そのあと上位のCコースになって算数、国語ともに66くらいでした。
しかし、塾ではすでに受験に必要な範囲の勉強は終わっていて、復習に入る時期になっていましたから、それからは暗記ものなどは特に大変でした。


具体的にはどのように勉強をしていったのですか?


皆がすでに知っていることを知らないわけですから、歴史は塾にお願いして過去のプリントをいただいて、塾から帰ってそれをやるというパターンで夜遅くまで勉強していました。それまで四谷のテキストで時代ごとに区切って勉強していたので、1つの時代から次の時代へ移り行く流れをつかむことからまず始めて、次に重要なことを覚えていくやり方です。
また算数では、それまで自力で勉強していたものですから、塾では答案の書き方の指導に1か月かかったそうです。
後半は、過去問対策など、受験に必要な専門知識やノウハウを集中的に指導していただきました。

塾には麻布が大好きな先生が多く、とにかく麻布合格に向けて協力してくださったし、本人も「麻布に行くんだ!」と強い意志をもって、目標に向かってがんばりました。
長男は、課題は必ず残さずこなさないと気がすまないタイプで、夜中の2時半くらいまで寝ないで勉強していたので、いつも「早く寝なさい」と言う私とけんかになってしまい、先生に「課題を出さないでください」と電話をしたこともありましたね。
まじめで責任感のある子だから、半年間大変だったけれど、集中して取り組めたので良かったと思います。1月の過去問テストでは、麻布の問題が塾で1番、栄光は2番をとりました。

結果的に1日麻布・2日栄光・3日学芸大学附属世田谷とすべて合格することができました。


プロフィール

中曽根陽子

教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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