中学受験模試の「親技」前編

「模試の活用」次第で、合格力はまだまだアップする

秋は中学受験に向けて気持ちを引き締め、エンジン全開で勉強に取り組む時期。通常の学習に加えて模試の頻度も増えてきます。保護者のかたにとって、模試の結果は志望校決定の判断材料になり、受験生全体の中のお子さまの実力がわかるので、もっとも気になるもののひとつでしょう。しかし、順位や合格判定の数字だけに注目し、結果に一喜一憂して、それで終わりにしていませんか?模試の結果を正しく分析し、問題点を家庭学習に上手に活用すれば、さらなる子どもの成績アップにつながります。模試の結果の正しい見方や模試を成績アップにつなげるための家庭での対処法「親技」をストロング宮迫さんに伺いました。


偏差値や合格判定ではなく、問題の出来不出来をまずはチェック!

――模試の結果を見るとき、一番注目するべきポイントはどこでしょうか?

一般的に模試の結果でもっともわかりやすくて気になるところは順位、偏差値や志望校の合格判定の数字だと思います。全体の中で自分の子どもがどのくらいの位置にいるのか、志望校内の順位はどうか、合格可能性のパーセンテージや偏差値などといった数字は判断がしやすいものです。だから、保護者のかたはどうしてもそこに目がいってしまいます。

数字をチェックして、
「偏差値が下がったから、次はもっと頑張って」
「前回より合格判定が良くなった。ひと安心」
などと模試の結果を表面的に見ているのではないでしょうか。しかし、そこだけに注目するのは間違いです。数字は「他の子と比べた自分の位置」にしかすぎません。本当に比べなくてはならないのは他の子とではなく「過去の自分」なのです。

しかし、前回の模試の点数と単純に比べられるものでもありません。たとえば、前回の模試の点数が70点でした。今回も70点だったとします。だからといって
「同じ点数だったから今のままでOK」
と判断することは短絡的すぎますよね。テストの内容が違うし受けた時期も違うからです。本当に見るべきは模試の結果よりも答案です。勉強したことがどのくらい身についているか、以前に間違えた問題が解けるようになったか、どの分野に取りこぼしがあるかなどを答案から読み取って、過去の自分と比べていきます。そしてその結果に基づいて、効果的に復習していくことが模試の活用術になります。

そのためには、お子さまの普段の勉強を保護者のかたが把握して、きちんと管理しておくことが必要です。どこまで勉強が進んでいて、どの単元が得意でどこが苦手というふうに子どもの頭の中を把握していれば、模試の答案を見たときに出来不出来がわかり、過去の自分と比べてどうか判断できるのです。学校も塾もそこまで面倒を見てくれません。そのようなきめの細かいフォローができるのは親だけです。親が子どもの学習をきっちり管理し、効果的な模試の復習で成績を伸ばしましょう。


ABCテスト分析でわかる!子どもの学習達成度

――模試の問題の出来不出来は、具体的にどうやってチェックすればいいのでしょうか?

私がおすすめしているのは「ABCテスト分析」という方法です。これは、試験問題を「A=簡単、B=ほどほど、C=難しい」の3つに分けて、その正答率を分析するというものです。ここで重要なポイントがあるのですが、難度の判断基準は一般的な正答率の高い低いではなく、本人にとってどれくらい難しいかになります。具体的には以下のような基準で分けていきます。

  • 家で勉強していてサラサラと解けていた問題=A
  • 塾などで習ったときはわからなかったが、家で勉強してできるようになった問題=B
  • 塾で習ってもよく理解できなかったり、テストで初めて見た問題=C

この方法だと、ABCの分類は一人ひとり異なってくるので、必ずしもいわゆる「難問」がCになるとは限りません。一般的な正答率が90%の問題でも、初めて見る子どもにとってはC問題になります。逆に、難問でも何度も解いて身についているものはA問題です。答案を見て、問題をABCに分けてみましょう。そしてABCそれぞれの正答率をチェックしてください。すでに学んでいる学習内容がどの程度身についているか、手つかずの問題はどれかなど、子どもの勉強の達成度が分かります。

ここまで申し上げてきたことは、子どもの勉強を普段からちゃんと見ていて、習熟度を把握していることが前提です。普段の学習をそばで見ていたら、テストをパッと見て「これは前にやった問題だからA、これはやったことがないからC」と判断できるはずです。

そこまで把握している自信がなく、ABCの判断をするのは難しいと思われたら、過去の模試を目の前でやらせてみてください。そしてお子さまの鉛筆の動きを見て、サラッとできるか、ちょっと考えて解くか、まったくできないかをチェックしていきましょう。それでかなり見分けられるようになりますよ。直近のテストから過去にさかのぼってやらせていきましょう。子どもの得意不得意な単元やとりこぼした分野などがわかってきますし、次の模試の準備にもなります。


ABC分析で復習の効率アップ!

――ABCの問題は、それぞれどうやって復習していけばいいのでしょうか?

問題をABC(家で勉強していてサラサラと解けていた問題=A 塾などで習ったときはわからなかったが、家で勉強してできるようになった問題=B 塾で習ってもよく理解できなかったり、テストで初めて見た問題=C)に分けたら、次にそれぞれの正答率をチェックしてみましょう。A→B→Cの順に正答率が下がっていくはずです。

ここで最初に注目するのはA問題です。まずはAの正答率を高めることを目標に、模試の復習に取り組んでいきましょう。Aは普段は解けていた問題ですから、解き直すのにさほど時間はかかりません。毎回時間を計って問題用紙に書き込んでみてください。個人差はありますが、3回もやれば約半分の時間で解けるようになります。サラサラと鉛筆が動いて速く解けるようになると、子どもはのってきて、勉強が楽しくなってきます。A問題の正答率・処理能力が上がってきたら、時間に余裕が生まれますからB問題にも取り組みましょう。次はB問題をA問題にするのを目標にして復習するのです。B問題がクリアできたらC問題に取り組みます。これは無理にやらなくても構いません。冬休みや週末など、余裕のあるときに手をつければいいんです。

このようにしてAとBを集中的にやれば、確実かつ効率的に復習が進みます。しかも、C問題に手をつけないので勉強時間がさほど変わらず成績が上がる手ごたえが感じられます。一番効率のいい部分から手をつけるのが鉄則です。
模試は普段のテストより点がなかなか取れないものです。半分間違ったとして、間違った問題を全部復習するとなると時間もかかってしまい、やる気もなかなか起きません。その中から親が「これだけはしっかり身につけよう!」と問題を絞ってやり直しをさせましょう。落とした点数のうち、できるところを確実にフォローしていくことが次のテストにつながっていきます。このくり返しで成績は効率的に上がっていきます。

親は勉強を教える必要はありませんし、問題を解ける必要もありません。ただ、普段の学習やテストの内容を見て、子どもの習熟度や得意不得意を把握して、管理すればいいんです。次の模試の結果を見て「前回解けなかった問題ができるようになった。A問題の正答率が上がった」となれば、「過去の自分と比べて良くなった」と言えます。たとえ全体の中での成績が良くなくても、勉強ができるようになった手ごたえが感じられるでしょう。


「捨てる」選択も成績アップの作戦

試験問題を「A=簡単、B=ほどほど、C=難しい」の3つに分けて、その正答率を分析し、A問題の正答率・処理能力を上げる。次にB問題にも取り組む。ここまでは、それほど学習時間を変えずに成績は上がってきます。しかし、これから成績を上げようと思ったら、いよいよ家庭学習の時間を増やして、C問題に手をつけることになります。

しかし、普段の勉強の予習復習など、やらなければいけない勉強は多いものです。受験に向けて、これからさらに負担は増えていきます。さらにお子さまにC問題を無理強いしてやらせると、学習意欲そのものを失う恐れがあります。勉強はノリノリのやる気を持って、また「できる」という気持ちをもって取り組まないとなかなか身につかないものです。お子さまがいっぱいいっぱいになってしまうようでしたらC問題は週末や冬休みなど、時間に余裕のあるときに一気に取り組むか、あるいは、思い切ってC問題は捨てるという選択もありです。

大事なのは「親の言う通りに勉強したら成績が上がった」という意識を植えつけること。親に従って勉強しても成績が上がらなかったら、子どもは言うことを聞きません。

お子さまを塾に通わせている方もいらっしゃると思います。塾で勉強したことをしっかりと身につけるには、塾で勉強したのと同じくらいの家庭学習の時間が必要です。塾の復習がきちんとできないのであれば、塾に通う効果は半減します。これまでの私の経験から言いますと、塾で成績が上がらない子どもは家庭学習をしていません。塾の勉強をやりっぱなしにしていて復習をしないという傾向にあります。どんなにすばらしい授業を受けても、習った内容を自分で復習しなければ成績は上がらないんです。思いきって塾をやめて家庭学習に専念するのもひとつの手です。「やめるのはちょっと…」と不安に思われるのでしたら、いくつか講座を絞って受講してもいいでしょう。絶対に避けたいのはあれこれ手をつけてすべてが中途半端になってしまうことです。

やらなければならないことはいっぱい、勉強時間は増える、内容は難しいとなると、子どものモチベーションを保つのは難しくなってきます。入試に向かうにつれて勢いがなくなってしまったということがないように気をつけるべきです。親が勉強を管理し、内容を取捨選択してモチベーションを下げないように導いてください。それは学校の勉強でも、模試の復習でも、塾の勉強でも、すべてに当てはまることです。


プロフィール



これまで1000人以上の子どもたちに中学、高校、大学受験の指導を行い、集団授業、個別指導、家庭教師の授業形態を経験する。その過程において、親が勉強を教えることなく、子供の頑張りはそのままで成績を上げる「親技」を構想。

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