『明治神宮』はどんな神社? 『表参道』との関係は?
東京都渋谷区にある『表参道』周辺と言えば、日本屈指のオシャレスポットです。そんなオシャレスポット『表参道』と、古い歴史のある『明治神宮』にはいったいどのような関係があるのでしょうか?
『表参道』は有名ですが、由来まで考えたことはないというかたも多いでしょう。『表参道』というのは「『明治神宮』へ向かう表の参道」という意味で、1919年に『明治神宮』の参道として整備された道を『表参道』と言います。
『明治神宮』の工事は大正5年から始まり、大正9年(1920年)に創建されました。
明治45年(1912年)に明治天皇(めいじてんのう・在位1867~1912年)、大正3年(1914年)に皇后の昭憲皇太后(しょうけんこうたいごう)が亡くなりました。おふたりをまつる神社として創建されたので、時代で言うと大正になります。
では、ここからは明治天皇の生涯についてふれていきましょう。
明治天皇が誕生したのは、アメリカのペリー提督が浦賀に来航した前年の嘉永5年(1852年)のことでした。日本国内の情勢としては、江戸幕府による260年にも及んだ封建制度(ほうけんせいど)にほころびが出てきており、天皇中心の新体制が求められていた時代でした。
こうした時代に誕生した明治天皇は、慶応3年(1867年)、数え年にして16歳で皇位を継承しました。ほどなくして第15代将軍・徳川慶喜(とくがわよしのぶ)が大政奉還し、幕府は消滅。明治天皇は『王政復古の大号令』を発令し、新政府を樹立しました。その翌年(1868年)が明治元年となりました。
明治政府は欧米にならって近代化をすすめます。明治22年(1889年)には『大日本帝国憲法』(いわゆる明治憲法)を発布(制定・発布の形式で主権者たる天皇が定めて、これを国民に下し与えるという欽定憲法)し、明治23年(1890年)には帝国議会を開設します。その後、日清戦争と日露戦争を経て、日本は立憲政治を確立していきます。
こうして明治45年(1912年)、明治天皇が数え年にして61歳で亡くなった際には、日本は「世界の列強国」に数えられるまでになりました。
『明治神宮』が創建されたのは、明治天皇が亡くなってから8年後の大正9年11月1日のことでした。明治天皇と昭憲皇太后の人徳を後世まで遺すため『明治神宮』が建てられたと言われています。
鎮守の森は「成し遂げる力」の結晶『明治神宮』から学ぶ【教え】
近年では、加藤清正(かとうきよまさ)が掘ったと言われる、都心では珍しい湧水の井戸『清正井』(きよまさのいど)が大人気です。
しかし『明治神宮』の一番の醍醐味は、実に約70万㎡、東京ドーム約15個分の面積を誇る豊かな緑を称えた『鎮守の森』です。この森はむかしからあったのではなく、全国からの献木約10万本を植栽して作った森なのです。
――つまり人工森ということです。
さかのぼること約100年前、大正4年(1915年)に本格的に森の造成計画がスタートし、大正9年(1920年)に約10万本の献木の植栽工事がおおかた終わり、鎮座祭が行われました。約11万人の勤労奉仕者が造営に従事したと言われています。
200種を越える樹木がまるで自然林のように成長し、現在では同地にしか確認できない国有種や絶滅危惧種の動植物も存在し、学術的にも非常に重要な森なのだそうです。
『明治神宮』の『鎮守の森』からは、人間の「成し遂げる力」を改めて学べるのではないでしょうか。
100年も前の人々がこれほどまでに規模の大きい計画を発足させ、途方もないような工程にもかかわらず雄大な森を造り上げたこと、その森を現代まで守り続けていること。
『明治神宮』の森に家族で訪れ、100年前の人々の偉業に思いを馳せれば、人間がもつ「成し遂げる力」の素晴らしさをお子さまにも教えることができるでしょう。
結婚式も行える『明治神宮』に行ってみましょう
『明治神宮』は清く穏やかな内苑、『聖徳記念絵画館』やスポーツ施設を持つ外苑、結婚式、セレモニー、パーティー会場となる『明治記念館』からなっています。初詣の参拝者数が例年日本一の神社としても知られ、明治天皇が亡くなった日の7月30日には毎年『明治天皇祭』という祭典が行われています。
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アクセスマップ
名 称:明治神宮
時 間:日の出~日の入り(例: 7月は5時00分~18時20分、8月は5時00分~18時00分)※12月31日は、終夜参拝可能
休 日:無休
料 金:無料(御苑に入園する際は御苑維持協力金500円)
住 所:東京都渋谷区代々木神園町1-1
電 話:03-3379-5511
※情報は変更されている場合があります。
監修者プロフィール
河合 敦(かわいあつし)
多摩大学客員教授。歴史研究家。1965年東京都生まれ。多数の歴史書を執筆するとともにテレビやラジオなどのメディア出演多数。
代表的な著書に『日本史は逆さから学べ!』(光文社知恵の森文庫)、『もうすぐ変わる日本史教科書』(KAWADA夢文庫)などがある。