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共通一次試験に至る過程 |
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大学進学率が少なかった時代は、大学にとって大学入試は学力主義で実施され、その目的自体が選抜であった。昭和20年代の「進学適性検査」や30年代の「能研テスト」と大学入試の改善に向けてこれらのテストが導入されたが、結局は大学側の十分な活用が見られなかった。
そもそも、日本における入試制度の改善の方向は、「各種の選抜資料を総合して能力・適性に応じた合否判定をする総合判定主義」であった。それゆえ、大学が入試の主導権を握っており、大学の一方的な基準での選抜がなされていた大学入試は激しい自由競争の中にあった。
1960年代ごろから、日本の高等教育は拡大する。多くの私立大学が設置され、それに伴い、国民の大学進学志望も高まりを見せた。その高まりから大学入試の競争も年々激化し、特定大学へ志願者も集中した。また受験生の「負担過重」や「落ちこぼれ回避」等心身の問題と受験準備費用等の増大が社会問題化していった。
1971年(S46)、中央教育審議会答申の「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」(四六答申)では、入試突破に注力した学習や選抜結果の妥当性、大量浪人の蓄積などが問題として、以下のような提案を行った。
- 高等学校の学習成果を公正に表示する調査書を選抜の資料とすること。
- 広域的な共通テストを開発し、高等学校間の評価水準の格差を補正するための方法として利用すること。
- 大学側が必要とする場合には、進学しようとする専門分野においてとくに重視される特定の能力についてテストを行い、または論文テストや面接を行ってそれらの結果を総合的な判定の資料に加えること。
「今後は、中等教育の段階で、その本来の目的に応じた勉学に専念した者の学習成果が公正に評価され」る大学入学者選抜の実現化が望まれたものとなった。
従来から文部省(現:文部科学省)に設置されている大学入学者選抜改善会議は、この答申の内容も汲んで、同年年末に入学者選抜方法について各種の選抜資料を多角的に活用し、能力・適性を総合的に判断する事を強く提唱した報告書を提出している。具体的な改善方策としては、
- 調査書の活用
- 共通学力検査の実施
- 大学が行う学力検査等の改善
- 大学における入学者選抜事務処理体制の整備
- 高等学校における進路指導の充実
を挙げている。その後、国立大学協会は、全国共通一次試験の基本構想やその試験実施に向けての調査委員会で検討を繰り返し、1977年(S52)大学入試センターが設置された。
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大学入試センター試験に至る過程 |
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1979年に共通一次試験がはじまった。共通一次試験は、全国同時に同一問題で実施し、「高校における基礎的、一般的達成度を測る」という目的から、高校の教育課程を的確に反映した共通試験である。この学習指導要領を考慮した検査問題によって、難問・奇問は減少し、高等学校の教育の基礎的な到達度を判定することが可能になった。また、二次試験である大学独自試験が軽減され、それに伴い、学力以外の検査(小論文や面接)を導入する大学が増えてきた。また推薦入学や帰国子女などの特別選抜も増加し、選抜方法が多様化されたという評価になっている。
しかし、この共通一次試験でも新たな課題が出てきた。一律5教科を利用するという原則により大学の序列化をますます推進させることになった。また、一次試験がマークシートのため、思考力を測るための二次試験となり、論述・小論文試験が増加した。しかし、採点基準の妥当性の開発は、遅れている状況であった。また、受験情報が大量でかつ詳細であったため、合格可能性だけに基づいた振り分け進路指導となり、入学後の学習を見越した進路とは言いがたい状況であった。
とは、いうものの一部の課題は、共通一次時代の途中で改革されている。たとえば、理科・社会の2科目必須が受験生にとってかなりの負担感にもつながり、そのうえ高校カリキュラムにも影響をしているということで、1986年(S61)に5教科5科目800点満点に変更になった。また、1期・2期がなくなり、受験機会が減少したため、1986年に連続方式(A・B日程)を導入し、1988年(S63)には分離分割方式(前期・後期日程)を導入し、複数回の受験が可能になった。
しかし、偏差値偏重による受験競争の過熱や大学の序列化の問題は、1985年(S60)臨時教育審議会第一次答申で新たなテストの提案を促すものであった。この答申で提案された具体策は、以下のとおりである。
- 共通一次試験に代えて、国公私立大学が自由に利用できる共通テストの創設
- 大学入試センターの設置形態・機能の検討・改革
- 各大学の入試担当機能の強化
- 進路指導の改善
- 国立大学の受験機会の複数化
- 高等学校職業科卒業生対象大学進学への配慮
この提言を受け、文部省(現:文部科学省)は大学・高等学校関係者から成る大学入試改革協議会を設立する。そこでは、新テストの目的や内容、利活用の方法、実施体制について言及し、大学入試センターのあり方(任務・運営・設置形態)やテスト名称の検討や高等学校における進学指導の改善の推進について協議され、1988年(S63)に最終報告が出された。その結果、1990年度入試より共通一次試験が大学入試センター試験へとなった。
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大学入試センター試験の実施 |
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大学入試センター試験(以下、「センター試験」)は、共通一次試験の「高校における基礎的、一般的達成度を測る」という目的から「基礎的な学習の達成度を測る」というように目的が変更された。また、共通一次試験と異なる点は、まず私立大学の利用を認めている。ちなみに初年度は16大学19学部が参加している。試験制度も柔軟化され、ア・ラ・カルト方式となり、センター試験は1教科1科目でもよいという自由な利用ができるようになった。さらに共通一次のように国公立大学の第1段階試験という縛りもはずした。当時の文部省(現:文部科学省)は、「各大学はセンター試験での利用教科科目が自由に選択できるようになったことで選択尺度の多様化・個性化が図られ、そのために大学の序列化も規準が違うので物理的には偏差値による輪切りが不可能になった」と言っている。
しかし、一方では長期にわたって実施されているセンター試験では、初出問題の作成の困難さは年々深まっている。ア・ラ・カルト方式で科目選択の自由化を行っているが、その科目間の出題の難易差を調整するのは至難の技である。さらに科目間の得点調整も問題になっている。そして何よりもこのセンター試験の問題は、いまだに増え続ける受験者数と学習指導要領が原因になっている。
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ところで、この大学入試センター試験は、戦後の日本の全国規模でかつ大学入学者選抜用の試験で一番長く実施されている。しかも、18歳人口の減少にも関わらず、私立大学が利用可能なこと、ア・ラ・カルト方式入試の普及に伴い、いまだに志願者数・受験者数が伸び続けている。この1回で50万人以上の規模を誇るテストは、世界中見渡してもこの大学入試センター試験しかないのである。
大学入試センターホームページ(http://www.dnc.ac.jp/)情報より作表
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センター試験の抱える課題 |
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さて、18歳人口の減少にも関わらず、大学入試センター試験の志願者数・受験者数が増え続けているのは、大学進学率の上昇で示されているとおり、大学進学志望者が増加しているためである。しかしこの事態は、センター試験をとりまく大学入試に新たな影を落としている。
まず大学入試の多様化の問題である。共通一次試験では二次試験を大学独自試験と指定し、実施をしたが、さほど期待するほどの多様化にはつながらなかった。逆に、大学の序列化を推進し、学力重視の輪切りの受験指導が行われたと非難された。この共通一次試験での課題を解消すべく、センター試験では利用教科科目の自由化を行い、その結果ア・ラ・カルト方式入試が広がり、入試のより一層の多様化につながった。
また大学入試の多様化は、高等学校の状況からも推進されている。それは、すでにユニバーサルと化している90%を超える高校進学率と、「ゆとり教育」の実施高校の多様化が背景にある。まず、センター試験は、目的から高校教育の到達度試験であることが明白である。そこで、地歴・公民・理科のAといった2単位科目がセンター試験の中でBの4単位科目と同列に配置されるようになった。
続いて1982年度より施行されている教育課程は、戦後はじめて履修単位数を削減、選択科目単位を1/2以上に設定して多様化・弾力化を促進している。これらは、高校進学率上昇に伴う学力層の広がり、高校の多様化だけでなく受験生個人の学習歴の多様化という状況を生み出した。これらの状況において、センター試験における難易度設定の難しさを問題として抱えるようになっている。そして、何よりもこの大学入試の多様化は、弾力的な教育課程を通して受験科目しか学習しないといった偏った能力主義的選抜となりがちなのである。これは、日本の入試制度の改善の方向である「各種の選抜資料を総合して能力・適性に応じた合否判定をする総合判定主義」を実現しようとする、当初の期待を裏切る皮肉な姿であり、また高校教育と大学入試、そして大学教育への新たな歪みとなっているのである。
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<参考文献>
・中島直忠編(1986)「世界の大学入試」時事通信社
・荒井克弘(1998)「高校と大学の接続-ユニバーサル化への課題-」高等教育研究第1集 日本高等教育学会編
・足立寛(1999)「大学入試過去・現在・未来」ベネッセ文教総研
・山本以和子(2000)「中等教育と高等教育の接続の改善について」名古屋大学大学院資料
・荒井克弘(2001)「戦後の学習指導要領の変遷と大学入試」大学入試フォーラム24 独立行政法人大学入試センター
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