小学校英語に関する基本調査 ハイライト&関連情報
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専門家の眼

小学校英語必修化の3つの課題〜保護者調査の結果から

上智大学外国語学部長 吉田研作先生

 

本調査の企画・分析にご協力いただいた吉田研作先生(上智大学外国語学部長、中教審外国語専門部会委員)に、調査の結果から言えることや今後の課題をお話しいただきました。

 

記者発表会(2007年3月29日実施)でのコメントを再編集したものです

 

写真
記者発表会での席上で話される吉田先生

■課題1:小学校英語必修化に対する教員と保護者との温度差

まず注目すべきは、教員と保護者の意識に大きな違いがあることです。教員は、小学校の早い時期から英語教育を始めるべきという考えをもちながらも必修化にはあまり賛成していませんが、保護者は、必修化を含めて高い賛成を示しています(下図参照)。

図 小学校英語の必修化に対する賛否
図
※「保護者調査」と「教員調査」では、設問形式が若干異なっている。

実際に「もし週に1時間だけ増やせるならどの授業時間がよいか」という設問で、保護者の1位は「英語」でした。2位が「情報」である点も併せて考えると、今後に向けての注目度が高いこの2教科は、授業をするのであれば、文部科学省主導のきちんとした形で実施してほしいという保護者の気持ちが表れているのでしょう。

教員は、学校全体や自分たちの現実的な問題を考えて、英語の必修化に賛成できない部分があるのだと思いますが、保護者は、自分の子どもにとっていちばんよいことを考えて、英語や情報を受けさせたいと願う。それは保護者として当然の気持ちだと思います。

■課題2:保護者と学校との連携の弱さ

次に注目すべきは、私が本調査を通して大きな問題だと感じた点です。調査は学校を通して保護者にご協力いただいたのですが、その学校のすべてで何らかの形で英語教育が行われていました。しかし、「子どもが学校で英語教育を受けているか」という設問に、保護者の31.3%が「受けていない」、9.4%が「わからない」と答えています。保護者が、自分の子どもが受けている英語教育の実態を、実は知らないのです。

保護者が学校で行っていることを知るというのは、非常に大切です。また、保護者によく知ってもらえる教育体制にしていくことも必要だと思います。 英語については今後本格的に行われることになるわけですから、学校と保護者がもっといっしょに教育をつくっていくべきでしょう。

■課題3: 英語教育環境の地域差

それからもう1つ、小学校英語を必修化しない場合の問題点を挙げたいと思います。「子どもが小学生のうちに英語を学ぶなら、どこで学ぶのがよいか」という設問に対して、地域による差が出ています。大都市は「学校と学校外(習い事や塾)の両方で学ぶのがよい」と考える保護者が45.2%ですが、郡部などの学校外の施設が少ないところでは「学校だけで学べばよい」が59%と、学校が責任をもってやってほしいと考えています。もし、必修化をやめて学校が任意で行うことになったらどうなるでしょう。学校外でも英語を学んだほうがよいと考え、そのような施設も多い大都市のほうが、圧倒的に有利ではないでしょうか。郡部になるほど学校に頼っているわけですから、必修化をやめてしまったら、その子どもたちは機会を与えられなくなってしまいます。大都市の子どもと、それ以外の子どもの格差が広がっていくのではないかという、大きな不安を感じます。

これらの課題を解決するためにも、2007年度では、必要であれば調査などをし、提言できることは提言して、小学校英語必修化の是非を見極めていきたいと考えています。

→調査結果を見る PDF[PDF(3.48MB)]

<会場のマスコミ関係者との質疑応答より>

 

会場 教員と保護者の両方が不安に感じていること(*2)を解決するためには、どのようにしていけばよいと考えますか。

 

吉田先生 2007年度の小学校英語の予算としては約6億円が計上されており、文部科学省ではそれをもとにいくつかの拠点校をつくっていきたいと考えています。そこではまず、教員の研修を第一に考えて、整備していく必要があります。
教材内容の構築に関しては充分な予算がないため、まずはカリキュラム作りから着手するとよいと思います。カリキュラムならあまりお金はかかりませんし、どの学年のどの時期に何をするかを構築することは、今後に向けて非常に大切なものになるはずです。
ALTについては、大きなお金がかかるために難しい課題だといえます。現状でも、充分なお金がなく相当の対価を支払えないために、質のよいALTの先生を確保しづらくなっています。これについては、2007年度は無理だとしても、その翌年度くらいに予算をとれるようにして、解決していかなければならないのではないかと考えています。

 

*2  調査結果より、小学校の英語教育について、6割の保護者が「教える内容が、先生や学校によって違うこと」「外国人の先生の数が足りないこと」「指導する先生の英語力が足りないこと」について不安を感じている。また、教員も全体の約4割が「指導する教員の英語力」「教材の開発や準備のための時間」を、約3割が「指導のためのカリキュラム」「英語教育に関する教員研修」を課題として挙げている。

吉田研作先生

上智大学外国語学部教授、外国語学部長、上智大学国際言語情報研究所所長。専門は、応用言語学。最近は、主に、文部科学省が提唱している「英語が使える日本人」の育成のためのさまざまなプロジェクトに関与している。著書は「外国人と分かり合う英語--異文化の壁を越えて」(筑摩書房)など多数。

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調査・研究データ