特集 「地域」という教科書

望月 照彦

多摩大学経営情報学部教授

望月 照彦 (もちづき・てるひこ)


1943年静岡県生まれ。日本大学理工学部建築学科卒、同大学院修了。民間デベロッパー、シンクタンクを経て、89年から現職。法政大学大学院、静岡文化芸術大学の講師も兼任。著書に『マチノロジー(街の文化学)』『地域創造と産業・文化政策』『商業ルネッサンスの時代』など。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【寄稿】

地域が学校、地域が先生、地域が教科書

学生も巻き込んだ教育活動にすべき

 大学は、地域の中で重要な役割を担っている。大学が持つ人材やナレッジやノウハウには、地域にとって大きな有用性がある。欧米では、これら大学の知的資源がうまく生かされている。スタンフォード大学がなければシリコンバレーは生まれなかっただろうし、テキサス大学がなければマイケル・デルがデルコンピュータを創業することは難しかっただろう。
 日本では、大学の知的資源がほとんど生かされてこなかった。その要因は、大学は地域との交流が少ない上、地域が重要な学びの対象であることに気付かなかったからだ。
 地域を知り、そこでの課題を発見すれば、大学が果たすべき役割が見えてくる。では、地域を教育にどう生かしていけばいいのだろうか。そのヒントを探るために、解散してしまったある地域学会の活動を紹介したい。
 その学会は小田急学会と呼ばれ、「地域が学校、地域が先生、地域が教科書」をテーマに、活動していた。東京の小田急沿線の大学教員や市民が中心になって1988年に設立し、資金面等を小田急グループが全面的にバックアップした。経営陣の交代による方針転換で同グループの支援がなくなる93年まで活動が続いた。
 活動コンセプトは、「小田急沿線人が『人際』『学際』『域際』をベースに地域を歩き、研究し、元気なコミュニティを育てること」。「人際」と「域際」は造語で、前者は人と人との交流を、後者は地域と地域との交流を指す。
 地域住民の生活支援、地元産業の活性化や観光の振興などをテーマに、様々な調査や研究を行い、沿線の秦野市、相模原市、厚木市、大和市などの協力で、「ふるさと大学」と称した発表大会を毎年開いていた。
 「トレインフォーラム」という取り組みは、地域住民の人気が高かった。小田急線のロマンスカーの車両を教室にして、新宿から小田原までの1時間余、旅行気分を楽しみながら講義を聞く。地域の人々が、大学教員らと一緒になって活動する画期的な取り組みであった。有料だったが、チケットが売り出されると、その日のうちにすべての教室(車両)が完売となった。
 実はこの小田急学会は、私が企画し、小田急グループと関係の深かった友人と一緒に小田急電鉄に協力を持ちかけたことが設立のきっかけだった。小田急グループの経営陣が活動コンセプトに共感し、協力してくれるようになるまでほぼ1年かかった。沿線に住む有識者や著名人のリストを作り、一人ひとりに会って協力を要請し、ようやく設立にこぎつけた。
 私は、このような地域活動を大学は率先して実行すべきだと思っている。そのときに重要なのは、学生も巻き込んだ教育活動として位置付け、企画段階から参加させることである。そうすることで、学生は学びへのモチベーションが高まり、人間的にも成長する。


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