BERD 2007 No.11
【特集】
寄稿
profile
山元悦子
福岡教育大学教育学部教授
やまもと えつこ

福岡教育大学教育学部国語教育講座教授。広島大学教育学部教科教育学科卒、同大学院博士課程進学。広島大学助手を経て、1993年より福岡教育大学へ。
共著に『共生時代の対話能力を育てる国語教育』(明治図書出版)、『話し言葉の教育 朝倉国語教育講座 3』(朝倉書店)、『国語科教育学研究の成果と展望』(明治図書出版)などがある。
Refarences
●『共生時代の対話能力を育てる国語教育』福岡教育大学国語科・同附属中学校著/明治図書出版/1997年
BERD
   PAGE 1/4 次ページ

国語科教育の視点から見たコミュニケーション教育
──共創的コミュニケーション能力の育成を目指して──
山元悦子[福岡教育大学教育学部教授]

山元悦子
 言語活動の充実は、学習指導要領改訂の方向性として掲げられている。
 国語科教育においては、どのようなコミュニケーション能力を育てればよいのだろうか。
 「他者と関わろうとする心性を育てることが肝心」と主張する山元先生に国語科教育が目指すコミュニケーション教育について寄稿していただいた。
国語科におけるこれまでのコミュニケーション教育
 日本の国語科教育の内容は、1947(昭和22)年に試案として出された学習指導要領によって「話すこと(聞くことを含む)、つづること(作文)、読むこと(文学を含む)、書くこと(習字を含む)、文法」と領域立てられました。この領域編成は、その後、改訂を重ねる中で「表現・理解」等に変遷しながら、現在の「話すこと・聞くこと、書くこと、読むこと、言語事項」に至っています。この「話すこと・聞くこと領域」が、主としてコミュニケーション教育に関わるものです。では、その内容は歴史的に見てどのように推移してきたのでしょうか。
 わが国初の「学習指導要領国語科編(試案)」では、「通じ合い」という言葉が使われています。新しい民主主義時代には「話し合い」が重要との認識から、戦後の新教育の先進的な姿として「話し合い学習」が国語科教育に導入されました。
 けれども、それが根付く間もなく、「はい回る経験主義」という批判が起こり、話し合いの指導は下火になっていきます。特に1977(昭和52)年版の学習指導要領によって、教科領域が「表現・理解・言語事項」となり、「話すこと」と「聞くこと」は表現と理解に分断され、コミュニケーション教育の不振に拍車をかけることとなりました。
 しかし近年、青年の引きこもりの増大など、新たな社会的問題から、コミュニケーション能力育成の重要性が再認識されてきています。「伝え合う力」を育てることが1998(平成10)年に告示された学習指導要領でうたわれ、前回のPISA調査の結果発表(2004年12月)や、それを契機に実施が検討され始め、2007年4月に実施された全国学力・学習状況調査の結果などから、知識・技能を実際に活用して考える力、分かりやすく考えを伝える力、伝え合うことで集団の考えを発展させる力を伸ばすことが、今後の方向性として示唆されています。
どのような枠組みでコミュニケーション能力を捉えるか
 では、これからの国語科教育では、どのようなコミュニケーション能力を育てればよいのでしょうか。国語科は教科内容に関して体系性、系統性を持った内容を用意して育成する役割を担っています。これまでの国語教育では、「話す・聞く領域」に関しては幾多の能力表が提案されたり(『音声言語指導大辞典』明治図書出版/1999年、他)、独話(スピーチ)・対話・ディベート・パネルディスカッションなどの形態に依拠した系統的整備が試みられてきました。しかし、それらは「話すこと・聞くこと領域」の中での整理にとどまり、目的を持ったリアルな場で、対人的な行為として言語を運用する能力というトータルな視点からコミュニケーション能力を位置付けることは、あまりなされてこなかったように思います。
 コミュニケーション行為は、実際的な場面での対人的行為ですから、その能力は対人認知や場面状況を判断するメタ認知の能力の育成と密接に関わっています。例えば「学級の中で、ある課題を4人グループで解決しなければならない。どのように話し合っていけばよいか」、また「職場見学に行って働く人にインタビューをすることになった。どのような言葉遣いで何を聞けばよいか」というような具体的な相手と目的の中で、適切な言葉のやり取りができる能力がコミュニケーション能力です。ですから、子どもたちの認知面での発達状況を配慮しながら、それに見合った学習活動を設定し、そこでどんなコミュニケーション能力が育てられるのかという枠組みで、指導の在り方を考えていくべきではないでしょうか。
   PAGE 1/4 次ページ
研究者(BERD)TOPに戻る 2007年度バックナンバーへ戻る